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INTERVIEW

Japanese

岡崎体育

2017年07月号掲載

岡崎体育

Interviewer:石角 友香

その背景に他者へのひがみや、"この元ネタ知ってるよ"と言われることも想定した逆張りの強さなどなど、クレバーさがあるのはわかっていても、岡崎体育という人がやりたいことは"僕の音楽を面白がったり、笑ったりしてくれたらいい"という一点に尽きると思う。メジャー2ndアルバムには、MVが先行公開され、音楽的な完成度の高さに裏打ちされた面白さでまたしても世間を騒がせた「感情のピクセル」や「Natural Lips」を始め、音楽を始めたころの、わりと等身大でリリカルな世界が描かれた曲もあるし、十八番のテクノ・ポップもある。セルフ・タイトルとも取れる"XXL"から見えてくる岡崎体育というアーティスト像に、インタビューで迫ってみた。

-前作(2016年リリースのメジャー1stアルバム『BASIN TECHNO』)で一気に知名度が上がって以降、今作に至るまではいかがでしたか?

前作でのデビューが瞬発力があったので、世間の見え方として、どこへ行っても"MVあるあるの人"って言われますし、そうなってる以上、たぶん"1発当てた奴"っていう見え方になってるのかな? という意識がちょっとあったんです。かと言って、そこを崩して"あれは全然適当に作ったやつで、ほんとはこういうのが作りたいんや"っていう2ndアルバムを作ろうとはしなかったんですよ。もう"1発当てた"っていう見え方になってるんやったら、2発も3発も4発もなんぼでも当てたろやないけ、っていう、反骨精神じゃないけど、そういう気持ちで臨んでいたので。かと言って、2発目、3発目以降のアイディアが1stの時点でなかったのか? というと、そうでもないんです。1stを作ってる段階で、3年分ぐらいの構想で活動プロジェクトがあったので、"1stがバン! って行ったから、次も絶対バズらせなあかん"みたいなプレッシャーはそこまでなかったですね。

-プレッシャー以上に、ブレイクしたことを背負っちゃおうと?

そうですね。"まだ引き出しはあるんだぞ"っていうのが見せられたらなとは思ってたんです。2発目、3発目を狙って世に出した作品が世間にどう思われようが、自分は絶対に面白いと思って作ったものだったので、僕としては今回のダブル・リード曲となる2曲(Track.2「感情のピクセル」、Track.3「Natural Lips」)のMVが短い期間でかなりの再生数まで伸びたことに関して、自分のセルフ・マネジメントとしては大成功だったかなと思ってます。

-ブレイクしようがしまいが、やりたかった曲もある?

9曲目の「Snack」と、10曲目の「鴨川等間隔」です。この2曲は今作の書き下ろしではなく、インディーズ時代に作った曲で、自分自身のクリエイティヴ人生の中で見たときに1、2を争うぐらい気に入ってる作品なんです。だから、この2作品を再録という形で、メジャー盤でバーコードつけてリリースするときが来たら、きっとそれが自分のキャリアハイだろうという意識があったんですね。で、2ndという、デビューから1年という早いタイミングでそのときが来て。僕は、昔から2ndアルバムがいいものはすべて通して良いっていう持論があるんですよ。それは音楽だけではなくて、映画とかでも"2"が面白いものって全部シリーズとして面白い。その持論の中に、なんとか自分も落とし込めたらいいなという意識があったんです。なので、今回の2ndアルバムに関しては、この「Snack」と「鴨川等間隔」の2曲を再録で入れてる点からも、僕自身のアルバムに対する力の入れ方が強いなと自分でも感じてます。

-この2曲が岡崎体育さんにとって大きい存在だった理由は?

ライヴでやることはほとんどない曲なんですけども、自分でイチから打ち込みをして、歌詞もある程度の年月をかけて書いて。なおかつ、僕が得意としていて、アプローチの材料にしてるネタ曲ではないところ。真面目に書いた曲で、すでに自分自身のYouTubeアカウントで自主制作のMVを公開しているという点です。インディーズ時代に何から何まで自分でマネジメントして、自分のやり方で世に音楽を提供していた真っ只中に作った2曲なので、この2曲を作ったときの気持ちを将来ずっと忘れずに。初期衝動というか、そのときの感覚をずっと忘れずに制作ができたら、たぶんそれが幸せなことじゃないかなと思っていて。そんな曲を、"岡崎体育は2ndアルバムが良い"と将来言われるために、今作に入れました。

-岡崎体育さんにとっての2ndアルバムの好例は?

明確にひとつあるのは、OASISの『(What's The Story) Morning Glory?』(1995年リリース)とか。映画で言えば"ターミネーター"もそうですし、あと"スパイダーマン"とか"バットマン"とかもですね。

-「鴨川等間隔」は岡崎体育さんが鴨川の河原を見ている感がわかります。

ほんとですか? よかった。キャラを演じてる部分もあるんですけどね。岡崎体育は、ひがんだり、世の中を斜めに見たりしているようなキャラクターだというイメージがみなさんについてると思うんですけど、「鴨川等間隔」の歌詞のストーリー的にはフィクションで。歌詞に出てくる"塩田"という人物も実際にいるわけではないですし、僕が鴨川を普段から行き来してるわけではないんですけど、それを今聴いてくれてる人が"これ、岡崎体育っぽい歌詞やな"と思ってくれたんなら、それは僕のキャラクターづけが成功した証拠だと思うので嬉しいですね。

-そして岡崎体育さん自身がジャンルになったアルバムだなと思います。

ジャンルレスなアルバムになっていると思いますし、カメレオンとしてのアルバムができてるんじゃないかなと思います。いろんなジャンルを自分なりの色で表現できてるとは思いますね。

-それは物作りを始めたころからの展望なんですか? それとも勝手に?

勝手になったんですかね。あんまり"このジャンルに造詣が深い!"っていうのがなくて、ほんとに広く浅く音楽を聴いてきたタイプなので。自分がアウトプットするときも、自分がものすごく好きだった音楽のジャンルに影響されることがあんまりなく、じゃあこういうのやってみようっていうのを広く浅く手広くやってるって感じですね。