ビレッジマンズストア 水野ギイの"家、帰っていいですか?" 第3回
2025年05月号掲載
ロックバンド界の自宅親善大使、水野ギイです。
実はビレッジマンズストアというとてもイカすバンドをやっているのですが、6/18に再録ベストアルバムが出ます。家で楽しめるように小さな音量でも爆音っぽく聴こえるような物にしました。早く聴かせてあげたいです。そしてその制作作業のおかげで近頃は全然家に帰れませんでした。いやね、全然いいのですよ。楽しいですしね音楽、ただ君のちょっとした楽しみがおれの外出の犠牲の上に成り立っていることは忘れないでくださいね。
ということで今回も帰宅のお供にどうぞ。
早速だが、シャツってなんで着てる間は何も感じないのに脱いでしばらく経ったやつを嗅ぐと臭いのだろう。ライブを終え衣装を脱ぎ捨て、元々着ていた服を再度着ようとすると毎回「おれこんな感じでしたっけ?」と絶望する。脱いで時間が経って臭くなったのか、それとも臭かったけど気付いていなかったのか。それが一番の問題であるが、きっと後者なのだろう。自分の悪いところは指摘される前に決めつけ、自虐にする。なんてわきまえた男なんだ水野ギイ。
そしてこの問題はシャツに限った話ではない、部屋だってそうだ。無臭だった(と思っていた)おれの部屋なのに、仕事で数日空けて帰宅すると臭い。留守中に知らないおじさんいました?と本気で疑う。
さて、ここからがこの話の本題だ。よく「人間は誰しも自分のにおいに対しては鈍感になる」と聞くが、これは実は逆なのではないか。自分のにおいは気付かない、即ち「においがしないところまでは自分」なのではないだろうか。
犬は散歩中にマーキングをする。同じようにおれたちは知らず知らずのうちに自分自身の境界を五感のうちの1つで決めているのでは。
だとしたら脱ぎ捨てられたシャツはものの30分やそこらで自分ではなくなるし、3日も家を空けたらもうそこは本能的に、自分の場所でないことになる。
おれはまた外出が怖くなってしまった......。
更に言えば、女の子等に「ワァ、ギイさんのにおいだぁ」と言われた時、おれはエッチな気持ちになっていたが、あれは知らんうちにATフィールドを張られていたのではないか。ナワバリバトルを仕掛けられていたのではないのか。本当に、エッチな気持ちを返してほしい。
おれはまた女の子が怖くなってしまった......。
知ってしまった今、もう布団にくるまって死を待っていた方がいいのかもしれない。
しかしそういえばあったな、夢中になっている時、幸せな場所、何も感じない瞬間が。音楽してる時なんかがそれだ。ライブとかもそうだ、汗くさいとか、全然わかんないもん。
たしかに自分の望んだ空間で、本当の自分で、自分のありたい自分だ。
そういう時間を、場所を、相手を、怖がらずにたくさん探していくべきなのかもしれないね。
メンバーもにおいとかあんまりわかんねえから、多分もはや自分なんだ。
女の子は、きっとずっと自分と違うにおいだけど、いいにおいだからいいや。
自分のことがわからなくなったら、一度立ち止まって何も感じないのを思い出したらいい。自分を客観視できなくなったら、しばらく家を留守にしてから自分の抜け殻を嗅いだらいい。
枕が一瞬死んだ祖父の匂いがしてマジで焦った。
ということで今回はここまで。ただいま!
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