Japanese
ALA-UMI-DOSS TOUR 2015
Skream! マガジン 2015年08月号掲載
2015.06.28 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer 沖 さやこ
"関西が盛り上がってる""関西がすごい"と言われて久しい今日このごろ。関東在住の筆者も関東で関西バンドを観て"関西のバンドにはいいバンドが多いな""関西のロック・シーンは盛り上がってるんだな"と思うことは多かったが、この"ALA-UMI-DOSS TOUR 2015"で"関西のロック・シーン"へ向けられる期待や信頼、勢い、盛り上がりを五感すべてで実感した。筆者は1回のライヴで関西バンドだけを複数観る経験は今回が初めて。おまけに3組とも早耳リスナーの間では支持も厚く、関西の未来を担う若手バンドの中でも代表格となるバンドたち。それが関西ではなくバンドの登竜門的ライヴハウスの渋谷CLUB QUATTROでホーム感たっぷりの画を見て、もうこの関西ロック・シーンのブームは全国区なのだとつくづく思い知ったのであった。それは全国主要7都市で開催された全公演がソールド・アウトしているところにも表れているだろう。
"ALA-UMI-DOSS TOUR 2015"のセミファイナル、トップバッターはフロム京都、夜の本気ダンス。米田貴紀(Vo/Gt)が"みんないけますか!? 踊れる準備はできてますか!?"と煽るとフロアからは若い男女の絶叫が沸く。夜ダンのワンマンなんじゃないかと思う盛り上がりだ(ちなみにこのあとに登場するフレデリックもドラマチックアラスカも同様だった)。1曲目「WHERE?」も、出音から下から抉るように太い音を鳴らす4人。「Fun Fun Fun」も8ビートの高揚感が心地よく、鈴鹿秋斗(Dr/Cho)の力強いドラミングはこういう曲でさらに説得力が光るのかもしれない、とぼんやり思う。フロアには踊る人、聴き入る人――80'sリヴァイヴァルのあった00年代のUKインディー・ロック直系のサウンド、土台がしっかりしたグルーヴで身体を踊らせて心を躍らせる、個性的であるが正統派。それが夜の本気ダンスだ。
7月8日リリースのシングル表題曲「By My Side」は、音に合わせてしなやかに揺れる米田の立ち姿に見入る。ソウルの香りもする彼のヴォーカルは、にくいほどにリズムを生み出すので、より楽器隊の演奏力も輝くというものだ。マイケル(Ba/Cho)の低音もそつなくうわものを支え、町田建人(Gt)は黙々と華やかなソロを弾く。「LOVE CONNECTION」「You & I」と優しくあたたかく、ちょっぴり切なくフロアを包む、その音には感慨深さがもたらす感謝が込められている気がした。MCで鈴鹿が彼なりのユーモア溢れる言い方で東京の観客に感謝を伝える。"ほんま、ほんまにありがとうございます。出る前、ちょっと......ちょっと言うたらあれやけど、感動しました"と、言葉にならない気持ちを言葉にしようとする米田の率直な言葉も、胸に響いてきた。するとネクタイを外しながら米田が"まだまだ踊り足りてないようですね。もっとロックで踊りたいですか?"と煽り「fuckin' so tired」へ。米田がハンドマイクでフロアに降りたり、ステージに戻りコール&レスポンスをしたりするなどテンションはMAXだ。ラストの「戦争」は爆音の生みだすキャッチーさが圧倒的にポジティヴな感情を生んでいて、その音像がラストの米田の投げキスをより引き立てていた。鈴鹿が"いつか絶対クアトロでワンマンするんでよろしく!"と言っていたが、それも遠くない未来だろう。
2番手はフロム神戸、フレデリック。音源での音使いや中毒性、ヴォーカルやヴィジュアル面からもおしゃれでキュートなイメージが強かったのだが、それだけではないことを痛いくらいに突き付けられた。曲の前から三原健司(Vo/Gt)はのっけからシャウトのMCでフロアを焚きつけ、三原康司(Ba/Cho)と交互に言葉を発し一気にステージへの意識を引き付ける。健司の"かかってこいよ、踊れ渋谷!"という絶叫から「オワラセナイト」。康司のベースとkaz.のドラムの体幹の太さも破壊力のある音のキレも抜群で、その雄々しさはハードコア・バンドばりだった。続いての「DNAです」も音のひとつひとつに緊張感が走り、そのスパイスがさらにリズムを際立たせる。健司と康司のMCもすべての言葉に男気が溢れ、これぞ観客を引っ張るライヴだ、とその巧みな手腕と熱い心意気にも圧倒されっぱなしだった。特に健司のギラついた目の鋭さは本気そのもので、ロック・バンドのフロントマンとしての華も堂々たるものだ。4人の轟音もまた、関西の意地と誇りを賭けて東京に勝負を挑んでいるようである。そこにあの哀愁のあるメロディをぶち込んでくるんだから、反則技のレベルだ。
