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INTERVIEW

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岡崎体育

 

岡崎体育

Interviewer:秦 理絵

-さいたまスーパーアリーナに向けての作品となると、曲作りでは、あのステージから見た広大な景色みたいなものを想像して作ったんですか?

実はそれがまったくなくて......いや、まったくではないか。2曲目の「からだ」っていう曲はインディーズ時代に書いた曲ではあるんですけど、サビ前でさいたまスーパーアリーナに対することを言ってるので、コンパイルするのもこのタイミングしかないと思いましたね。終わってから出しても意味わからん曲なので。あとは、最後の曲「The Abyss」もライヴでやることを想像してます。だから、ステージへの意識も含んだアルバムでもあるんですけど、それ以上に......また同じことを言っちゃいますけど、自分が作りたい曲だけを作ったアルバムですね。それを評価してもらわないと、音楽家として意味がないし、今まで演じてきた道化とかピエロの部分も台無しにしてしまうので。

-アルバムには「からだ」とか「PTA」みたいなエレクトロな曲もあれば、ロックンロールな「なにをやってもあかんわ」、シューゲイザーっぽい「Jack Frost」もあり、ピアノ・バラードの「龍」もある。12曲でジャンルのバランスを整えながら作ったんですか?

僕はパソコンの打ち込みで曲を作るので、その場の思いつきとか発想がそのままかたちになることが多いんですよね。よくバンドのインタビューを読んでると、"今回のアルバムは多岐にわたって......"とか言ってるけど、僕は自然にそうなるというか。ゲスト・アーティストを呼ばなくても、打ち込みでいろいろな世界が出せるんですよ。ひとつのジャンルに固執するタイプじゃなくて、広く浅くやりたいことをやっていきたいので。

-"ゲスト・アーティストを呼ばなくても"と言いつつ、今作ではいろいろなアーティストを迎えてますよね。「PTA」ではゴスペル・シンガーのOlivia Burrellさんとか。

Oliviaさんは日本で活動しているカナダ人の女性の歌手なんですけど、曲ができたときに、"これは絶対に女性のフェイクっぽい歌が入ってた方が気持ちいいだろうな"って思ったんです。あとは、ひとりで打ち込みで作った曲でも、今回のアルバムに入れるにあたって生音で弾いてもらった曲もあったりして。

-ストリングス・カルテットと生バンドで演奏してる「私生活」のこと?

そう、これはもともとインディーズのときに出した曲だったんですけど、それを生音に差し替えました。

-「なにをやってもあかんわ」も生バンドですよね? 岡崎さんと仲のいいミュージシャンが集結して。

これは僕のエゴですね。夜の本気ダンスの鈴鹿(秋斗/Dr)は、同じ地元の隣の中学校に通ってたんですよ。愛はズボーンの白井達也(Ba/Cho)とか、普段から仲がいい友達にやってもらうっていうのは、幸せでしたね。

-DTMで作ることに完結させず、人と一緒に作りたいとか、より生のサウンドを入れたいっていう欲求みたいなものって、今岡崎さんの中で高まってるんですか?

今まではひとりでやってるからこそかっこいいみたいな固定観念があったんですよね。実際にステージもひとりで立ってるので。でも、初めてアレンジャーの方にお任せしたときに自分にない発想があって。月並みな表現ですけど、それで自分の音楽性が広がったんですよ。そのへんから考え方が変わってきたと思います。今は自分以外の人に楽曲に参加してもらうのが楽しくなってきたんです。

-なんとなく、"岡崎体育"ってひとりで戦ってるイメージが強いけど、今回のアルバムを聴くと、仲間がいっぱいいるなと思いますよね。

寂しくひとりでやってると思われるかもしれないですけど、音源のクレジットを見たときに、"なんや、こいつ友達いるやんけ"って思ってほしいですね。

-歌詞に関しては、ネタ曲がないぶん、より詩人としての真価も問われると思いますけど。

でも意外と苦労した覚えはないんですよ。歌詞で大変だったのは11曲目の「龍」ぐらいで。あとはいい意味で適当に、というか。リラックスして曲を書いたんですよね。あんまり意味のない言葉を羅列してる曲も多かったりするので。

-とはいえ、ラストの「The Abyss」もそうですし、「からだ」とか「弱者」とか、より自分自身を剥き出しにするような一面もありますよね。

そうですね。そのあたりは潜在的にたまアリ(さいたまスーパーアリーナ)を意識してるんだと思いますね。音楽家としての自分の自己顕示欲が出てるんです。今回は"自分語りのアルバム"ですね。

-ちなみに「Okazaki Unreal Hypothesis」がちょっと不思議な曲で。岡崎さん自身のことを歌ってるようで、何かがズレているような違和感があったんですよね。

これはダブっぽい要素に、岡崎体育らしいテクノ感とかJ-POP感を出したいなと思ったんですけど、全然ダブっぽくならなかったんですよ。なんでかと言うと、そもそも僕がずっとダブを聴いてるわけじゃなくて、広く浅くダブを聴いてるだけだったからなんですけど。それがむちゃくちゃフェイクだなと思って。それで歌詞の内容も僕のフェイクというか。アンリアルな人生のパラレル・ワールド......ダサいな、この言い方。まぁ、そういうパラレル・ワールドみたいなものをイメージして書いた曲ですね。

-そうなんですね。これからライヴというタイミングで聞くのも野暮ですけど、さいたまスーパーアリーナを終えたあとの自分というものは想像できてますか?

まったく考えてないですね。もともとは引退するつもりだったんですよ。でも、メジャー・デビューしてから2年半活動してきたなかで意識も変わってきて、これからの岡崎体育も楽しみたいなと思うようになったんですよね。だから、岡崎体育を続けつつ、作家とかプロデューサーみたいな裏方作業もできたらいいなと思ってます。

-たまアリが終わっても、続けようと思えるようになったきっかけはあるんですか?

"ROCK IN JAPAN(ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018)"のGRASS STAGEでやらせてもらったことかな。

-めちゃくちゃ最近じゃないですか。

そうですね。あのステージって6万人ぐらい入るんですよ。それが俺だけを見てる状況に得も言われぬ気持ちになって。これは味わえるだけ味わわせてもらった方がいい、この幸運を捨てずにやり続けたいと思ったんですよね。