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LIVE REPORT

Japanese

ネクライトーキー

2026.01.27 @Zepp DiverCity(TOKYO)

Writer : 石角 友香 Photographer:Kana Tarumi

バンドのライヴで最大の喜びを感じるときの思いに、"このメンバーが出会ってくれてほんとに良かったな"というのがある。時に面白さや楽しさが前景化するネクライトーキーが凄まじいスキルに下支えされたバンドなのはファンなら周知の事実だが、この日はさらに各々の楽曲で過去最高の演奏を見せてくれた。特段派手な演出もなく、バンドのストーリーを語るでもなく、5人全員が演奏を磨き上げることにメジャー・デビュー5周年の締めくくりとして焦点を当てたのだと想像したら、冒頭の気持ちが自然と浮かんだ。

会場のエントランスには様々な時期のライヴ写真の掲出や"ネクライトーキーのネクラジ!"のアクリル・スタンドでの擬似的な展示等、5周年のアニバーサリー感が控えめに演出されている。昨年開催の"オーキートーキーフェスティバル2025"では彼等がいるシーンを改めて実感できたのだが、その中でも特に世代やジャンルを跨ぐ存在であることを証明した後の本領発揮が今回の"メジャーデビュー5周年単独記念公演「〆」"である。

もっさ(Vo/Gt)のナレーションによる開演前のアナウンスがサンプリングでツギハギになり、SEにそのまま繋がると、いつも通りもっさ、カズマ・タケイ(Dr)、藤田(Ba)、中村郁香(Key)の順にお立ち台へ上がって挨拶。最後は朝日(Gt)が猛ダッシュで駆け込み、早くもコール&レスポンスをおっぱじめる。遠目に見ても額に血管が浮き出ていそうだ。最初からこんなテンションで、1stフル・アルバム『ONE』の1曲目「レイニーレイニー」からスタート。若干緊張を感じたが、引き締まった演奏で瞬時に乗り越えていく。特にリズムの域を超えるフックとしてのタケイのドラミングの鋭さに瞠目した。この日は2階席から5人の演奏を俯瞰できたこともあって、改めて立体的なアレンジがどう組み立てられているのかが確認できたのだが、音の大きさや勢いで誤魔化すことがないのだ。

藤田の叫びから一気に近作「モブなりのカンフー」へ突入。こんなにハードな曲だったっけ? と驚きつつ、雷鳴のようなスネアのイントロから全員でディスコっぽいグルーヴを作り出す「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」へ。迫力と少女のイノセンスを両立したもっさのヴォーカルも、この頃にはもう歌詞を明瞭に伝えてぐんぐんファンを牽引する。サビで弾けるようにジャンプするフロアの全力っぷりも凄まじい。

ノンストップで展開する中でも、その曲にしっかりフォーカスして今が最高値であることを特に実感したのは「悪態なんかついちまうぜ」。朝日のブルージーなギターに始まり、中村のちょっととぼけた(個人的には"セサミストリート"みたいだと感じる)鍵盤のフレーズとコーラス。そして舌足らずなところと艶っぽさすら携えたもっさの今の表現力。そもそも朝日が書く鬱屈を抱えた成人男性の心情をもっさが歌うことで、怨念やブルースを新しいものに転換する構造自体、ネクライトーキーの無二なところなのだが、そこにもっさのいい意味でのふてぶてしさまで加わった歌が圧倒的に強い。しかも歌詞でも言及があるように、曲調はTHE BEATLESの「Lady Madonna」を思わせるポップさなのだ。藤田のスラップも際立つ「こんがらがった!」、さらにイントロでアイソレーションっぽく揃いの振りを見せる「北上のススメ」では、そのコミカルさと対照的に"仕事終わりのバスの中でも/泣きやしないけど"という歌詞が刺さって、具体的ではないけれど、バンド・ストーリーとしての説得力に涙腺が緩んだ。

高いテンションのフロアを見たからか、もっさが思わず"この後、熱いビールで乾杯"と、"熱い気持ちと冷たいビール"の説明をすっ飛ばし、朝日に"違う文化圏の人"と突っ込まれる。興奮といつも通りのバンドのムードのまま、ブルージーな朝日のギターが加わった「気になっていく」へ。ジャズっぽいAメロが新鮮で、ここでもライヴ・アレンジの完成度に唸る。曲が音源になったとき以上に理想に近付いているんじゃないだろうか。さらに初期からの定番で演奏の緩急やソロの見せ場も多い「許せ!服部」はもう何回見たか分からないけれど、それでも毎回、もっさが操る"CD"/"LIVE"のプラカードに則した即興にワクワクしてしまう。一転、続いていく日々のしんどさも達観も転がしてくように大きなグルーヴを持つ「そういうものでしょう?」の堂々たるロックンロール。朝日のフィードバックが空間を塗り潰していく凄みから、夕暮れにポツンと取り残された感覚に陥る中村のピアノ・リフの流れがどんな演出より雄弁だった「大事なことは大事にできたら」。この2曲での集中力がライヴ全体の完成度を高めた印象だ。

