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LIVE REPORT

Japanese

ネクライトーキー

Skream! マガジン 2019年10月号掲載

2019.09.23 @マイナビBLITZ赤坂

Writer 石角 友香

稀代のポップ・ソングライターにして"石風呂"名義でボカロPとしても活動する朝日(Gt)と、その朝日に"ステージ上で自分を飾ることをしないもっさ(Vo/Gt)が、めちゃくちゃカッコ悪くてカッコ良かった"と言わせた(※2018年12月号掲載インタビューより)もっさの出会いは、今思えば奇跡だったと思う。バンド結成から約2年半でワンマン・ツアー本編だけでは収まらず、追加公演で自身最大キャパのマイナビBLITZ赤坂をすぐさまソールド・アウト。トリッキーでポップな展開を持つ曲、それの再現を凌駕するライヴでのテクニックと熱量、鬱屈したティーンエイジャー時代を豪快にひっくり返さんとする、ユーモア混じりの毒っ気満々なリリック。それらを表現するのに今のメンバーが集結したのは、結果的に必然だった。そう頷かせるに十分な"〆"を体現したツアー・ファイナルだったのだ。

10ccの「I'm Not In Love」やBilly Joelの「Honesty」など、おそらく愛をテーマに選曲したと思しきBGMにもこだわりを感じながら、SEがスタートし、メンバーが飛び出すように登場すると、ただでさえすし詰めの前方にさらにファンが押しかける。オープナーは、この曲で彼らを知った人も多いだろう「ゆるふわ樹海ガール」。首を振りながらステージを歩き回る朝日をはじめ、全員、尋常じゃないテンションだ。もっさのギター&ヴォーカルとしてのセンスの良さを体感したのは、「ロック屋さんのぐだぐだ毎日」。Wilko Johnsonやアベフトシ(ex-THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)を想起させるカッティングに目が釘づけに。しかも、内股で少し背伸びしながら歌うスタイルが、誰の真似でもなく異様にカッコいい。16ビートの「サンデーミナミパーク」も、藤田(Ba)のシュアなプレイで曲の輪郭もボトムも際立つ。なんて達者なプレイヤー揃いなんだ。

中盤にはぐっとBPMを落とした名曲感溢れる新曲や、朝日が昔から温存していたという、QUEENやMIKAの大仰さを思い起こす"ぽんぽこ節(仮)"と題された新曲も続々披露。さらにはもっさが、"CD"と"ライブ"ふたつのカードを揚げ、それに従って瞬時にアレンジを変えるというライヴ・アレンジ版「許せ!服部」が、8分の長尺で爆笑と驚きのリアクションを連れてグルーヴする。この日のためにショルキー(ショルダー・キーボード)を購入したという中村郁香(Key)がお立ち台で弾きまくる姿も、エモーショナルだった。また、演奏の尺の決定権はカズマ・タケイ(Dr)にあるのか、彼の合図と共に切れ味鋭いエンディングが続出。ゆるふわどころかこのバンド、ある意味ハードコアである。

"心底音楽で面白いことをやってやる、いや、むしろそれしか残ってないんや"という朝日の心情をもっさが歌うことでさらにエッジが立つ「音楽が嫌いな女の子」では、MVに登場したセールスドライバー役の男性が、MV同様ダンボール箱を抱え、ボールをフロアに投げ込んだ。"もっと掻き鳴らせ"という切実な思いとユーモラスな演出。あぁ、ここまでタフになったんだなと思う。

1stフル・アルバム『ONE!』からも、朝日の石風呂名義の楽曲をもっさが歌うことで生の息吹が込められた今年リリースの『MEMORIES』からも、さらにはこれからリリースされる新曲群も多数披露し、ネクライトーキーとして今表出できる限りのすべてを披露したこの日のライヴ。アンコールでは2ndアルバムの発売、そして、それがメジャーからのリリースであることを発表し、我がことのように喜ぶファンの祝福を受けた5人。自分の小ささも世間の嘘も、音楽的な深化も破天荒さも、今より大きなフィールドで曝け出してほしい――その場にいたみんなが自分ごととして願いを託していた。

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