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INTERVIEW

Japanese

Kyso

2025年01月号掲載

Kyso

Member:Nyk(Vo) AssH(Gt)

Interviewer:山口 哲生

2024年に 始動した音楽ユニット、Kyso(読み:カイソウ)。17歳のときに歌手になることを夢見て来日し、日本テレビ系列で放送していた人気特番"のどじまんTHEワールド!"で3度の優勝を果たしたアメリカ出身のヴォーカリスト、Nyk(ニコラス・エドワーズ)と、YOASOBIやEXILEをはじめ、数々のアーティストのライヴ/レコーディング・サポートを務めている日本出身のギタリスト、AssHの2人によるこのユニットは、昨年の始動以降3ヶ月連続で楽曲を配信。英詞で紡がれる美麗なメロディや、日常に溶け込み、それを彩るスタイリッシュなチル・アウト・ミュージックはどれも心地よく、それでいて2人の強い意志やこだわりを随所に感じられるものに仕上がっている。Kysoというユニットはどんなヴィジョンを持って活動しているのか、配信楽曲を踏まえながらじっくりと話を訊いた。

それぞれがソロとしてアウトプットするところでは表現できないもの、この2人だからできる音楽、形というものが必ずある


-お2人はもともとSilver Kiddというバンドで活動されていたわけですが、初めて会ったのはいつ頃だったんですか?

Nyk:3年前ぐらい?

AssH:うん。最初に会ったきっかけがSilver Kiddだったんですよ。ドラムのFuyuさんとそれぞれが繋がっていた感じだったので、僕等お互いは繋がっていなくて。僕はNykのYouTubeを観ていたので、なんとなく知ってはいましたけど(笑)。

Nyk:ガードが固い同士だけど、意外とすぐ打ち解けたよね?

AssH:そうそう。バンドの中でも歳が近い2人で。1個差なのでほぼ同じなんですけど、最初打ち解けるまではちょっと時間かかったかな。お互いなかなか敬語が取れず(笑)。

Nyk:でも、制作ですごく意気投合して。当時は家がすごく近くて、週1ぐらいで通って曲を作ったりしているうちに、という感じでした。しばらく敬語は続いたけど(笑)。

-はははは(笑)。

Nyk:曲を作っているときの波動がすごく合うんですよ。ここまですんなりと曲が次々とできることは、自分1人でやっていてもなかなかなくて。自分が煮詰まった瞬間に絶対アイディアが出てくるし、最初からすごくやりやすかったので、一緒にやっていこうと決定的なものになったのはそこだと思います。

AssH:うん。会えば1、2曲はできる感じですね。それも曲を作ろうとして作るというよりはこのコードいいね、その詞いいね、そのメロディいいねみたいな断片的なものから最終的に曲という形として残すのが、お互いすごく好きで。もともとはバンドで出会ったけれど、2人でやるのもそれはそれで楽しいねっていうのが、Kysoの始まりでした。だからある種ラフですね。仕事という感じではなく、僕等が楽しいと思えるもの、かっこいいと思えるものを出していこうと。

-バンドとしては活動休止になったけれども、Nykさんとしてもそこまで波動が合うのであれば、そのまま一緒に続けていくのは本当に自然なことだったと。

Nyk:そうですね。バンドとしては最終的に7曲しか出せていないんですけど、1年半ぐらいで50曲ぐらい作ってはいたんですよ。中にはそうでもねぇなみたいな曲もあるにはあるんですけど(笑)、ほとんどが行けたんじゃね? みたいな。シングル候補みたいな曲がかなりできていたので、本当にその延長線上というか。それもデッドに追われてやる感じではなく、会えば楽しんで作っていたので、それに尽きると思いますね。今もすごく楽しみながらやれています。

-会えば1、2曲作るペースとなると、世に出ていない曲がかなり溜まっていますか?

