Japanese
ego apartment
Member:Dyna(Laptop/Ba) Peggy Doll(Gt/Vo) Zen(Gt/Vo)
Interviewer:高橋 美穂
サイパン島出身のDyna、大阪府堺市出身のPeggy Doll、シドニー出身のZenという、バラバラな出身地の3人から成るego apartment。日本語英語を混ぜ合わせた歌詞や、ツイン・ヴォーカル、ドラムレスの編成も含めて、既存のスタイルにとらわれていないバンドである。2022年、Spotifyの"RADAR: Early Noise 2022"に選出され国内外から注目を集め、同年6月には1stフル・アルバム『EGO APARTMENT』もリリース。その勢いは今年も増すばかりで、フェスに引っ張りだこなうえに、3~4月には初の全国ワンマン・ツアー"EGO APARTMENT -TRANSIT-"も開催。間違いなく今聴きたい、観たいアーティストの筆頭である彼らに、じっくりと話を訊いた。
-編成も音楽性も、何にもとらわれていない、自由なアーティストという印象なのですが、まず出身もバラバラな3人を繋いだものとはなんなのでしょうか。
Dyna:"自由"っていうのは、的確すぎるほど的確で。3人とも自由人すぎてマネージャーが困っているんですけど(笑)。繋がった理由は音楽でしかなくって。Zenは名前はうっすら知っていたんですけど、"洋楽を歌っている"っていう前情報しかない状態で、InstagramでDMを送ったんです。僕自身、歌うこともラップもできないけど作曲は好きで、ずっとYouTubeでアカペラとかを取ってきて、それに自分が作った楽曲を乗せることをやっていて。でも、やっぱオリジナルを作りたいなって思って、ずっと歌い手を探していたんです。それで、たまたま妹の学校の先輩がZenだったんですよ。文化祭でヤバい人が歌うからDynaアタックしてみいやって言ってもらって、DMを送ったらZenが家に来てくれて。その日に「NEXT 2 U」(2021年8月リリースのシングル)と「SUN DOWN」(2021年6月リリースのシングル)ができました。
-その日? 初めて会った日ですか!?
Dyna:その日やんな。
Zen:うん。なんにも思わずにふたりで、遊んでみようって。パッと作れましたね。
Dyna:Peggyも同じく――そのとき「NEXT 2 U」は1番しかできていなくって、今のPeggyの2番のヴァースがない状態だったんです。ふたりで、まだ物足りひんな、これじゃリリースはまだやんなって言っていたときに――当時僕はDJもやっていたんですけど、DJの先輩のインスタのストーリーズでPeggyが弾き語りで歌っているところをたまたま観て、ピンときて。Peggyに歌ってほしい! って思って、DMで20行ぐらいのラヴ・レターを送ったんです。
Peggy:最初、3人が集まれたのは、Dynaの熱量があったからだと思います。
Zen:うん、うん。
Peggy:僕らそれぞれ音楽をやっていたけど、それをどうこうする頭もなかったし。年も20歳を超えて、学生みたいに何も考えずに音楽に没頭っていうわけにもいかず、仕事とかも考えるようになる頃で。そんなときに、いい意味で何も考えずに音楽をできる人たちと出会えたんですよね。だから、奇跡のようなタイミングでガッチリはまったと思います。
Dyna:Peggyに関しては、最初は本名すら知らなかったですからね。
Peggy:そうそう。でもみんな、音楽でメシを食っていきたいっていう、漠然とした強いエネルギーを持っていて。そういう3人がうまく集まれたんだと思います。
-そんな3人が集まったときに、どういう音楽をやっていきたい、どういうバンドにしたい、そういう指針みたいなものは話し合ったんですか?
Dyna:そういう話はずっとしている気がしていて。3人の音楽のルーツがあまりにも違うので、"こういう音楽聴くねん"、"こういう映画に影響受けてんねん"って話しているうちに、目指していくところも変わってきたっていうか。最初は各々違うヴィジョンを描いていたと思うけど、やっていくうちに"その音楽もかっこいい"、"その音楽もかっこいい"ってなっていって、3人のエゴがうまく混じり合ってきた今、2年目かなっていう感じですね。
-まさに名は体を表しているわけですね。このバンド名はどのように付けたんですか?
Zen:2年前の、4月とか5月とか?
