Japanese
ヒトリエ
2025.06.22 @EX THEATER ROPPONGI
Writer : 石角 友香 Photographer:西槇 太一
ゲームにおける"フレンドコード"が、名前も顔も知らない者同士が繋がるために発布されるもののように、ヒトリエの最新作のタイトル"Friend Chord"も同質のニュアンスを持っている。アルバム・タイトルにすることで、改めてヒトリエのスタンスが明確になったと思う。現メンバーでのオリジナル・アルバム3作目『Friend Chord』を携えたツアーは、3月にスタートし、EX THEATER ROPPONGIでファイナルを迎えた。この会場は2018年の[ヒトリエ UNKNOWN-TOUR 2018 "Loveless"]ファイナル、そしてコロナ禍の2021年に無観客での配信ライヴ2デイズを開催した場所だ。その記憶は今回、バンドとファンにどんな影響を与えるのだろうか。
初っ端から凄まじいテンションで登場した、特にシノダ(Gt/Vo)の気迫に気圧される。彼が放つフィードバック・ノイズからアルバム同様「耽美歌」でスタート。3人のバックボーンであるオルタナティヴな曲調やサウンドが、このツアーを象徴するかのよう。さらに「ジャガーノート」のスリリングなアンサンブルで攻め、「オン・ザ・フロントライン」では怒濤のイントロから緩急を付けたヴァース、さらにサビへの飛翔で息つく暇もない。マス・ロック的なストイックさとラウドな音像、さらに和を感じる歌メロが反発しながら成立する世界観。ロケットスタートなのは勢いだけじゃなく、アルバムの軸を示した潔さも等価だ。
"「Freaky Friendship Tour(ヒトリエ Freaky Friendship Tour 2025)」へようこそ。僕たちがインターネットからやってきましたヒトリエと申します。よろしくどうぞ!"。シノダのいつもの挨拶から、素早くスイッチしていく演奏がジェットコースター級の「3分29秒」をドロップ。圧倒的本数のライヴを重ねてきた演奏の緻密さはもちろん、ボトムの太さにも驚かされた。続くベースのイガラシ作曲の「Quadrilateral Vase」は、彼の重戦車並みの重くタイトなベース・サウンドが身体をダイレクトに打つ。シノダがタイトルの秘密をインタビューで明かしていたが、"四角い花瓶=視覚過敏"は意識がやられるようなフラッシュライトの演出にも活かされていて、それは同時に記憶のフラッシュバックも呼び起こすようだった。
"EX THEATER(ROPPONGI)をでっけぇでっけぇダンスホールにしてぇ、俺は"とべらんめえ口調になるシノダの曲フリに似た一言から、「ワールズエンド・ダンスホール」へ。ゆーまおのタイトな4分キックがフロアを一気に加熱し、ばっさり切り落とすようなエンディングに、オーディエンスの息を呑む音が聞こえた気がした。間髪入れず、ピアノのSEが流れると「伽藍如何前零番地」では原曲のスカのリズムを残しつつ、生音のエレクトロ・スウィングに近い感触も。一曲一曲、曖昧な読後感を残さず先へ先へ渇望の手を伸ばすようにライヴが進んでいく。
イガラシのスラップを交えたうねるベースとシノダの歌が同時に始まる「daybreak seeker」では、打ち込みのハウス・ミュージックより、ストイックなグルーヴにヒトリエらしさを見いだすのも楽しい。ちなみにシノダのリフはハウスにおけるハイハットの拍にも思えたのだが、こうしたジャンル感をギターに置換するセンスも独特だ。そのまま「月をみるたび想い人」に繋ぎ、背景に灯るライトもいい効果を出して演奏に寄り添う。グルーヴィな演奏と歌詞に潜むセンチメント。6曲を間髪入れずに一気に演奏した3人に送られた長い拍手が感銘を裏付ける。