Nyk:良くも悪くも(笑)。そこは悔しいところでもあるんですけどね。人によっては、このタイミングで出すから本当に頑張って作らなきゃみたいな人もいると思うけど、今のところは全然そんな感じではなくて。自然とできあがって、いいと思えたものを出そうという。僕等としては、Kysoのイメージとして共通して見えているものもあるし、それぞれに見えているものもあると思うので、それを見極めていきながら、とにかく人に聴いてもらわなきゃ始まらないということで、出していこうって。

AssH:それこそデッドラインに合わせて作らなきゃとか、これで一攫千金狙うんだみたいな軸で音楽を作るとなると、やっぱりクリエイティヴとはちょっとズレてくる気がしていて。でも、お互いの主軸にソロがあって、Nykだったら他にもいろいろな舞台とか僕だったらサポートとかをしているんですけど。それぞれがソロとしてアウトプットするところでは表現できないもの、この2人だからできる音楽、形というものが必ずあると思っているんですよ。そういうものをすごく心地よく作れるし、すごくクリエイティヴに、息を吸うように自然と曲がすぐにできるから、新鮮ですね。今までいろんなミュージシャンとか、シンガーとか、クリエイティヴをする人たちと関わってきたけど、ここまで自然とラフにできることはなかなかないので。

-Kysoは昨年11月から「Circles」、「Wasabi」、そして2025年1月18日に発表される「Her Wilds」と、3ヶ月連続で楽曲を配信されていますが、どの楽曲も共通してチルアウトなものになっていますね。

Nyk:チルというキーワードはサウンド的に大事にしている部分としてあります。というのも、僕等はこれが初めてのデビューというわけではないので、がむしゃらに聴かせるような曲ではなく、ふとしたときに軽い気持ちで聴いてもらえるようなものにしたくて。歌が上手いこととか、ギターのテクがすごいことを感じてもらいたいというよりも、この曲ってこんなときに聴きたくなるよねって純粋に思ってもらえるような作品を、信じてやっていきたいところがあるんです。なので、チルというキーワードはあるんですけど、それも抜け感みたいなものや、緩いテンポってわけでもなく、単純にいい意味で力をちょっと抜いた感じ。疾走感があるものでもガガガッ! って縦ノリで引っ張っていく感じではなく、揺れるようにリズムに乗っかって、それを気持ちよく聴いてもらえるような、そういう世界観を大事にしていきたいという話は、2人でしてました。

AssH:生活に寄り添うというか。テンション上げていくぞ! みたいな、そういう曲のかっこ良さはもちろんあるし僕も大好きなんですけど、僕等の音楽はチルとか、あとはリラックスとか、いい意味でサラっと聴けるようなもの。そういうところはテーマとしてありますね。

-そういう面はありつつも、ライヴで聴くとかなり印象が変わりそうな部分が、曲の中にいろいろとちりばめられているなとも思いました。そういった部分も考えつつ作られているところもあるんですか?

AssH:自分たちの小さなスタジオで作っているので、やっぱり音源として耳に届くものと、実際にアンプのスピーカーが鳴って、それを拾って卓を通して出してるものは絶対的に違いますし、逆にそこを別物として考えているというのは大前提としてある感じですね。やっぱりライヴならではの熱量や空気感は僕もすごく大好きだし、それがライヴの醍醐味だと思うので、ライヴはかなり変わります(笑)。僕等もびっくりするぐらい変わる。チルではあるけど、やっぱり実際に鳴っている生ドラムの響き、ギターの弦の立ち上がり、歌声の音の速さとか、そういうところはライヴでかなりパワーアップして出せるので、それもまた1個の楽しみだなと思ってます。

Nyk:ライヴならではのアレンジ的な意味合いもそうですし、それこそさっき話した上手さやテクを聴かせてしまわないように作ってはいるんですけど、そのなかでも、パッと聴いたときには難しそうなことをせずに、でもいざやってみようと思ったら意外といろんなことをやってたのね? っていうようなことは、自分たちなりには結構ちりばめているつもりですね。ギターとかヴォーカルの重ね方は、スタジオで録っているときは威圧感があるような難しいことはしないですけど、ライヴはやっぱりコミュニケーションなので。場面的に熱くなったり、思いっきり抜いてみたりする、ライヴならではのKysoの世界観みたいなのも大事にしてます。曲もいいし、ライヴでも聴きに行かなきゃって思ってもらえるようなことを、やっていきたいなと考えてますね。

-そんな楽曲を制作していく上で、ある程度の流れというか、パターンみたいなものは決まっているんですか?

