Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

macico

macico

Member:yukino(Key) 小林 斗夢(Vo) 堀田 コウキ(Gt)

Interviewer:石角 友香

J-POPをバックボーンに持ちつつ、ハウスなどのクラブ・ミュージックやR&B、フレンチ・ポップスなどを融合した音楽性で活動を続けてきたmacico。東京という都市に生きる若者の情景を綴る、いい距離感を持つ楽曲は幅広い世代の支持を受け、2020年8月に配信リリースした「aloe」が、Spotify"Viral 50 - Japan"で最高位10位にランクインしたほか、数万人のリスナー登録数を持つ様々なプレイリストにセレクトされた。2021年の"RADAR:Early Noise"に選出以降、新しいリスナーが明らかに増加したと言う彼らに、サブスク時代の楽曲制作や今後の方向性について展望を訊いてみた。

-macicoは現在まで3回形態が代わっているそうで。最初は小林さんともうひとりの方のデュオだったんですか?

小林:そうですね。アコースティック・デュオから始まって、ですね。もともとは音楽性も全然違くて、どちらかというとフォーキーというかアコースティックなユニットだったんですけど、そこからyukinoと堀田と、リズム隊がもうふたりいたんです。その期間が2年あって、2年越しに脱退して。

-それが今のmacicoのトラックメイキング的なサウンドに繋がっていったんでしょうか。3人になった当初、共通した音楽性のヴィジョンはあったんですか?

小林:5人の頃はそもそもどんな音楽好きだったっけ? みたいな話もあんまりしてこれなかったので、まずそういう話をしてからいろいろ出てきたんです。みんなで音楽聴いたりしていくなかで、フレンチ・ポップ系の洋楽アーティストがみんな好きで、TAHITI 80や、DAFT PUNK、PHOENIXのような楽曲をやっていきたいねって話はしましたね。

-2019年頃は、ウワモノは生なんだけどハウスの印象が強かったんですよね。

堀田:自分はハウスとかクラブ系の音楽ばっかり聴いてて。自分がトラックを作るようになってからは、音源にモロに自分の好みが出ちゃってると思います(笑)。

-メロウさとダンス・ビートが出会ってて珍しいタイプのユニットだなと思ったんですが、みなさんバックボーンにはJ-POPがあるそうですね。

yukino:そうですね。このふたり(小林、堀田)はわりと近い。

小林:もともとギター・ロック・バンドが好きだったんで、学生時代はBUMP OF CHICKENとかRADWIMPSとかを聴いて育って。あと今もずっと長く聴いてるのはスピッツ。J-POPが好きです。

yukino:くるりは?

小林:くるりはどちらかというと堀田のほうが。

堀田:そうですね。

-J-POPの中でも挑戦を続けているバンドですね。yukinoさんは?

yukino:私はふたりほどバンドバンドって感じじゃなかったんで、ちっちゃい頃はアイドルとかすごく好きで。モーニング娘。とかミニモニ。とかが大好きな小学生でした(笑)。中学、高校に入ってバンドをやりたいってなったときに、プリンセス プリンセスやFLiPを好きになって、ガールズ・バンドをやってたんで、"ガールズ・バンドを聴こう"と思って聴いてましたね。そのあと、高校卒業したぐらいで星野源さんとか秦 基博さんとかが好きになって。macicoに誘ってもらったときに、自分のやりたい音楽ができるんじゃないかと思って入ったんです。

-ところで、みなさんが思ういい曲の条件ってどういうところですか?

堀田:俺らが作るうえで"これいいね"って思うのは、歌が1回聴いたら歌えるようなメロディで頭から離れないようなもので、メロディを結構大事にしてます。メロディがいい曲はいい曲だなって感じますね。

小林:あと最近のmacicoで言うと歌詞を結構見つめ直してるっていうか。始まった当初はメロもそうですけど、どちらかというと大事にしているのはサウンド寄りだったんですね。最近、いい歌詞を書きたい――"いい歌詞"ってのも難しいんですけど(笑)、素直にわかりやすく、ストレートに伝えたいという気持ちがすごく芽生えてて。俺は、最近は歌詞がいい曲がいい曲だと思いますね。

-小林さんは、3人体制になった頃、どういう歌詞の書き方をしてたんですか?