大いに感銘を受けていると、いなためなアメリカン・ロックやVULFPECKのファンキーさも想起させるセッションが始まり、メンバー紹介が行われる。そこからすかさず「bloom」でスピードアップ、重さとドライさ両方がある4分のキックが気持ちいい「ふざけてないぜ」。この曲に限らずだが、もっさのリズム・ギタリストとしての冴えは今も進化中だ。同じく『TORCH』収録曲、天王寺やDr.DOWNERやGRASAM ANIMAL等朝日のバックボーンが歌詞に並ぶ「あべこべ」が、もっさの飛距離のあるヴォーカルで広い会場に放たれてく様は胸のすく気持ちにさせられる。さらにそこへ説明もなく新曲披露。トリッキーな部分はなく、いいメロディとコード進行でぐいぐい聴かせる曲としての強さに一瞬OASISを想起したぐらいだ。

その後、タイトルもレコーディングも未定であることが明かされたのだが、そんな新曲を披露した理由について、朝日は過去にフジファブリックがテレビ放映のライヴで、当時未発表だった「星降る夜になったら」を演奏していた心意気に影響されたと語る。そして"みんなお守り持ってますか? 神社のとかではなくて。俺は音楽ではいくつかあって、くるりやフジファブリック、チャットモンチーやthe pillows......だったりがあったからここまでやってこれたんだと思います。俺等の曲がみんなにとってそういうものになれたらと思って演奏してきました。今日はワンマンに来てくれてありがとう"と、一息に話した。のだが、そこで終わるのも忍びないふうに、同じZepp DiverCity(TOKYO)内のうんこミュージアムの話を始めようとしてもっさに制される(そこまでがセット)。

"皆さん歌うのは好き? でもこの歌を歌うときは絶対噛んではいけない"、"らりるれろれつ"と「ら行が言えない、言葉が足りない」で後半をスタート。面白かったからという理由で5周年シングルになる、ある意味バンドのいい状況を反映した曲だ。ラフなノリはポップなソウル・ナンバー「怠惰でいいナ」に繋がり、コーラスもおおらか。また、石風呂楽曲をバンド・カバーしたミニ・アルバムの第2弾『MEMORIES2』からファンの多い楽曲である「サカナぐらし」が披露される。中村のカノン進行っぽいピアノ・リフが効果的で、彼等のライヴ・アレンジの幅を再認識した。

"どうでした? ネクライトーキー自慢の曲は"とフロアに問い掛けるもっさ。先程の朝日のMCにも繋がるが、誰にも書けない朝日の絶妙な曲の存在から始まったこのバンドを雄弁に表している。その世界観をアンプリファイするようなもっさの存在、全てが混ざって育っていったバンドとしてのオリジナリティ。その最新形を今見ているのだ。終盤は切なさとクールなリフを併せ持つ「ちょうぐにゃぐにゃ」、もっさと藤田のガーリー且つコミカルな掛け合いが展開する「君はいなせなガール」が飛び出し、スリリングなリズム・チェンジも挟んで、演奏の切れ味はさらに鋭さを増していく。難解なプログレ並に1つ踏み外したら崩壊しそうな構成だが、一切難しさを感じさせないところがネクライトーキーの凄みでもある。

複雑な展開を乗りこなした後、おなじみの5カウントを焦らしながらフロア共々叫び、「オシャレ大作戦」のオーケストラ・ヒットが鳴り響く。疲れ知らずのファンが歌うサビでの"ヘヘイヘイ"のボリュームのデカさときたら。自分に勝ち目があるとも思えないけど、マジョリティの好みに迎合できないんだから仕方ない。そんなふうにも受け取れる曲が、今目の前でバカデカいシンガロングを起こしている。最高だ。本編ラストは「だれかとぼくら」、朝日1人の思いから始まったであろうこの曲が、バンドとしての意味を日に日に大きくしていった結果、5周年のアニバーサリーのテーマにもなった印象だ。繰り返されるもっさの"だれかとだれかとだれかとだれかと~"の熱唱は次第に絶叫になり、切実さを孕みながらも以前より包容力を増していた。このショート・チューンをライヴ・アレンジで引っ張ることなく潔く終えたのも、曲に対するスタンスなのだろう。

一旦フロアは明転したが、もちろんアンコールは鳴り止まない。程なく再登場した5人はいつも以上に熱心にグッズ紹介。さらにこの日の模様がBlu-ray化され、初夏にリリースされることも発表。また、初の試みであるネクライトーキーの明るい曲と暗い曲を独断で振り分けるライヴ"ゴーゴートーキーズ!番外編"の説明も。本編を噛み締めているムードもありつつ、視線はその先に向かっている5人はこれまで見た中で一番頼もしい。21曲をしっかり表現した後もむしろ充実した演奏に満たされたかのように、「明日にだって」で爆走する列車のごときアンサンブルを聴かせ、明日に立ち向かっていく気持ちを「遠吠えのサンセット」でさらに増幅してくれたのだった。

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