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COLUMN

ビレッジマンズストア 水野ギイの"家、帰っていいですか?"

2025年01月号掲載

ビレッジマンズストア 水野ギイの"家、帰っていいですか?"

ロック大好きSkream!読者の皆様、初めまして、ロックバンド ビレッジマンズストアのボーカル水野ギイと申します、ロックバンドです。気に入られたいです。

この度いつもお世話になっているSkream!にコラムを書いてみないかと誘っていただいたが、まだ迷っている、書きながら迷っている、仮に今書いているものが掲載されてもまだ迷っている。おじいちゃんになって死ぬ前にも多分迷っている「あのコラム、必要だったのか......?」と。

おれにできるわけがないなぜなら、書くような出来事がないからだ。そもそもライブ以外で人に会うことがない、出かける時は一人がいい、そして早く帰りたい。

だいたいバンドマンはどいつもこいつも元気すぎる。バンドマンは友達と遊ぶものだ、バンドマンは友達と趣味を共有するものだ、バンドマンは飲みにいくものだ、バンドマンは新宿のゴミ袋にダイブするものだ、バンドマンは股間を見せ合うものだ、バンドマンは肛門から鏡月を飲むものだ。そういったイメージを覆していかねばなるまい。

もしかしてこのコラムで世間のミュージシャンの印象をクリーンなものに変えることが天より与えられたおれへの使命なのかもしれない。

下戸がコーラでヘラヘラと笑う3時間、ちっせえ器のコーヒー800円の店、誰かの知り合いの狭いバー、遊園地バスケサッカー謎解き知らんキャラのコラボカフェよく分からんライブ変な展示会

全部興味ないよな!!!帰ろう!!!一緒に!!!!!!!

おれくらいになるとライブ行かなくてもSkream!読んで行ったことにする。ライブレポいつもありがとうございます。ごめんなさい本当に。

と言うわけで限りなく一般人男性に近いバンドマンの日常や苦悩を綴る、読んだ人が家への愛情を深める一助にしてもらえたらと願う。
おおよそロック情報フリーペーパーに似つかわしくない内容なのできっと早くに連載は終わる。円満に終わる、気にするな。

自己紹介と挨拶が長くなってしまったので今日は早めに終わる。

帰りたい帰りたいとすでに何度も言っているが、ここで今一度しっかりと伝えておく、本当に家に帰りたい。遊びじゃねえぞ。しかし本気だからこそ周りに思うことがある。
おい、おれと同じ帰りたい民。ちゃんと帰宅に本気出せ。
ジャンプするなら助走をつける、水に潜る直前息吸う、テスト前勉強するだろ。バンドだって人の見ていない所で沢山練習するし、ライブ前にはリハーサルもする。
好きなものにはちゃんと熱量を持って接するのが礼儀だ。

おれは帰りたい日の3日前から体調を崩しがちになる、もう板につきすぎて最近は本当に体調を崩す。当日は人に会った瞬間うれしくなり一瞬テンションを上げてしまうが、気付いたらゲホゲホする。もう帰宅は始まってるんだぜ。

更に帰るプロは周りは寂しくさせない、テンション管理は怠らない。みんなへのだいちゅきを疑わせてはいけない。
「打ち上げどうする?」と聞かれてからヘラヘラと帰りますぅ~なんて以ての外。
嘘をついたっていい、存在しない親戚を殺してもいい、産んでない子供の留守を心配してもいい、自宅を爆破してもいい、最高の脚本で「帰りたくないけどぉ!ずっとここに居たいけどぉ!どうしても生きるために仕方なく帰るんですぅ!!」という気持ちを限界まで表さなければ、そして更に「まだ帰らない人は羨ましいなあ!今から最高な思いをするんだろうなあ!」というようなことを言う。
残る者を気持ちよくさせるおれたちはそう、プロフェッショナルだ。

尚一つわがままが許されるならば残る者も気持ちよく「帰れ!二度とくるな!じゃあな!」と言って欲しい。言われたら逆に寂しくなってうれしい(面倒くさい人間なのは分かってる、ごめん)。

自分で自分を縛っているようで、結局息苦しさは消えてないやんけと思われるだろう。しかしなんかこう、全員がやりたいことをやるために一周回って優しくなる世界は理想だなと思う。歳を重ねるにつれその大切さが分かってきた。結局みんな自分の周りにいる人は楽しそうにしていてほしいのだ。楽しんでもらった上で帰りたい。自分に死亡保険をかけるのと同じ、死んだ後の世界が平和だといいな、という気持ち。

初回なんとか締まった。次回めちゃくちゃ短くなっているかもしれない、次回があるのかも分からない。そもそも長さ指定とかされていなくて不安だ。だが愛すべきSkream!読者の帰路の暇つぶしになるのならば少しだけ続けてみよう。
というわけで今回はここまで、ただいま!

ビレッジマンズストア

2003年11月に結成。焦燥と劣等感をもって焦燥と劣等感をぶち壊す、名古屋が生んだロック・バンド。2024年に4thミニ・アルバム『勝手』をリリースし、20周年記念ワンマンを初のZepp Shinjuku (TOKYO)にて行った。2025年は"村立20周年企画"として全国ツアーや東名阪ワンマンの開催、ベスト・アルバム発売、リリース・ツアーの実施等を予定している。