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LIVE REPORT

Japanese

岡崎体育

Skream! マガジン 2024年01月号掲載

2023.12.23 @Spotify O-EAST

Writer : 石角 友香 Photographer:岸田哲平

岡崎体育が10月にスタートした全国17都市19公演の"okazakitaiiku JAPAN TOUR Ⅱ"を12月23日のSpotify O-EASTをもって完走した。このツアーは2022年の同タイトルに続くもので、未発表の新曲もかなり含み、各地でセットリストも変化していくという、まさに今、この時を示すツアー。ファイナルの東京2デイズはソールド・アウトの大盛況で、2階席には親子連れのスペースもあり、ファン層の多彩さを物語る。しかも公演後は本人のお見送り付きだ。

冒頭は"王者登場"感溢れる「Insane」のインストでブチ上げ、いきなりフロアはレイヴ仕様に。そのまま未発表の新曲「あてはまRing Ring」では、"東京から来た人?"、"それ以外の人?"と、コール&レスポンスで盛り上げるのだが、このふたつで"全員ってことですね"とオチをつけるのが彼らしい。2曲終わると、PCとステージ・ドリンクが置いてあるコーナーでMCをするというスタイルはいつも通り。今やったことを毎回更地に戻すようなこの進行はむしろ一曲一曲を堪能できる。

続くメタルコアな「Knock Out」では打ち込みのブラスト・ビートが獰猛に重低音を響かせるが、背景のLEDに映し出される歌詞の"何かしら伝えたい/その突き上げた拳に迷いはいらない的なこと"の"的なこと"という岡崎イズムが視覚から飛び込んでくると、おかしみが増して止まらない。未発表の新曲「知らんがな」では、そんなこと言われても俺は知らん! と言いたくなる世の理不尽が、アラビア風の旋律とサウンドに乗って展開するのもますますおかしく、ネタ曲とカッコいい曲のどちらに振り分けていいのか正直わからない。MCでは年末の忙しい時期にフルハウスを達成したことに感謝し、おっさんのカラオケを5,000円(のチケット)で見てもらってると言わせない、5,000円の価値のあるものを見せると宣言した。

アッパーなナンバーに続いては唐突に1曲、日常の中で焦燥とほんの少しの野望を燃やすSSW的なナンバー「観察日記」が電車の車窓からの景色をバックに歌われ、楽しさの中にも焦げついた感情を自分の中に見いだしてしまう。自分の感情に直面していると、どうやらPCにバグが発生。この時点では事実だと思っていたのだが、どうやらこのあと起こることの伏線だったようだ。続いて2階で親子観覧している子供たちへ、という振りで"劇場版ポケットモンスター ココ"主題歌集からレゲエ・チューン「ジャリボーイ・ジャリガール」を披露するのだが、どうやら子供より大人にウケている。続いてもレゲエ縛りで、初の12インチ・アナログでリリースされた「サブマリン」が、海や潜水艇の映像を背負って歌われる。微妙に古いビーチの映像に時間感覚がトリップするが、岡崎が吹く鍵盤ハーモニカは生で、一気に現実に戻ってくる気分だ。そして子供向けから一気に「おっさん」に振る展開もナイス。まだ老害なんて言われる年齢には遠いはずの岡崎が、ただ皮肉でそれらを自演してるとも思えない。どこかに自分ごと感があるから彼のネタ曲は嫌味にならないのだろう。

2022年に続いて、全国各地を細かく回る楽しさを知ったと話す岡崎。と、思えば"おっさんのカラオケが続きすぎて、これ5,000円の価値あるかな?"と問うと、"あるー"というなんのギミックもない返しが飛んでくる。チケット代に見合うものを見せなければという流れで、近年のトレンドであるフィーチャリングに乗じて(?)、迎えたゲストはペンギンの"てっくん"。すかさずファンもてっくんの偽物(岡崎いわく)を掲げたところで、「FRIENDS」の東京バージョンを歌う。てっくんが"もっとこいつに仕事やらせてやれよ"と訴え、まあまあ生々しいアピールが展開されたのだった。そしてこのツアーの直前に要望とは違う髪型になってしまったことをネタにした、その名も「Hair Cut」という新曲を披露してくれた。

