Japanese
岡崎体育
Skream! マガジン 2022年05月号掲載
2022.03.24 @Zepp Haneda(TOKYO)
Writer 秦 理絵 Photo by 中島たくみ
ワンマンとは銘打っているが、岡崎体育と、岡崎体育のコピー・バンド(その実態は岡崎体育本人なのだが)とのツーマン形式とも言えるユニークなライヴだった。岡崎体育が全国5ヶ所6公演で開催した全国Zeppツアー"実写版 クッキングばぁば"のセミファイナルとなったZepp Haneda(TOKYO)公演だ。昨年11月に開催された横浜アリーナでの単独公演以来の自身主催となる今回のツアーでは、お客さんとの距離が近いライヴハウスだからこそ、客席のひとりひとりの顔を見ながらコミュニケーションをとる岡崎の姿が印象的だった。アリーナ会場のダイナミックな演出も壮観だが、そのステージに立つ者の等身大の人間性を浮き彫りにするのがライヴハウスの良さだ。この日は、人を楽しませることにかけて天才的な感性をもったミュージシャン、岡崎体育の魅力がこれでもかと詰まった一夜になった。
オープニングには、白髪にめがね、花柄のエプロンを着けた岡崎が料理評論家"クッキングばぁば"になりきる、料理番組風の映像が用意されていた。お笑い芸人、土佐兄弟の有輝を招いて作る料理はクリームシチュー。こういった番組にはあるまじき、堂々と市販のルーを使うという邪道を行き、岡崎と有輝がボケとツッコミで掛け合いながら料理をする映像に会場は笑いに包まれる。ひとまず食材を切り終えたところで、芋村(岡崎体育)がヴォーカルを務める、岡崎体育のコピー・バンド=ポテト探検隊のライヴが始まった。"東京、元気でいきましょー!"。芋村の声を合図に、芋ヶ辻(Gt)、芋東(Ba)、芋田(Dr)という3人のメンバーが繰り出す軽やかなバンド・サウンドに、温かなメロディを乗せた「やさしくなりたい」で会場が様々な色のサイリウムで染まる。アンダーグラウンドなラッパー風のパフォーマンスで湧かせた「ポテト探検隊メンバー紹介ソング」から、歳をとっても自分自身をアップデートしていきたいと自戒を込めた名曲「おっさん」に続き、中盤には、岡崎がCMで歌うフラワーカンパニーズ「深夜高速」のカバーも披露。"生きててよかった"を連呼するあの歌で、どこか岡崎の佇まいに鈴木圭介(フラワーカンパニーズ/Vo)のような泥臭さが滲んで見えるのはきっと愛ゆえだろう。
2020年東京オリンピックで生まれた名言を彷彿とさせる子どもたちへの応援歌「八月の冒険者」、大学時代の鬱屈とした気持ちを綴った「鴨川等間隔」。ポテト探検隊がセレクトする岡崎体育の楽曲はネタではない曲が多めだ。必然的にそのステージはエモーショナルなものになる。売れなかった時代の悔しさを吐き出し、今も岡崎が大切な場所で歌い続けている「エクレア」を感情を込めて歌い上げたあと、"みんな好きなアーティストがいると思います"と切り出した芋村。"そういうアーティストに背中を押されていると思う。我々、ポテト探検隊は背中を押しません。体育座りをする人の横でポンポンと叩くことしかできない。その気持ちを共有するために作った曲です.........芋だということを忘れて、もう岡崎体育の体(てい)で喋ってしまいました!"と、キャラ設定がぐちゃぐちゃになりながら熱い言葉を伝え、「なにをやってもあかんわ」へと繋いだ。この日、それぞれの曲の締めでは様々なスポーツの素振りを決めてきた芋村は、最後にボーリングでストライクを決めたガッツポーズで終演。そんな遊び心にも岡崎体育らしさがあふれていた。
転換ではオープニング映像の続きが流れ、なんとかクリームシチューを完成させたあと、いよいよ岡崎体育のステージが幕を開けた。エッジの効いた打ち込みが交錯するヴァイオレンスなトラックが、やがて開放的にアップリフティングする「Championship」で、一瞬にして会場にクライマックスのような熱狂を作り上げる。MCでは"楽しい! 絶対俺のほうが楽しんでるから!"と、喜びを全身で伝えると、フェスの即出しレポート記事をそのまま歌詞に仕立て上げ、そのテキストどおりの演出で湧かせる「Quick Report」、甘くスイートなラヴ・バラードと見せかけて、途中からもうひとりの岡崎の心の声がだだ漏れになる「Voice Of Heart 2」へと、岡崎の斜め上の着眼点によって編み出される痛快なネタ曲が続いた。ステージ上の友だちであるペンギンのパペット、てっくんの黒さが見え隠れする「キャラクター」では、"アイドルとかキャラクターとか、人の希望で在り続けるものの重圧がテーマです"と言い添えた。一見、面白くてキャッチーな岡崎の歌だが、ひもとくと奥深いメッセージがあったりもする。
スクリーンにまるで小説のように歌詞をタテ書きに映し出し、ピアノの伴奏で聴かせた深遠なバラード「式」を歌い上げたあと、岡崎は会場スタッフや舞台監督をはじめ、初めて"ソニーで一緒にやろう"と言ってくれたという恩人へも感謝を伝えた。"ミュージシャンとして死ぬまで頑張っていきますので、よろしくお願いします"。かつては目標として掲げていたさいたまスーパーアリーナでの単独公演を終えたあとは、表舞台での活動を終了するという発言もしていたが、今の岡崎体育は違う。2010年代に自身が音楽シーンに登場したときに起こしたような衝撃を、2020年代にも起こせるという信念のもとに動いている。"やりたいことがたくさんあります。そのために全力を尽くすことが僕の人生のテーマです。紅白に出ること、アルバムを10万枚売ること。それが今の目標です"。その想いを音楽に託すように届けたのが、最新アルバム『FIGHT CLUB』のラスト・ナンバーとして収録されていた「Eagle」だった。"氷原の荒鷲は空高く風縫い飛んでいく"と、自身の生み出した表現物がどこまでも広がっていくことを願うように本編を締めくくった。
アンコールはもったいぶらない。一度、退場したあと、呼吸も整えないまま再びステージへと戻ってきた。"疲れた~。でもいいよね、最高ちゃう?"。フレンドリーにお客さんに話し掛け、自身が23歳ぐらいの頃に作ったというメロウなナンバー「Snack」をしっとりと聴かせた。ラストは"最後、魂の1曲を聴いてください"と言い、美しいミラーボールの光が会場を埋め尽くすなか、「The Abyss」で終演。浮遊感のある透明なバラードに始まり、四つ打ちのビートに生命の脈動を刻みつけるようなダンス・ミュージックへと飛翔してゆく。"一緒に踊れってこっちから言わなくても、楽しいって思ってもらえたら勝手に踊れると思う! カモーン!"。そう叫ぶ岡崎のバックに背負うのは"BASIN TECHNO"の文字。岡崎体育のライヴを目の当たりにすると、ネタ曲で話題を呼びながらも、その奥には、誰かの人生を支えられる音楽家でありたいという想いが強く根づいていることがよくわかる。この日はそんな岡崎の譲れない生き様を丸ごとぶつけるようなステージだった。
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