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LIVE REPORT

Japanese

ネクライトーキー × Wienners

Skream! マガジン 2025年05月号掲載

2025.04.11 @下北沢シャングリラ

Writer : 石角 友香 Photographer:かい

オルタナティヴだが限りなくポップ。ポップだが誰よりもパンク・マインド。これまでもネクライトーキーの2022年の"ネクライトーキー「オーキートーキーvol.5」"、Wiennersが今年2月から行った"GAKI TOUR 2025"等、互いの自主企画で共演してきた2組。親交を深めるなかで、ファンも2バンドならではのヴァイブスを全身全霊で楽しもうと、今回の共催企画"SHINOBI大作戦"に集まった印象だ。あいにくのにわか雨(しかも雷雨!)すら、ただごとじゃないライヴの開幕を演出しているような気分だ。

先攻のWiennersは、企画タイトルにも曲名が引用されている、ハイパー×和×ブラストビートな「SHINOBI TOP SECRET」でスタート。フロアにモッシュを巻き起こし、玉屋2060%とアサミサエのツイン・ヴォーカルやアサミサエの演歌パートで大いに盛り上がる。そのまま「GOD SAVE THE MUSIC」、「レスキューレンジャー」と、ファスト且つキャッチーなナンバーに全身で楽しさを表現するダイバーが続出。玉屋が"アーティスティックって言葉は信用ならないけど、Wiennersもお前等もネクライ(トーキー)もアーティスティック!"と彼流のリスペクトを贈る。

単なる四つ打ちを超えるファンキーな「おおるないとじゃっぷせっしょん」、玉屋のソウル・フィーリング満載のギター・リフに痺れる「Justice 4」では、スペシャル・ゲストと称してカズマ・タケイ(ネクライトーキー/Dr)が呼び込まれ、Wiennersのサポート・ドラマー、森田龍之助と共にサンバ・ビートを繰り出した。一瞬の出来事だったが、何事もめくるめく展開がWiennersらしい。そしてノンストップで玉屋の"もっと子どもに戻れ! 「GAKI」!"のタイトルコールもろとも「GAKI」へ突入。どこかATARI TEENAGE RIOTを彷彿させるデジタル・ハードコアの鋭さが、生音と融合する、彼等らしさ満載のナンバーだ。続くゲーム音楽っぽいエフェクトもある「ELECTRIC FOR YOU」への繋がりも抜群。

ネクライトーキーとはいつの間にか非常に仲が良くなり、この日も楽屋で各々メンバー同士会話が弾み、まるで部活みたいだったと話す3人。ただ、最初の頃は"髭の人(朝日/Gt)、めっちゃ怖くて"という玉屋の一言が笑いを誘ったが、シャイでこだわりの強そうな朝日と打ち解けた今は、むしろソングライターとして共感する部分も多いように感じる。後半は戦隊モノのナンバー「WINNER!ゴジュウジャー!」から。アサミサエの巧みなヴォーカルが冴え、アニソン・テイストのキャッチーさは次の「蒼天ディライト」に接続。リズムに乗るワイパー、そしてクラップが本当にこのライヴハウスのキャパなのか? と一瞬疑う程大きい。ジャンルの幅を続くエレクトロ・ディスコな「TOKYO HOLI」で振り切り、下北沢からインドへ駆け巡っていく。

ハンド・マイクで歌うアサミサエの表現力の高さに圧倒される暇もなく、打ち込みのトランス・ナンバー「おどれおんどれ」では、全員楽器を置いて踊りまくり、玉屋はオーディエンスの頭上を転げ回る。その狂騒の中で∴560∵の生ベースがみぞおちを攻撃してくるのも効果的だ。もはや温めるどころか焼け野原並みに燃やし切ったフロアに向けて、玉屋が東京でネクライトーキーとツーマンができること、そしてこの空間を誇りに思うと告げ、ラスト・スパートに突入。「何様のラプソディ」、「Cult pop suicide」と、怒濤のブラストビートを連投したが、"こんなんじゃネクライトーキーにバトンを渡せない! 歌え!"とさらに煽り、ロック・バンド讃歌「UNITY」でフロアのエネルギーを使い果たす。1時間の持ち時間に14曲を詰め込む凄まじい集中力。まさに愛あるツーマンの戦い方だった。

熱し切ったフロアは転換の間もステージに視線を集中させている。いつものSEが流れると大歓声が起こりもっさ(Vo/Gt)、カズマ・タケイ、中村郁香(Key)、藤田(Ba)、朝日の順に登場。もっさのテンションがすでに上がっている感じだが、あくまでネクライトーキーはいつものネクライトーキーにも見える。もっさの淡々としたリフから始まる「俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ」を、スターターに据え、今この時代にロック・バンドでいることの意思表明をすると、初期ナンバー「レイニーレイニー」でもヴィヴィッドにその想いを繋げていく印象。それにしてもさすがにメジャー・デビュー5周年の今、ユニークでちょっとおもちゃ箱っぽいアレンジもある彼等の個性は残りつつ、音を選び取り、どんどん無駄を削ぎ落とした演奏は、熱さを内包しながら、どこか余裕も感じられる。