AssH:パターンはいくつかあるんですけど、Nykのボイスメモをもとに、簡単にコード進行を決めて、ビートを一通りループで付けて、細かいところを調整していくというのがKysoとしては一番メインの制作方法ですね。それまでは僕がトラックを8割方作って、メロディを乗せるやり方だったんですけど、やっていくなかでそれがあんまり合ってないなって思うようになって。後ろが固まっちゃってる分、小回りが効かなくなるし、ここでこのコードが来たら、メロディはここしかないよねみたいに選択肢が限られちゃうから、Nykに一旦好きなようにやってもらって、僕が全く違う角度から入っていくようにしています。

Nyk:アイディア重視というか。これがいいと思ったものを1つでも見つけられれば、どっちが持ってきたのか、どこで生まれたのかみたいな過程にこだわらずに、いいと思った瞬間から必ず曲が完成していくので、そのきっかけみたいなものを日々作っている感じですね。僕だったら、電車に乗りながら小声で"Wasabi"って(スマホに録音する)。

AssH:怖いって(笑)。

Nyk:小田急線に揺られながら"Wasabi"って(笑)。あとは普通に家で録るときもあるし、AssHの家に行ってみてやることもありますし。今回配信した曲ではないんですけど、僕がすごく推している、いずれ出る僕等にしてはバラード寄りの曲があって。それはAssHから完全に作ったトラックが送られてきて、聴いた瞬間にメロディがすぐに浮かんできて。

AssH:早かったね。一晩で返ってきて、これでいいじゃんって。その曲もゆくゆく出ると思います。あと、「Her Wilds」も僕がトラックを先に作っていた曲の1つですね。「Circles」はどうだったっけ?

Nyk:「Circles」は珍しくその場でイチから2人で作った。

AssH:そうだった。ジャム・セッションみたいな感じで作っていきました。ヴァースとブリッジに関してはラップがかっこいいかなと思って、一旦ギターでワンコードのリフを作って。サビはキャッチーにしたいよねっていうことで、コード進行のモチーフが1個あったので、それを入れ込んでみてNykにちょっと歌ってみて? っていう。あと、「Circles」は、ちょっと和の雰囲気みたいなものを感じられるところがあると思うんですけど。

-そうですね。叙情的で。

AssH:それって結構面白いなと思っていて。日本独特な音階というか、間の取り方というか。そこはKysoとして意識している部分ですね。ちょっといろいろややこしいんですけど(笑)。

Nyk:むしろそれが、僕等が日本にいながら英語でやる意味だなと思います。曲の中に、日本文化とまではいかないにしても、日本のエッセンスみたいなものを入れ込んでいけたら、それが僕等にしかできないこととまで言うのは違うかもしれないけど、少なくとも今の僕等が得意とするものなのかなって。AssHは日本出身、僕はアメリカ出身で、これまで受けてきたものが半々なので、こんな洋楽みたいな曲でも、日本の良さを本当に微かにでもいいので感じてもらえるようなものを心掛けていきたいなっていうのは、2人でずっと話してます。

AssH:海外の人がイメージする日本の良さって、純日本人からすると気付きにくいというか、"これなの?"みたいなところって結構多いと思うんです。でも、そういうところのアンテナがNykにはあるし、これだけ日本語が上手だからそれを伝えることもできる。それに、アメリカ人だけど日本の音楽はたぶん僕より詳しいぐらい好きで、歌謡曲とかも聴いていると思うし、逆に僕は日本人だけどアメリカとかイギリスとか、欧米の音楽に憧れていて。Nykも長く日本に住んでいて、ほぼ同い年で、同じ時代を見てきてるわけじゃないですか。そこの価値観もすごく似てるから、そういう2人がいい感じにミックスされているところが、Kysoの魅力なのかなって思いますね。だからアジアというか、日本のいいところをエッセンスとして入れ込んだ上で、日本国内にとどまらず世界中で聴いてもらいたいし、Kysoというコンテンツを感じてもらいたいですね。

-海外の人たちに音楽を聴いてもらうためには、その国らしさみたいなものがより大事になってくるところもあるでしょうし。

Nyk:今の時代は観点がすごく大事だと思っていて。僕等が他のアーティストとどういうふうに違った目線で物事を見られているのか。それがKysoの中身に繋がっていくと思うので、それを大事に作っていきたいなと思っています。