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Re:name ヤマケンの"10年後にクアトロワンマンをする高校生の話" 第2回

2026年01月号掲載

こんにちは!お話をいただき、Skream!さんにて連載させていただくことになりました、Re:nameで作詞とドラムをしています、ヤマケンです。

先日解禁されましたが、Re:nameが結成10年を迎える2026年、5月と6月に東名阪クアトロワンマンツアーを行います。(詳しくはプロフィール欄にあります、Re:name10周年特設サイトをご覧ください)

クアトロはもちろんずっと憧れだった場所で、対バンの人しか客席にいないようなライブをいくつも経験した自分にとっては、東名阪クアトロツアーは夢のような話です。

だけど、それはもちろん運だけで決まったものではなく、この10年進んできた先にあったもの。だから、この連載では、高校生が10年かけてクアトロでワンマンライブをするまでのエッセイを書いていこうと思います。

今回は第2回目。
お手柔らかに、そしてゆるりと、よろしくお願いします。

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◼︎2018年(18歳):バンド結成3年目

車の助手席に乗り、窓の外を眺める。朝焼けの中、遠くから富士が顔を出し、やっぱり日本一の称号は伊達じゃないなあ、なんて思っていると後ろから「富士山でけぇ〜、ちょっと写真!スマホ!」とメンバー2人の声が飛んでくる。「次のパーキング停まって、ゆっくり写真撮るか?」少し笑いながら山室さんが運転席から声をかける。山室さんは地元のライブハウスのブッカー(ブッキング担当)であり、大学受験のため半年間の活動休止の後から面倒を見てくれるようになった人だ。Re:name初めての東京遠征となる今日、大阪〜東京間の運転も請け負ってくれていた。この時、メンバーは誰一人まだ免許を持っていなかった。

清水PAに車を停めて、日本で一番高い山を背景に何枚も写真を撮る。車に戻る途中、「これから何回も遠征してたら、富士山にも興奮せんくなるんかなあ」とメンバーが隣でふとつぶやいた。富士山の大きさには慣れていくかもしれないが、これから何度もこんな風に車ではしゃいだり、途中のPAに停まって笑ったりする未来があることが、なんだか嬉しくなった。いつまでこんな風に友達でいられるんかなあ。富士山の心配をするメンバーの横で、そんなことをふと思った。でも、口には出さなかった。

18歳のバンドマンにはとにかくお金が無く、前乗りホテル泊など出来るはずもなく、高速道路料金も深夜の方が安いため、当日の朝3時に大阪を出発し、7時間かけて東京へ向かうというスケジューリングだった。「絶対後でしんどなるから、車で寝ときや〜」と山室さんは言ってくれたが、運転してくれている山室さんに申し訳なく、自分は助手席で7時間トークを繰り広げた。干支1周分年齢が上の山室さんを相手に、その時自分に巻き起こっていた恋のことを延々と話し続けた。ガヤが聞こえなくなったと思い、後ろの席を見るとメンバー2人はとても気持ちよさそうに寝ていた。山室さんはガハハと笑っていた。

朝9時半、目的のライブハウスのある街に着く。ライブハウスの入り時間は15時。入り時間まで近くのスーパー銭湯の雑魚寝スペースで仮眠しよう、ということになった。銭湯に浸かり、湯気で曇った窓から溢れる朝に、なんだか幻想的な気持ちになる。ひとっ風呂浴びた後、それぞれ持参したタオルやリュックを枕に雑魚寝スペースで寝始める。自分も見様見真似で寝転がってみる。大阪〜東京間一睡もしていないのだから、絶対に寝ないといけない。けれど、そう思えば思うほど眠れず、挙げ句の果てには自分の頭の近くで子どもが2人「キャー」と言いながら走り回っている。眠れる気がしない。もういいや、と思い、他のみんなが起きてくるまで、休憩室で漫画を読むことにした。自分はバンドマンに向いていないのでは?と思った瞬間である。

初めての東京遠征には、同じく大阪からthe paddlesが来ていた。おそらく7時間以上睡眠したメンバー2人と、一睡も出来なかった自分の顔つきの差を見て、パドルズのみんなが笑う。初めて来た東京には10人ほど、Re:nameを見に来たお客さんが来ていた。それを知ると元気が出て、ライブも普段通り、はたまた普段以上のパフォーマンスが出来た。帰りの車では気絶するように睡眠し、初めての東京は終わった。

2026年1月24日、ESAKA MUSEでthe paddlesとツーマンライブをする。ESAKA MUSEは、山室さんが働いていた場所で出会った場所。the paddlesと出会った場所でもある。「自分はバンドマンに向いていないのでは?」と思いながら、銭湯でみんなが起きてくるのを待ったあの日から8年が経った。友達がどんどん辞めていく中、自分はまだバンドを続けている。東京にはもう何十回もライブをしに行った。メンバー3人で運転を交代しながらいつも東京へ向かっている。高速道路から見える富士山には、少し慣れてしまった。だけれど、車ではしゃぎ、パーキングに停まってはアイスを買ってだらだらと喋ったり、未だに友達のままでいれている。こうやって、バンドがずっと続いていければいいな。もう何十回目になった清水PA、はしゃぐ2人の横でそんなことを思った。でも、口には出さなかった。

Re:name

2016年3月結成、海外のポップスに強い影響を受けたキャッチーなサウンドが魅力の大阪北摂発の3ピース・バンド。英語と日本語を巧みに織り交ぜた歌詞、唯一無二のデザイン性と世界観で、シーンに新しい風を吹かせている。2026年に結成10周年を迎え、バンド史上最大のツアー" SIXTEEN + TEN "を開催するほか、3月にはニュー・アルバム『1626』をリリース、大阪城音楽堂にてフリー・ライヴを行う。
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