康司が全国に自分たち3バンドを待ってくれている人がいたことに感謝を告げると"ALA-UMI-DOSS TOURのためにあなたたちがここにいるんじゃなくて、あなたたちのためにALA-UMI-DOSS TOURがここに来たんです。あなたの音楽なんですよ、我が物顔してめちゃくちゃ楽しんでな"と続け、「ほねのふね」「ディスコプール」「プロレスごっこのフラフープ」とリズム隊の作るうねりの上に、赤頭隆児(Gt)の鮮やかなプレイも健司のヴォーカルも観客も飛び乗っていくようだ。これぞフレデリック流のトランス空間だろうか。健司が"あなたと俺たちでロックの未来を作っていこうじゃありませんか! 踊ってない渋谷が気に入らないわけですよ、踊れ!!"と叫びラストは「オドループ」。健司は間奏で"渋谷、最高やんけ!"と歓喜の声を荒々しく上げ、ラストまで彼らはひりついた空気を絶やすことはなかった。これがフレデリック流の感謝の気持ちの表現であり、もっと上へ行くという意志表明なのかもしれない。夜ダンとフレデリックが同じ渋谷CLUB QUATTROという場所で、まったく違った景色を見せたところにも、バンドそれぞれのメンタリティやポリシーを感じた。
そしてトリを飾る、このツアーの発案者でもあるフロム神戸、ドラマチックアラスカはどんなステージを繰り広げるのか? 彼らが登場してまずこの渋谷CLUB QUATTROに響いたのは"仮メン(仮メンバー)"の"ドラマチック☆安田"こと爆弾ジョニーのロマンチック☆安田のギターの音。そこに重なるヒジカタ ナオト(Vo/Gt)、マルオカ ケンジ(Ba)、ニシバタ アツシ(Dr)の勢いのある音から「東京ワンダー」。ヒジカタが辿る、轟音の中に消え入りそうな切ないメロディが焦燥感を生み、リズム隊はひたすら音を強く刻み込む。ギターを高く構えた安田は表情でも存分に弾いていた。泣きわめきながら疾走していくようながむしゃらな青さのある音像が、殴りかかるようにこちらに飛び込んでくる「和心」、2ビートが大迫力な新曲「世界の始まり」と、ここまでがむしゃらで感情的なライヴをするバンドは今日の若手では珍しいかもしれないな、と思った。悲しみと怒りとナイーヴとセンチメンタルとアグレッシヴが一気に押し寄せてくる。だからこそドラマチックアラスカというバンドはまだまだ未知数で、計り知れない。バンドの"今"を観ているのにもかかわらず、未来が気になって仕方がない。彼らが刻みつける"今"にはその先をちらつかせる不思議な魔力があるのだ。安田がバンドに遠慮することなく前に出ていくところもバンドとしてのグルーヴを生んでいて面白い。
MCタイムではヒジカタが喋ってるときに安田がiPhoneで、話の内容に合っているのか合っていないのかわからない効果音やBGMを鳴らすなど、自由も自由。まず仮メンバーがMCでヴォーカルの次によく喋るという時点でちょっとおかしい(もちろんいい意味で)。続いて「リダイヤル」で4人の結束がさらに強まり、全員が自分たちの鳴らす激情の音に身を投じていた。そこから転がるように「無理無理無理」へ移ると、その殴りかかるようなサウンドに自分の身も心も浸食されていくようだった。アウトロでヒジカタがギターをかき鳴らしながら"仲良しこよしで回ってるツアーじゃないんです、毎回悔しい思いをする戦いなんです。この戦いをあなたがたに見せられたと思う"と叫ぶと、安田がギターを弾きながらフロアに倒れ込んだ。
アンコールではヒジカタが"この3バンドで回れて良かった"と語り、このツアーを行えたことに感謝を告げて「星になる」を披露。フロアからのサビのシンガロングも情熱的で、ドラマチックアラスカの音楽がしっかりと受け止められ、愛されていることを痛感した。最後に全バンドがステージに登場し記念撮影。親交の深い関西バンドらしく話も弾み、翌日誕生日を迎える安田に誕生日ケーキが贈呈されたりと、まるで打ち上げ会場のような空気感に場内からも笑いが絶えない。最後は一本締めとヒジカタコールが起こり、祝祭感のなかセミファイナルの幕は閉じた。
この3バンドがこのタイミングで全国7ヶ所を回りしのぎを削った経験は、これからのドラマチックアラスカ、フレデリック、夜の本気ダンスにとって非常に重要なものになるだろう。関西バンドの結束力や関西バンドとしてのプライドを感じると同時に、バンドそれぞれにある実現したい未来への野心を感じられる熱いライヴだった。
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