散々笑ったあとはタフなダンス・タイムに突入。ガバ・トランス調の「Open」、四つ打ちでどこか90年代テクノを想起させる新曲「GUNG TUNG SUMMER BON WINTER」では、"自分の踊りを踊れ!"と、かのJAGATARA 江戸アケミを彷彿とさせる叫びも交え、岡崎も振りを交えたダンスを切れ味鋭くキメる。

そこから、忙しい時期ということもあってか、Sexy Zoneに提供した「休みの日くらい休ませて」をセルフカバー。ポップさのあるピアノ・ジャズに乗る、どこか先人クレイジーキャッツみのあるギャグ・センスとリアリティが冴える。アッパーなノリは続くエレクトロニックなダンス・チューン「We Can Get Over It」で加速し、フロアの垂直飛びの高さはさらに更新されていく。この曲の終わりに岡崎は"完走まで30分切ってます!"と、先ほどからの"チケット代に見合ったライヴ"の件を思い出させ、残り時間を精一杯楽しもうとするファン心理にも火をつける。さらに勢いをつけたいところで、再び相棒のMacBook Proに不調が。そこでMacBookにパワーを送ろうとフロアの声援を集めると、トラックがまるで生き物のように徐々にスムーズに動き出すという、演出だとしてもなかなか真に迫った場面。"みんなが茶番に乗ってくれたから"と、あっさり種明かししていたが......。

大いに笑ったあと、再び感謝を告げながら"僕は誰でもない、自分のために音楽をやってるんですけど、今よりギラギラしていた20代の頃、作った曲"という曲振りから「私生活」を披露。マスロックとストリングスが交差するアレンジに哀愁が加わり、思春期のヒリヒリした生身のリアルが刻みつけられたこの曲は、セットリストの中で最もシリアスな岡崎体育を唐突に見せつけた。かと思えば、またしても唐突に"クリスマス、何がほしい?"とファンに問い掛けると、金、家と来て岡崎体育の新曲というクリティカルなリクエストが。すると直々に事務所に確認をとってOKなら明日作ると約束(そしてクリスマスの朝、Xに新曲がアップ。有言実行にファンの賞賛が集まっていた)。

ラスト・スパートを前に再び"5,000円の価値があると思ったら踊ってください!"と煽って、8ビートのパンク・ナンバー「なにをやってもあかんわ」でアゲていくのだが、背景のAIによる画像生成と思われる岡崎に似ているような別人の映像が異様に目に焼きついてしまった。画像解析のプロの仕事と思しきそれが、APHEX TWINのごときアート・フォームに感じられて、何をやってもあかん、というリフレインが新たな意味を纏った気がした。そしてゴリゴリのエレクトロ・ビートが蠢いて「XXL」に突入。岡崎体育レペゼン・ナンバーとして場を完全掌握。フロアも余力を残すまいと全力でダンス&ジャンプで応え、本編終了。

と、本編終了からアンコールの拍手が拍子抜けするほど素早く再登場した岡崎。背景に注目させると、なんと2024年のZeppツアーが発表された。このときだけは拡散用に撮影がOKだったのも合理的だ。アンコールは童謡とデスメタルが交錯する「Q-DUB」で心配になるほどのヘドバンをする人が続出した。素早くステージをあとにしたと思ったら、呼ばれる前にダブル・アンコールとして再再登場し、ラストになぜ彼が音楽を作り続けるのか、そしてどんなミュージシャンであり続けたいのかが明快に歌われる「エクレア」をフロアと分かち合ったのだった。

作りたい音楽が多すぎる岡崎の音楽オタク気質と、いい音楽の常識やセオリーを超えていこうとするスタンスと、それを成立させるいい意味での計算。この無二のあり方はライヴに来なくちゃわからないのである。終演前、彼は何年かかっても"NHK紅白歌合戦"に出場する、と決意を語った。それはさいたまスーパーアリーナ単独ライヴの際も言い続けたことで現実になったように、言霊という自分の意思に様々な人の思いが乗っかるパワーを見た人ならではの言葉だと思う。2024年、岡崎体育はどんな曲を届けてくれるのだろう。楽しみが明らかに増した。

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