Japanese
忘れらんねえよ
Skream! マガジン 2015年03月号掲載
2015.01.25 @赤坂BLITZ
Writer 石角 友香
足掛け1年に渡って開催してきた"ツレ伝ツアー"もこの日がファイナル。会場にはこれまで対バンしてきたバンドの楽曲が流れ、いみじくもそれが'14年~'15年のライヴ・シーンを象徴するオムニバスのように聴こえる。それほど濃厚だったのだ"ツレ伝"は。
オープニング・アクトとして登場した変人変態女子二人はギター&ドラムの女性2ピース・バンドで、お揃いのおさげとストライプのバルーンスカートで可愛いキャラに見えつつ、音楽性は日常的なことや、言葉遊びを主体にしたパンクといった趣き。女芸人ほどの殺気はないものの、どこかコミカルで親近感の沸くステージで、忘れらんねえよのファンも温かな拍手を送っていた。
そして、"ツレ伝"ファイナルの"対バン"はお笑いコンビのキングコングだ。"なぜ、ファイナルだけミュージシャンじゃないのか?"はあとで柴田隆浩(Vo/Gt)が男気満載のMCで語ってくれたのだが、まぁお笑いライヴを"(音楽の)ライヴを楽しみに来ている"観客の前でやることの大変さ! 西野亮廣が柴田と家飲みしたときのエピソードでエンジンをかけ、ラップ風からラテン風漫才など恐るべき瞬発力で展開するふたりの掛け合いは、楽器の音をアンプリファイする音楽ライヴとはまた違う、人間力を見せつける。フロアから起こる"フー!フー!"の歓声を拾ってアドリヴに消化する梶原雄太の反射神経のすごさ、ことあるごとに"好感度大事やから!"と自虐トークを挟む西野の自分の見せ方。気がつけば目まぐるしくテーマが転がっていき、忘れらんねえよとの出会いからずいぶん遠いところまで旅した気分で、20分のネタが終了。お笑い芸人の瞬発力と殺気に爆笑しながらも、どこかで鳥肌が立っていたことを認めよう。
セット・チェンジを挟んで、会場が暗転するとスクリーンに"ツレ伝ツアー FINAL"の文字が浮かび上がり、ヒートアップする歓声。その文字が"ツレ伝 NO OWARI"に変わったところでピンスポットは後方に。なんと柴田がピエロのお面と赤いアフロ姿でPA付近から登場してるじゃないか!途中からファンに持ち上げられ、クラウドサーフでステージに到着した柴田、"僕、DJ LOVEじゃありません!"の一声を皮切りに1曲目の「僕らチェンジザワールド」をブチかます。とにかく出音がデカい。手数は多くないものの、オーセンティックなハードロックにも似た痛快さが響き渡る。歌いながらも何度も"いいねぇ、赤坂BLITZ!ありがとう!"と、冒頭から観客を巻き込む柴田の人間力は、似たようなことをやってるにしても説得力がデビュー時とまるで違って見えた。男子のクラウドサーファーとその嬌声が一際増した「CからはじまるABC」や「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」など、忘れらんねえよの"涙と鼻水混じりの男気"を代表する5曲を連発し、柴田が感謝を述べ、フロアを見渡し"おじさん率高い"と笑いながら、同時に可愛い女子もいることはいるというニュアンスの発言。そして腰のケガが治り"立って演奏できるのがこんなに楽しいなんて!"と満面の笑顔で復活した梅津拓也(Ba)に大きな拍手が贈られる。
その後のブロックでは途中から2月4日リリースのシングル「ばかもののすべて」の共同プロデューサーでもある盟友・有馬和樹(Vo/Gt/おとぎ話)もギターとコーラスで参加し、まだ世に出ていないにも関わらず「ばかもののすべて」へのリアクションの大きさに驚く。同曲終わりで、この曲のMV撮影が大変だったこと、"SEXジャンプ、3000回はしたからね!"という事実(ということの真偽は最後に分かるのだが)を話す柴田。腰を痛めていた梅津の代役でSEXジャンプを務めた友人にフロアからも大きな拍手が起こったり、忘れらんねえよに関わるあらゆる人が巻き込まれる、"他人ごとじゃない空間"の密度は、ライヴが進行するに連れてさらに濃くなっている印象だ。
酒田耕慈のドラム・ソロから、もう1曲シングルから「今夜いますぐに」を披露。そして跳んだり歌ったり、テンション高くフロアを巻き込むだけじゃない「そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか」「タイトルコールを見ていた」を続けて演奏した場面では、究極に音数を絞り込み、響きで聴かせるミディアム・チューンが赤坂BLITZというキャパに負けることなく、切なさをダイレクトに届け得たことに震えた。今の忘れらんねえよの地肩の強さを確認した時間だ。