Dyna:「1998」(2021年5月)リリースにあたって、急ごうかって感じだったか。僕が一応リーダーなんで、バンド名を決める気満々だったんですよ。3人のLINEグループがあって、バンド名を決める会議を夜11時くらいからしたんですけど、僕は次の日の予定があったから、候補を何個か投げて寝ちゃったんです。そうしたら、ネーミングセンスが見事になかったから、僕が投げた候補はスルーされていて(笑)。結局、Peggyが考えてくれたのかな。
Peggy:そうですね。意味をつけるとしたら、"エゴ"の"アパートメント"なので、考え方とか好みも違う状態で、ぶつかることもあるだろうけども、それでもアパートメント――集合住宅みたいな感じで、一緒にいることでいいものが生まれればいいなって願いとか祈りがこもっています。なので、さっきDynaが言った通りになっていると思いますね。
-先ほどDynaさんとZenさんは、出会った日に楽曲を作ったとおっしゃっていて、でもその一方でDynaさんは、3人とも音楽のルーツはバラバラだともおっしゃっていたじゃないですか。だから、どういうふうに楽曲を作るのか、気になるところなんですが。
Dyna:僕は通ってきた音楽が打ち込みで。DTMで楽曲を作り、自分でギターを弾いて録音するような環境に慣れていて。Zenは声とギター1本、みたいなスタンス。だから"ちょっと、いいフレーズない?"みたいにZenに弾いてもらって、それを僕がパソコンでレコーディングして、"そこのメロディ、こうしよっか"、"3つ目のコード、こう変えようや"とかふたりで言い合って作っていって。「NEXT 2 U」はボサノヴァみたいですけど、Zenが弾いたコードに対して"これでいこうぜ"って言ってレコーディングして、僕が展開を作って、Zenのヴォーカルをレコーディングして、っていうように交代交代で作業していきました。
Zen:うん。でも今思うと、全ジャンル親戚みたいなもので。静かに始まってサビでディストーションかかる感じや、エレクトロニックとかEDMのビルドアップからのドロップ、R&Bのグルーヴ、そのいいところをかじって混ぜたものに近いのかなって。「SUN DOWN」とかも......ロック......エレクトロニック、みたいな、ふたりでそんな会話をしていた気がする。
Dyna:「SUN DOWN」のベースはライヴでは弾いているけど、原曲はシンセ・べースがブォン、ブォンって鳴っていたり、1番目のサビが終わったあとにシンセが鳴っていたり。今の音楽シーンにないものを作りたいっていう意識がありました。
-しょっぱなから志が高かったんですね。
Dyna:それはあったと思いますね。「NEXT 2 U」は手癖っちゃ手癖で作ったから、その次に「SUN DOWN」でちょっと攻めたというか。日本のシーンにこの音楽が入ったら嬉しいな、みたいな気持ちで作っていた記憶があります。
-そんなふたりに、Peggyさんはどう曲作りで絡んでいったんでしょうか。
Dyna:Peggyに「NEXT 2 U」の2番を歌ってって言ったときは、Dyna & Zen featuring Peggyっていう予定やったんです。それが、思ったよりも3人仲良くなったし、めちゃくちゃいいメロディ来たし、これは3人でやっていくしかないなっていうのが(ego apartmentの)始まりだったんですね。だから1stシングルは「1998」ですけど、3人の出会ったきっかけは「NEXT 2 U」かなって思います。
Peggy:メロディを任せてくれることが多かった......今もそういうときはありますけど。最初はふたりの良さを今ほど知らなかったから、やりながら僕がふたりに対して何ができるかを考えたり、あとはふたりに任せたらいいところとかを見つけながらやってきたので、一緒に適材適所でやっていけたらいいですね。
Zen:Peggyが俺たちの素材を縫い合わせてくれる感じはあります。
-ちなみに、Peggyさんはもともとどういうスタイルで音楽をされていたんですか?
Peggy:DTMはしていたけど、そこが上手なのはDynaで。Zenはギターや声がいいし。僕はふたりの中間みたいな感じなのかな。だからZenが言ってくれたみたいに、繋ぎ目になれているんだったら僕としては嬉しいです。
-そんな3人が共通して曲作りの土台として考えているものって、何かありますか?
Dyna:たぶんやけど、シーンに合わせないことっていうのが3人に共通しているのかな、いい意味で言ったら。3人とも音楽シーンに対して頑固っていうか、抗っていきたい反抗心がかなりあると思うので。3人の思う美学がシーンにブチ刺さればっていうか、その先に行ければっていう考え方で常に動いている感じはしますね。
-音楽で繋がったとはいえ、そういう思想も共通していたわけですね。
Dyna:思想的なところは、出会って1年でガラッと変わりましたね。全員そうやと思います。性格も聴いてきた音楽も違うので、遊んでいくうちに――例えば、みんなで集まってゲームで遊ぼうやとか飲み会しようやっていうのが、僕らの場合は家に集まって音楽を作ることやったんですけど、その中でちょっとタバコ吸う時間があったり、一緒にNetflix観たりしながら話したり。住んでいるところも、当初は県を跨いでいたんです。(DynaとPeggyは)大阪で、Zenは当時は京都で。僕が車で送り迎えすることも多くって、そのドライヴ中に話したりしているうちに、僕の思想は変わりましたね。
Peggy:3人とも根底には、人と違うことがしたいっていう気持ちがあると思います。だからそれぞれのコミュニティから弾かれたこともあるかもしれないけれど、今は3人でそういうのを共有できているから良かったなって。
Zen:1年前にDynaが言っていたことがやっとわかったりとか、Peggyはこういうことを考えていたんやってやっと気づいたりとか。そういうなかで成長していけているとはすごく感じますね。曲作りでも、捨てよっかなって思っていた曲をピックアップしてもらって、こんな捉え方があるんやとか、びっくりさせられることがあります。
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