Japanese
ネクライトーキー
Skream! マガジン 2023年05月号掲載
2023.04.21 @下北沢シャングリラ
Writer : 石角 友香 Photographer:Kana Tarumi
ネクライトーキーがファンからアンケートで人気曲を募り、得票数上位15曲を演奏する東名阪シャングリラ・ツアーを開催。全会場ソールド・アウトの盛況ぶりでファイナルの下北沢公演を迎えた。ネクライトーキーはもちろん、朝日(Gt)のボカロP 石風呂楽曲をカバーした"MEMORIES"シリーズも対象で、全54曲からひとり5曲を選べる今回。ライヴ定番曲から、レア曲まで幅を持って選べるわけだが、果たしてその結果はいかに? 久々の声出しOK且つ、ライヴハウスというキャパシティでもあり、開演前から異様に高いテンションが漲る。
もっさ(Vo/Gt)がアルバム『FREAK』のジャケットで生み出したキャラクター"フリークくん"が開演前に"あの曲は入ってるかな?"と期待値を上げるナレーションを行い、メンバーが登場。フロアから向かって右のステージ上には寄席の"めくり"が置かれ、その上にひとつ目のキャラクター"フリークくん"が鎮座している。演奏からスタートするわけではなく、ベストテン番組のように"第15位は! ......「遠吠えのサンセット」!"という発表に凄まじく大きな歓声が沸く。5人の楽器の音がそれぞれ際立っており、特に朝日のオブリが明快に響き渡った。続いては、すぐさま演奏に突入していった「めっちゃかわいいうた」だ。2曲演奏しただけだが、会場の熱気にもっさも朝日も顔を真っ赤にしている。
すかさず中村郁香(Key)のピアノが滑り込み、カズマ・タケイ(Dr)のスウィングするドラミングで「涙を拭いて」に突入。軽快なニュアンスのアレンジに朝日がブルージーなフレーズを挟んだりして、ハイテンションなライヴの中にも味わいを投入した。自分たちで組んでいないセットリストながらに非常にいい流れである。「明日にだって」は原曲よりアメリカン・ロック色を強め、爆走するバイクのような乾いたトーン。朝日のトレブリーなソロも厚みを添える。そしてお揃いの首を振る振付とヴィブラスラップの"カーッ!"がさらにフロアのテンションを上げ、ラテン・リズムなハンドクラップも熱を帯びる「北上のススメ」。この曲のファンク/ディスコなAメロのかっこ良さもダイレクトに届いた。一曲一曲、イントロが鳴るたびに爆発するフロアは曲が終わっても高い熱を保ち、みんな口々にメンバーの名前を叫び、久々にカオスな様相に。メンバーも嬉しさと可笑しさを隠せない。アンケートで票数順に演奏するという自分には選べない状況でありつつ、"どの曲もいい曲"と、まんざらでもなさそうな朝日。
今度は藤田(Ba)がタケイにドラムロールを促し、"第10位、「壊れぬハートが欲しいのだ」"と発表し、中村のループするピアノが牽引する。最高のバランスで5人の楽器が聴こえるのも嬉しいばかりだ。藤田ヴォーカルともっさヴォーカルの掛け合いも楽しい。そしてベスト15の中で最も意外だったのが「ティーンエイジ・ネクラポップ」。オルタナ・ギター・ロックの名曲として、また、若いリスナーのマインドにフィットする歌詞が高い人気を誇るのかもと思えた。朝日もこの曲が選ばれたことを喜びつつ、"どの曲も想いを詰め込んで作っているので、どの曲がきても俺は嬉しい"と明言していた。演奏する側としてはリリース・ツアーともベスト選曲のツアーとも違うアプローチに、一曲一曲切り替えが必要そうだが、選ばれた上位曲を渾身のプレイで届けるのみなのだろう。
続いても『MEMORIES』から、ゲーム音っぽい鍵盤や喋りのパートも楽しい「音楽が嫌いな女の子」、ディスコ・ファンクな「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」へ。最終的に石風呂P楽曲が6曲もランクインしていたのはメロディのキャッチーさや、1曲の中でジャンルがどんどん変化していく曲の人気を映し出していたと思う。6位の「だけじゃないBABY」まで演奏して、ランキング裏話に入っていく。朝日いわく、「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」と「だけじゃないBABY」は同率だったそう。"同時に演奏するわけにもいかんしね"と笑わせる。もっさはアンケートに添えられたコメントの熱量に感激。好きな理由も人ぞれぞれで、つくづく今回のアンケート・ライヴをやって良かったという表情だった。
いよいよベスト5は予想が立つが、5位はネクライトーキーなりの励まし方で気持ちに寄り添う「夕暮れ先生」。歌の主人公そのものの叫びをもっさが発して心が震える。かと思えば、今が何曲目かわからなくなり、あたふたするもっさ。彼女に何曲目か教える野次や声援が飛ぶなか、"「こんがらがった!」"ともっさがタイトルコール。この曲は間奏での藤田のスラップに唸る。
残すはベスト3というところで、朝日が「こんがらがった!」中の"皆殺しのメロディ"の由来であるTHE BLUE HEARTSの「皆殺しのメロディ」が今も大好きであることを改めて話す。ファンなら既知のことでも、こうしてロックは繋がっていくものだなと少し感慨深い。
そして、ステージ上もフロアも汗びっしょりの終盤。3位で1曲に演出を盛り込む「許せ!服部」が投入される容赦のなさ。だからと言って短縮されるはずもなく、ライヴで演奏される際のロング・セットの演出で、もっさの"CD"と"ライブ"のプラカードに従い、4人の演奏はスローとファストとグルーヴを行き来する。ソロの見せ場も盛り込むこの曲が15曲中13曲目にあるのは、はまりがいいのかもしれない。
2位は「ゆるふわ樹海ガール」で、ファストな8ビートを盛り立てるクラップが走り気味になるのも気持ちがわかる。ガレージ・ロックやグランジのテイストで日本の高校生事情が歌われる妙味は、やはりこのバンドにしかない持ち味ではなかろうか。さて、残すところ1曲となると自明なうえに"5、4、3、2、1"とカウントダウンが始まると、まだ爆発するエネルギーが残っているのか? と驚くテンションで「オシャレ大作戦」が切り込んでくる。オケ・ヒットで拳が上がり、サビで腕が振られる。ネクライトーキーらしさを最初に印象づけたこの曲の強さはやはり計り知れない。全力で楽しんだバンドとファン双方の達成感が会場に充満していた。
アンコールでは8月リリースのニューEP『踊れ!ランバダ』から、ロック・オペラっぽさの中に踊れるビートやサイケデリックな風味も加えた、なかなか奇怪な曲「ランバダ・ワンダラン」を初披露。これは早く音源でじっくり細部を聴いてみたいものだ。そしてラストは1曲目同様「遠吠えのサンセット」で締め。暑すぎるライヴハウス、思い思いの言葉、終演後のざわめき、それらすべてが愛しい時間だった。
[Setlist]
1. 遠吠えのサンセット
2. めっちゃかわいいうた
3. 涙を拭いて
4. 明日にだって
5. 北上のススメ
6. 壊れぬハートが欲しいのだ
7. ティーンエイジ・ネクラポップ
8. 音楽が嫌いな女の子
9. ジャックポットなら踊らにゃソンソン10. だけじゃないBABY
11. 夕暮れ先生
12. こんがらがった!
13. 許せ!服部
14. ゆるふわ樹海ガール
15. オシャレ大作戦
En1. ランバダ・ワンダラン
En2. 遠吠えのサンセット
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