小林:そのときの自分を否定したくないんですけど(笑)、余白を残すようなものを理想としてたというか、聴き手に対して絶対的なひとつの答えを言わないみたいな。答えはそれぞれあっていいし、余白を楽しんでもらいたいみたいな気持ちがすごく強かったんです。それがちょっと変わってきてて、瞬発的にどんな曲かわかるか? みたいな。このサブスク時代的なのもあると思うんですけど、そういう歌詞に変わってきましたね。

-yukinoさんにとっての名曲はどんなものですか?

yukino:私も1回聴いてメロディが頭に残る曲が好きって思っちゃう。今までずっとそうやって生きてきたんです。メロディをまず聴いて"あ、いいな"って思って。あとピアノをやってるからなのか、ピアノの音がいっぱい入ってる曲が結構好きなんです。星野源さんとか大橋トリオさんとかもそうだったんですよ。ピアノと歌が目立ってるいい曲が好きなのかなと思いますね。最近で言うとTOMOOさんはメロディもすごいし、ピアノも象徴的なのが入ってたりするから聴いてます。

-macicoの特徴のひとつだと思うんですが、ビートに関してはずっと打ち込みですね。そこはどう捉えていらっしゃいますか?

小林:ライヴだとサポートでリズム隊を入れてやってて、音源とは変わってるのかなと思います。音源は音源、ライヴはライヴっていう感じで最近やり始めてるので。

-ライヴでプレイヤーを入れ始めたのっていつ頃からなんですか?

yukino:去年コロナ禍もちょっと収まりつつある頃にライヴやろうってなったとき、3人だけでやるよりもドラムがいてベースがいてビャーン! ってやったほうがいいと思って(笑)。

堀田:場所によって変えますね。クラブみたいなところでやるときは3人でやるし、デカい箱とかでやるときはサポートを入れてバンドっぽくやるみたいな。

小林:そのフットワークの軽さみたいな、いろんな編成に変えられるみたいなのがいいなって思います。

-ライヴを意識することで、堀田さんがビートを組む際の変化もありますか?

堀田:最近はライヴを意識して作ることが結構増えてきましたね。最初に出した音源とかは全然想定しなかったんですよ。もう完全に自分の好みで、四つ打ちで、音色も生ドラムじゃなくて、"THE打ち込み"みたいな音色ばかり使ってたんですけど、これから出そうと思ってる音源は結構生ドラムに寄せつつあります。ドラムはこだわってて、細かいフィルとか音色とかも音源を納品するまで一生確認してます(笑)。

yukino&小林:(笑)

-ビートに対する考え方が変わった節目って2022年ぐらいですか?

堀田:そうですね。それこそサポートを入れ始めたぐらいから。

-「dance」(2022年8月リリースの配信シングル)で音像がヴィヴィッドになったので、そのあたりからの変化なのかなと。

小林:たしかにちょうど「dance」の頃ですね。

-なるほど、腑に落ちました。ところでサブスクで聴いているリスナーのイメージはありますか?

yukino:データは見ますけど、国はあれだよね......。

小林:アジア圏。台湾とかインドネシアとか。

堀田:でも一番聴かれてるのは日本ではあります。

小林:「aloe」っていう曲で呼応してくれた方が多かったんですけど、最初日本のSpotifyさんが全然気づいてくれなかった。

yukino:(笑)

小林:最初はまったくプレイリストとかに入らなくて。で、最初アメリカのインディー・ポップのプレイリストみたいのの公式のやつに入ったんですよ。そこから日本のプレイリストでも逆輸入みたいな感じになって、そこから広がってくれたんで、アメリカの貢献がデカいですね(笑)。

-そこから2021年のSpotifyの"Early Noise(RADAR:Early Noise)"に選出され、新しいリスナーも増えたでしょうね。

yukino:めちゃめちゃ増えました。そこですぐライヴやってみたかったんですけど、できなくて。でもリスナーだけはどんどん増えていってくれて、"どんな人たちなんだろう?"みたいな期間が結構ありました(笑)。

-現在に繋がるお客さんを認識したのは?

yukino:結構遅かったんですよ。YONA YONA WEEKENDERSとツーマンでやったライヴ([macico 2nd EP "eye" Release Party])があって、そのときに初めて"「Early Noise」で聴きました"っていう人とかが物販で声掛けてくれて、それが2021年ですね。

小林:そもそも3人になってからの活動歴が薄かったっていうか、ライヴの本数自体もそのコロナ禍に入る前から少なかったんですけど、"Early Noise"に選ばれたのはインパクトが強かったですね。

-ライヴで初めて会うお客さんっていうのはイメージと合致してました? こういう人が聴いてるんだ、みたいな。

yukino:もうちょっとおじちゃんが聴いてるのかな? と(笑)。データを見てると、私たちのお母さんとかぐらいの世代の人が聴いていることが多かったんで、ライヴに来る方もそのぐらいの方たちなのかなみたいに考えてたら、普通に若い女の子とか20代とか、制服着てる子もいたので"えー?"と思って。"このぐらいの年代の子にも届くんだな"って思いながら話してましたね。