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COLUMN

ネクライトーキーのぐだぐだ毎日 第3回

2025年05月号掲載

ネクライトーキーのぐだぐだ毎日 第3回

第3回:カズマ・タケイ(Dr)
幼少期に怖かったことが大人になるにつれ徐々に平気になっていく、という話はよくある話だが、今でも夜中のトイレが怖い。「大人になったら大丈夫だよ~お化けなんてないよ~」と言った先生や両親に嘘をつかれていたのだろうか。聞いていた話と違いますけど。寝室の天井の染みとシャンプー時に目を瞑ることの恐怖は克服したが、今なお怖いことが他にも多くある。むしろ年を追うごとに怖いもの、苦手なことが増えているのは何事か。

霊的なことでいえば、ホテルの部屋に掛けられた絵画。怖い。それ自体に罪はないが、事故や事件があった部屋ではそういったものの裏に御札が貼られていることがある、という都市伝説を聞いて以来、恐怖の対象として意識するようになってしまった。実際にその部屋での事件の有無、裏返した時のお札の有無は無関係で、ただそこに絵画があるというだけで背筋がうすら寒くなる。

高所。怖い。いわゆる恐怖症の中ではメジャーな部類に入るが、昔はむしろ好きだった。恐怖を感じるようになったのは数年前、富士急ハイランドに行った時のことである。FUJIYAMAウォークという、高さ51mの不安定な足場をハーネスのみ、手すり無しで歩くというアトラクションを体験し、トラウマを植え付けられてしまった。それ以降、高所から落ちる夢を何度も見るし、実際に高所に立った時、地上へと吸い込まれるような感覚に襲われる。

エレベーター。怖い。紐が切れたらどうしよう。落下中にジャンプすれば助かる可能性が上がると信じていたが、それは身体的、物理的に不可能らしい。つまり、昇降中は心の中で小さくお祈りするしかない。どうか落ちませんように。ちなみに飛行機の離着陸時も怖いので、同様にお祈りをする。

雨の日の駅の階段。怖い。転倒してしまったら怖いし痛いし恥ずかしい。通勤通学のラッシュ時ならより恐怖度も羞恥度も増す。全ての階段がザラザラになることを強く望む。

中華料理屋のテーブルに置かれたお冷のボトル。怖い。もし水を注ぐ時に上蓋がちゃんとしまっていなかったらと考えると恐ろしくてたまらない。食べていた料理の安否よりも、ほぼ確実に浴びせられるであろう無愛想な店員からの失望の含まれた叱責、周囲の客の冷酷な視線が何よりも怖い。

荷物を牽引していない、運転席部分のみで走るトラック。怖い。これは、昔放送されていたラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(通称タマフル)という番組の「こまかすぎて伝わらない"こわいもの"」というコーナーが原因だ。本来荷物を牽引しているトラックがコンテナを運んでいない姿が、高速で動く生首のように見えてしまうという視聴者からのお便りを聞いて以来、そういう妖怪に見えて仕方がなくなった。

その他にもホラー映画、ライブハウスのステージの照明やスピーカー(落下の恐怖)、他人の喧嘩(怒る人が怖い)、若い人との接し方(無自覚なハラスメントへの恐怖)など、数え上げればきりがない。漫画の主人公ならこんな恐怖の数々を自分に対する試練として打ち勝とうとするのだろうが、僕は全部まとめて丸めて団子にして食べてしまいたい。何の恐怖もない平穏な暮らしがしたい。一方で、そう願うほどに新たな恐怖が芽生えてくるように思えるのは、実は心の奥底ではそれを求めており、本能的に退屈すぎる日常に抗っているのかもしれない。なんてことを考えながらぐだくだ暮らす毎日です。

ネクライトーキー

2017年に朝日(Gt)が中心となり、もっさ(Vo/Gt)、藤田(Ba)、カズマ・タケイ(Dr)により結成。2018年に初の全国流通盤を発表。翌年に中村郁香(Key)が正式加入し現在の5人体制に。2020年にメジャー・デビュー。2024年に4thアルバムを発売し、レコ発ツアーのファイナルをZepp DiverCity(TOKYO)で行った。今年3月には2nd EP『モブなりのカンフー』を配信リリース。5月より同EPを引っ提げたワンマン・ツアーを開催中。 ​