Japanese
ドラマチックアラスカ
Skream! マガジン 2016年09月号掲載
2016.08.11 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 沖 さやこ
2月にマルオカケンジ(Ba)が左手親指の付け根を骨折したため活動を休止し、1年以上"仮メン"ギタリストとしてバンドを支えていた爆弾ジョニーのロマンチック☆安田が、自身のバンド復活に伴い仮メンを卒業という環境でのワンマン・ツアー。どんな状況なのか、正直なところ心配もあった。だがこの日のヒジカタナオト(Vo/Gt)とニシバタアツシ(Dr)は弱気な様子など微塵も見せず、メンバーが帰ってこれる場所を守ろうと力を合わせながら前へと進んでいた。
ステージに現れたヒジカタはいきなり"新曲やります!"と宣言し、1曲目から新曲をフロアに投げ入れる。「無理無理無理」や「ニホンノカブキ」のエッジーな要素を抽出したようなドラマチックアラスカ印の楽曲に、フロアも沸騰。喜怒哀楽すべてをぶちまけていくように音を鳴らし声を張り上げる。まさしく特攻だ。サポート・メンバーのタケムラカズキ(Ba)と澤柳昌孝(Gt)はクールにメンバーふたりの音を支え、そのカラーの違いもキャッチーに映った。音響面ではリバーブなどが多用され、ガレージ・パンク・バンドばりの爆音に加えてヴォーカル・エフェクトなどでも魅せる。
"俺らのライヴはマナーさえ守ってくれればルールはないから。とはいえ(観客と自分たちの間に)まだまだ壁を感じるんで、上に跳んでもらえますか?"とテクニカルなリズムを用いたダンス・ナンバー「怠惰故」へ。ニシバタのドラム・ソロでヒジカタがフロア・タムを叩いたり、サポート・メンバー同士がソロ合戦をしたりと、華やかな見せ場を作ってフロアの五感を刺激する。エンターテイメント性が加わったライヴは、ドラマチックアラスカがこの1年で新しく手に入れた武器かもしれない。ヒジカタが拍子木を叩く「ニホンノカブキ」のイントロも、Tシャツに羽織と袴のような広いパンツを着用するなど、音だけでなく視覚的な演出も徹底している。「リダイヤル」では、心の奥底に沈殿しているような切なさや繊細な感情を解き放ち、会場に余韻を残した。
MCでヒジカタがサポート・メンバー紹介をしたあと、彼が"この前までサポートしてくれてた爆弾ジョニーの安田君が遊びに来てくれてます!"と言うと、フロア最後方から"はーい! 頑張って~! 久しぶり~!!"とジャンプしながら笑顔で手を振るロマンチック☆安田の姿が。微笑ましいサプライズに観客も満足そうだ。続いてのブロックでは、USインディー・ロック風のミドルで軽やかな「なんでもないうた」と、「リダイヤル」で生んだ余韻を活かしたセンチメンタルな流れを作っていく。轟音の中に滲むヒジカタのソフトな歌声、ミドル・ナンバーで魅せるバンドの誠実さ、ギター・ロックの持つ青い焦燥感とバンドの核心的な部分が淀みなく染み渡る。
ヒジカタは"いろんな人たちがバンドの命を繋いでくれました"と言い、バンド仲間やスタッフ、リスナーに感謝を告げる。そして初めて東京でライヴをしたときのエピソードを語ると、"今日のこの景色はバンドを続けてきて良かったと思う景色です"と力強く言った。アンコールはヒジカタとニシバタのふたりで登場し、最新アルバムから1曲、アコースティック・セットで披露。とは言っても本編でも様々なアイディアを取り入れていた彼らである。曲の途中でサポート・メンバーふたりが入場し、たちまちバンド・アレンジへと変貌。アコースティックからひとつひとつ音が大きくなっていく展開は夜明けを眺めているようで、その包容力のあるスケール感に陶酔した。
ヒジカタは"まだまだ上に行きたいと思っています。でも俺たちの力だけじゃだめなんです。あなた方の力を貸してください。俺たちもあなたたちに力を貸すから。通勤や通学で聴いて頑張れるような音楽、家で休んでいるときにまったりできるような音楽、いろんな音楽を作っていくよ。これからもよろしくね"と晴れやかな表情を浮かべる。そのあとにふと彼から零れた"名残惜しい!"という叫びが等身大でとても良かった。ラストを飾った「星になる」は大きく熱い夢を抱えた彼らのマインドが音の隅々に通う。"キラキラ光る星になれ/いつかたどり着けるまで僕は歌う"というラインは、この日の彼らの心情だったのではないだろうか。
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