続いてタケイのエコーが掛かった打音と、もっさのカッティングのイントロが期待を高める「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」へ。中村のキャッチーなリフは変わらないが、どこかSFっぽいライヴ・アレンジも加味され、Wiennersとの共通項を発見したりする。さらに、すっかりライヴのキラーチューンに成長した「bloom」は、藤田の低音フレーズが五臓六腑を直撃するイントロから大歓声が上がった。しかもジャグリーなサウンドでカッティングするもっさをはじめ、ポップな曲なのに、これまでよりグッとガレージ・パンクなふてぶてしい演奏に感じられるのはなんでだろう? これこそが共催ライヴという磁力の強いツーマンの影響なのかもしれない。

最初のMCから楽しさが否応なく溢れる口調で、もっさが"あの人たち(Wienners)はさ、何度こんなハッピーな夜を作ってきたんでしょうね"と笑いが止まらない様子。彼女自身は恥ずかしがり屋で、玉屋たちのようなエンタメ・ショーを正面切ってできないようだが、自分を解放するチャンスだと、オーディエンスをそそのかす。いや、むしろ自分に言っているのでは? と思いながら、こちらもつられて笑ってしまう。バンドの演奏だけでなく、もっさの爆走する感情に引っ張られるライヴだ。

そのまま爆走するのか? と思いきや、カントリー・テイストで曲の良さが伝わる「だけじゃないBABY」を披露する。音楽を作ることやバンドを続けること、その過程の逡巡が、他の人生にも繋がる歌詞になり、楽しさと同時に届いているのが分かる。Wiennersのハイパー・パンクも、(ネクライ)トーキーのこうしたフォーキーな曲も、どちらも楽しめるオーディエンスが集結した空間の居心地が悪いわけがない。

続いて、朝日がテレキャスをフロアに向けると歓声が上がり、ボリュームつまみを観客に上げさせるオープニングから久々に「許せ!服部」が始まる。お馴染み"CD"と"ライヴ"のテンポ・チェンジでは、BPMが加速するごとにフロアのリアクションも沸騰。さらに藤田と中村のソロの応酬、タケイのソロ、さらにもっさのマシンガン・ギター・ソロと見せ場満載のこのナンバーは、やはりネクライトーキーならではのエンターテイメントだった。

MCでは朝日が開口一番"ロック・バンドやってて良かった"と明言。そして"髭の人怖い"と言われた彼は、Wiennersの優しさを開陳するなかで、彼等が持参したボード・ゲームで勝ってしまったことが気まずかったというエピソードも話してくれた。そしてもっさはWiennersのライヴを通して、自分の知らない自分をこじ開けることにハマったという。今や先輩後輩の関係を超えた2組。朝日は"新曲、持ってきました。Wiennersと対バンするといったらこれでしょう。BPM 200超え!"と、「モブなりのカンフー」をライヴ初披露。

速さももちろんだが、もっさの強く、遠くにぶん投げるようなヴォーカルが痛快だ。新曲へのいいリアクションにバンドのグルーヴが増して、「こんがらがった!」のパーカッシヴな演奏はさらに小気味よく、パンキッシュな中にもピアノ・リフが放課後の教室っぽさを加える「夕暮れ先生」へ。サビでグッと高まったエモーションは自然とダイバーを発生させた。これまでのトーキーのライヴで見た曲を伝えるテンションとはまた違う、なりふり構わなさはラストの「遠吠えのサンセット」でも爆発。サビの求心力に止まらないフロアのモッシュは、楽しさに突き動かされた笑顔にまみれていた。

フロアの"ワン・モア"コールに応えて、ネクライトーキーが登場。朝日が"対バンでもアンコールは後にやったバンドだけになる"と言ったのをもっさが受け、"呼べばいい!"の一言に大歓声が起こる。かくして全員集合し、まずはWiennersの「SHINOBI TOP SECRET」をもっさと玉屋のツイン・ヴォーカルで展開。となればネクライトーキーのナンバーも期待されるわけで、イントロで察知したオーディエンスが"3! 2! 1!"とカウントダウンして「オシャレ大作戦」に突入した。派手なオーケストラ・ヒットも大団円に相応しく、なんとラストには玉屋だけでなく、タケイもフロア・ダイブするというこのツーマンでしか見られない光景が。最後に玉屋が発した"最高! 遊びましたね(笑)"という言葉が共催イベントならではの磁場の強さを表していた。

[Setlist]
■Wienners
1. SHINOBI TOP SECRET
2. GOD SAVE THE MUSIC
3. レスキューレンジャー
4. おおるないとじゃっぷせっしょん
5. Justice 4
6. GAKI
7. ELECTRIC FOR YOU
8. WINNER!ゴジュウジャー!
9. 蒼天ディライト
10. TOKYO HOLI
11. おどれおんどれ
12. 何様のラプソディ
13. Cult pop suicide
14. UNITY

■ネクライトーキー
1. 俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ
2. レイニーレイニー
3. ジャックポットなら踊らにゃソンソン
4. bloom
5. だけじゃないBABY
6. 許せ!服部
7. モブなりのカンフー
8. こんがらがった!
9. 夕暮れ先⽣
10. 遠吠えのサンセット

■ネクライトーキー × Wiennersセッション
En1. SHINOBI TOP SECRET
En2. オシャレ大作戦

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