中盤に差し掛かるとツレ伝を振り返りつつ、対バンはみんな強敵だったこと、なぜファイナルにキングコングを呼んだのかについて話す柴田。まだ動員も100人前後だったころ、キングコングのお笑いライヴで「僕らチェンジザワールド」の使用許可の電話があったこと。赤坂BLITZはキングコングの恒例ライヴの会場で、いずれ自分たちもここでライヴをしたいと願っていたこと、その暁には対バンで出てもらうことをOKしてもらっていたこと。"それが今日ですよ!"という柴田に浮かぶのは万感の思いというより、ここまで来た事実以上でも以下でもなかった。感謝の気持ちを演奏しつつも何度も発し、最高の時間を過ごしていることを表すと同時に"でも今日は通過点でしかない"と明言していたのだ。バンドとバンドじゃない職業とか、そういうことではなく、忘れらんねえよの人間としての在り方にファンが自己投影し、拳を上げて踊る人も、直立して前方で観ている人も、すべからく"自分ごと"としてステージを見ている。全然、"テンプレじゃないライヴ空間"、こんな情景は他のバンドにはなかなかないんじゃないだろうか。そしてその理由はもちろん、彼らの音楽が好きな人間が集まっているからなのは当然として、シンプルすぎるほどシンプルなアンサンブルだからこそむしろ生きる柴田の一言一句が、スキルを超えた部分でいちいちライヴでは刺さるからじゃないか? それは情報量とフックの多い楽曲が潮流の今にあって、そうしたバンドが無数の武器を持ってるとしたら、忘れは"ほぼ素手みたいなもの"だと思う。「僕らパンクロックで生きていくんだ」や「バンドワゴン」での柴田のイノセントな声は、ファンそれぞれの新たな決意表明の声と重なっていく。ひとりひとりにとっても"自分は自分でここから生きていく"、そんな無数の声があった。
ツレ伝ではオファーが実現しなかった相手ももちろん存在し、例えば残念ながら実現しなかったチャットモンチーへの溢れる思いは「シャングリラ」のカバーで晴らす(?)。男性が歌うと"ちょっと理想入りすぎだろ!"と心のなかでツッコミを入れた女性も多いことだろう。終盤にはフロアに小さなサークルを作らせそこに柴田が降り、そこを起点に起こった同心円状態のヘドバンが凄まじく、ことさら男子ファンのボルテージが上がる「北極星」に突入。続く「ばかばっか」ではフロアを左右に分けての"Choo Choo TRAIN対決"。しかも汗だく興奮状態のそこへ西野を呼びこむ柴田。猛獣の檻に投げ込まれた勢いで腰が引けている西野の表情なんてもう見ることはできないだろう。でも、"バンドマンがお笑いライヴに参加できるか?"と思うと、西野の芸人根性を思い知った。
本編ラストはそれまでの狂騒を一旦、リセットしてどこまでもまっすぐに、「バンドやろうぜ」を演奏した3人。冴えないバンドマンの愚痴でもあり、ギリギリまで追い込まれても、それでもやっぱりやるしかないねとため息混じりに発される"バンドやろうぜ"という言葉の重みは、この日、輝きを増して届いた。しんどいことはなんら変わらないのだけど、決意がそのまま届いた気がした。
何ら難しいこともギミックもないし、愚直なまでに裏表のない歌を歌っているだけのこと。その"だけのこと"こそが忘れの武器だ。ほぼ2時間に至る本編をダレることなく見せ切った3人の姿勢。身体を張ったパフォーマンスも、全員参加のしかけも全部"生身"。メンバーの名前を呼ぶアンコールはひとつの歌のようになっていて、そんなところにもこのバンドとファンはお互いの存在によってお互いを炙りだしているのだなと思った。忘れがいなかったら、ライヴハウスに行くこともなかった人もいるんじゃないだろうか?
アンコールでは彼ら流のグランジに挑戦した新曲「ここじゃないけどいまなんだ」で、血の滲むようなヘヴィさとささくれた世界観でフロアを凝固させたりしていたが、まさにそうした新たな表現が、これからの忘れらんねえよのポテンシャルのひとつでもあるのだ。ライヴが終わり、スクリーンに投影された「ばかもののすべて」のMVが、"よくここまでやるな!"という身体の張り方とワン・テーマぶりで、最後の最後にまた笑い泣きしてしまった。大笑いしながら深い部分で傷に触れられ、治癒されるような不思議なバンド、忘れらんねえよの本気。そのアウトプットの仕方を引き続き見守っていきたいと思う。
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