マイクを手に取ったシノダは、六本木にあるこの会場に縁遠そうな人たちばかりだとフロアを見渡し、"EX THEATERまで後何メートルの看板の安堵感ったらなかったでしょ?"と笑わせる。その想いを汲んで"せっかくここまで来てくれたんだから、まともに帰れないぐらい体力使い果たそうと思うんだ"と自身を挑発。ステージ上を彷徨うように「SLEEPWALK」を歌い、フロアはジャンプで応戦する。そしてニュー・アルバムで異彩を放つ、ゆーまお作詞作曲の洒脱なハウス・ナンバー「Shadowpray」に自然に繋いだ。とはいえそこはやはりライヴ。シノダのパフォーマンスは振り切ったテンションだし、イガラシが醸し出すぶっといフレーズは身体を直撃する。後半、ギターを手に取ったシノダは「daybreak seeker」同様、ダンス・ミュージックにおける独自のギター・プレイで、聴き手のフェティシズムも刺激するのだ。ヒトリエの音楽的なレンジを実感させた上で、『Friend Chord』から、大きなハチロクのリズムを持つオルタナティヴ・ロック「おやすみなさい」へ。幻惑的なアルペジオと音の壁を作り出すシューゲイズ・サウンドが、感情の層を重ねていくようで、過剰なまでに"おやすみなさい"をリフレインする、シノダの優しい激情のようなものも含め、この日の白眉だったと思う。
フロアの溜息が聞こえそうな余韻の中、シノダは改めてソールド・アウトしたフロアを感慨深そうに見やり、"『REAMP』や『PHARMACY』のリリース・ツアーのときはコロナ禍真っ最中でフルキャパでできなかったけど、それでもヒトリエはアルバムを作って、ライヴして、ツアーやって、っていうロック・バンド的な動きは止めなかった。今こうやって正しい形でリリース・ツアーをやれてることを幸福に思います。こんな日を迎えるために駆け抜けてきたんだと思います"と、今回のツアーだけでなく、昨年デビュー10周年を迎えたヒトリエの不変のスタンスを言葉にしてくれた。
そんなMCから「ネバーアンダースタンド」が鳴らされると、どんな哀しみすら、それは自分だけのものだと愛しさすら感じるし、このちょっとへそ曲がりなバンドの人間的な部分は、むしろ普遍的なんじゃないかと思えてくる。そしてイントロに歓喜のどよめきが起こった、『イマジナリー・モノフィクション』収録の「踊るマネキン、唄う阿呆」。フロアの興奮に輪を掛けるレーザーの演出も見事にハマった。終盤にwowaka(Vo/Gt)作のナンバーを固めてきたのは、ヒトリエに内在し続けるイズムの発露でもあるし、10周年イヤーの区切りでもあるだろう。音源で再構築した「NOTOK」に続き、シノダは"2018年にここでやった曲があります。土台無理な相談ですけど、あの瞬間を超えてみたい。あの瞬間を超えるぐらいの声を聴きたい。みんなの力を貸してもらっていいですか?"――もう何が演奏されるか理解したフロアは振り切っている。果たして超えたのかどうか分からないが、この日の「アンノウン・マザーグース」で発されたシンガロングとクラップは、2018年とは違う感情から生まれていたんじゃないだろうか。そのときと今は繋がっている。その証左のようにラストはニュー・アルバムの軸の1つである「ブルースプリングパンク」。3人の演奏が各々の言葉のように響く。シノダ渾身のロング・トーンが振り絞られ、清々しいエンディングを迎えた。
キレッキレな演奏と打って変わって、アンコールで再登場した3人は楽屋トークかというぐらい緩い。それでもイガラシが放った、まだアジア・ツアーは残っているものの彼にとっては"今日がファイナル"という言葉に、フロアも大いに納得。渾身の本編を終了しても、アンコールでまだ聴かせる「さくらのいつか」や、意表を突く2015年発表の「劇場街」を披露し、最後は最速、最大音量で絡め取る不安から逃走するような「ハイゲイン」がかき鳴らされる。そのさなか、ステージの照明が暗くなりレーザーが何か文字を描いていく。なんて彼等らしい告知の手法なんだろう。そこにあったのは"ヒトリエ初 ホールワンマンライブ 決定! 2026/2/23 LINE CUBE SHIBUYA"の文字だった。
[Setlist]
1. 耽美歌
2. ジャガーノート
3. オン・ザ・フロントライン
4. 3分29秒
5. Quadrilateral Vase
6. ワールズエンド・ダンスホール
7. 伽藍如何前零番地
8. daybreak seeker
9. 月をみるたび想い人
10. SLEEPWALK
11. Shadowpray
12. おやすみなさい
13. ネバーアンダースタンド
14. 踊るマネキン、唄う阿呆
15. NOTOK
16. アンノウン・マザーグース
17. ブルースプリングパンク
En1. さくらのいつか
En2. 劇場街
En3. ハイゲイン
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