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Wienners

2012年06月号掲載

Wienners

Writer 平野 スミオ

とにかく熱く、エモーショナルなライヴ・パフォーマンスで注目を集め、いまやジャンルを越えて熱狂的な支持を得ている男女混合ロック・バンドWiennersが1stシングル『十五夜サテライト』を6月6日にリリースした。それは切なくも激しい、極上のミディアム・ナンバーだった。眠れない夏の夜が近づくにつれて少しずつ思い起こされるノスタルジックな思い出や、淡い恋心。爆音とストレートな歌詞で、胸を締めつけるような大切な気持ちを表現し、それを玉屋2060%(Vo&Gt)とMAX(Vo,Key&Sampler)の男女ツイン・ヴォーカルが切ないメロディに乗せて歌い上げる。加えて今作はエンハンスド仕様となっており、3月24日に開催された“W Reversible Oneman Tour Final”から選りすぐりのライヴ映像を5曲収録。これほど豪華なラインナップなのにも関わらず税込800円という手に取りやすい価格となっているのも嬉しい。こんな最高の贈り物を届けてくれたWiennersをより深く知ってもらうためにも、これまでのバンドの歩みを簡単に紹介しよう。

2007年11月、玉屋2060%を中心に東京にて結成。2008年1月に現メンバーが揃う。2009年に発表した自主制作音源『COSMO POP ATTACK』が話題となり、翌2010年には初の全国流通音源となる1stアルバム『CULT POP JAPAN』をリリース。それに伴うツアーで全国25ヶ所をまわり、ファイナル公演を代官山UNITにて行う。同年11月には SPACE SHOWER TV主催“スペシャ・ザ・ワールド”に高橋優、ねごと、Droogらと共に出演。2011年10月に1stミニ・アルバム『W』をリリースし、同年11月には全国3マン・ツアーを行う。そして今年2月にはSEOUL TOKYO SOUND BRIDGEへ参加し、andymoriと共に韓国V-HALLにてライヴを披露。続く3月にはバンド初のワンマン・ツアーを行い、ファイナルの渋谷club 乙-kinoto-公演はソールド・アウトを記録。5月にはROCKS TOKYO 2012への出演を果たし、今作のリリースへと快進撃は続いていく。

タイトル曲「十五夜サテライト」は、イントロで鳴り響く哀愁たっぷりのシンセのリフで早くも胸が熱くなり涙腺を刺激させるが、聴く者の琴線に触れるのは何と言ってもメロディだろう。日本ならではの趣がある十五夜という題材で彩られた歌詞と、玉屋2060%の歌声を支えるMAXの伸びやかで柔らかいコーラスに胸がキュンとなる。ここまで痛快でパンキッシュなサウンドでありながら、どこまでもファンタジックな世界観へと引き込む曲とは最近出会えていなかった気がする。続く2曲目に収録されている「FUTURE」は初期のWiennersの音楽性を彷彿させるショート・パンク・チューン。四つ打ちのリズムと、ゴージャスで軽やかなサウンドは、容易にライヴ会場で楽しそうに踊るオーディエンスの姿を容易に想像できる。良い意味で様々なジャンルの音楽を思いのままに取り込み独自のスタイルへと昇華してしまう彼らの魅力に、わかりやすく触れられる曲といえるだろう。そして3曲目の「午前6時ブランニューエモーショナルタイプ」は、前作『W』のラストに収録された「午前6時」のリアレンジ・バージョン。ゆったりとした雰囲気のなかに溶け込む小気味良いギター・カッティングとMAXのキュートな歌声が心地よい。バンドとしての成長や進歩を発見できる1曲となっている。オリジナルと聴き比べてみるのも面白いだろう。

そして、この3曲を聴いて思うのは、Wiennersの魅力を体感する最高の手段はやはり“ライヴ”だということ。今作にライヴ映像を収録したのも、バンドから送られた会場への招待状に違いない。彼らの魅力が余すところなく詰まっているシングルだ。フル・アルバムへの期待と、いつまでも忘れられない甘酸っぱい思い出を胸に抱きながら聴き入ってもらいたい。

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