Japanese
ego apartment
Member:Dyna(Laptop/Ba) Peggy Doll(Gt/Vo) Zen(Gt/Vo)
Interviewer:高橋 美穂
未だに反抗期が続いていて、カセットテープを聴いています
-先ほど"日本のシーン"というワードも出てきましたが、国境も関係なく自由に、ワールドワイドにやってらっしゃるイメージがあるんですね。歌詞も日本語と英語が混ざっているし、すでに海外に多くのリスナーがいるし、初ワンマンをアメリカでやる予定だったし("ego apartment / first solo concert")。だから、そういうヴィジョンが最初からあったのかどうか、というところも気になっていたんですが。
Dyna:そもそも、歌詞を日本語じゃなく英語にすることによって、日本でバズるっていうよりも世界のみんなに聴いてほしいって思っていて。今もその気持ちのままですね。3人とも洋楽の影響を受けてきたので、その憧れのアーティストに近づきたい思いもあります。
Zen:普段聴くものと違う音楽を聴く入口になりたいっていう。Dynaも言っていたように、日本のチャートにこういう音楽があれば嬉しいので。あるあるなもの......
Dyna:テンプレート?
Zen:そう、テンプレートから外れたいっていう気持ちはすごくあります。そこから、人に影響を与えて、違うもの、もっと面白いものが生まれたらいいなって思います。
-今って、ありとあらゆるテンプレートがあるじゃないですか。そこから外れたものを生み出すというのは、面白くも大変なことであるとは思うのですが。
Dyna:結構難しいよね。それはずっと課題やね。
Zen:自分たちに対するチャレンジが一番ハードな気がする(笑)。
Peggy:やりたいこともあるけど、たぶん3人ともやりたくないこともあるんです。それを確実にやらない! っていうのが僕らの強みかと思います。すごく抽象的な言い方やけど、それがテンプレートを避けることなのかもしれないです。
-誰もに受け入れられやすいテンプレートを外すという挑戦をしてきたなかでSpotifyの"RADAR: Early Noise 2022"に選ばれたのは、ひとつ自信になったんじゃないんですか?
Dyna:そうですね。それまでは家族やバイト先の先輩にしかデモを聴いてもらえなかったので、やっぱ"Early Noise"に選ばれたときは嬉しかったですね。
Zen:こんなにいっぱい人に聴いてもらって、好きでいてもらえることで、このまま同じ気持ちで行けるっていう自信に繋がりました。ただ、常に自分との戦いが3人ともあって、1歩進んだら先のハードルが見えてくるっていうか。それがずっと続いている気がします。
Peggy:今まで音楽をやってきて、今のプロジェクトじゃない場でもいろんな人たちとコミュニケーションをとってきて、音楽が良くても売れるわけじゃないということも言われてきたんです。でも僕は"いい音楽は売れる"っていうのを諦めたくなかったので。もちろん助けてくれた人たちもいるんですけど、僕たちは自分たちがいいと思うものを頑固にやってきて、それがひとつ報われた気がしたので、すごく嬉しかったのは覚えています。
-今の、言わずと知れたサブスク時代という状況下でego apartmentは広まっていったと思うんですが、そんな時代性を踏まえて表現や活動の戦略を練ったりはしていますか?
Dyna:サブスクを意識したことは、僕は正直あんまりなくって。レコード・ショップやブックオフとか行ってCDを買って、車で聴く楽しみのほうが大きい。常々、便利な時代だなとは感じてはいるんです。好きな曲をどこでも聴けるし。でも、ほんと未だに僕は反抗期が続いていると思っていて、電車でポータブル・プレイヤーでイヤホンつけてカセットテープを聴いていますし。そういうのをあえてやるスタンスで生きているので。だから、今このサブスクの時代だからこういう動き方をしようっていうのはあまり考えたことがないですね。むしろ昔の、古き良きといいますか、形のあるものが好きなので、そこをもう一度蘇らせるじゃないですけど。音的には今の時代にも合っているかもしれないですけど、通ってきた音楽はそういうところもあるので、両方マッチングできたらいいなとは思っていますね。
Zen:戦略として、いろんなやり方があると思うんです。MIGOSは長いアルバムを作って再生回数を回したり、VULFPECKは無音のアルバムを作って、寝るときに聴く用の音楽として出したり。でも古き良きっていうか、フィッシュマンズとかはクラシックを残していて、今も聴いている人がいて。やっぱり、残るものを作れればいいと思っています。ほかと違うもの、目立つものもいいんですけど、新しい時代のクラシックを作りたいですね。
Peggy:例えば、サブスク時代の音楽の特徴として、イントロがすごく短いとかありますけど、僕らの音楽ってそうじゃないんですよ。だから、深く考えていないと思うんですよね。現状の感想は、僕らみたいなアナログ人間が世の中に対して発信しているものがわりと受け入れられるって、なんか面白いなっていうか。どういう流れになっているかまだよくわかっていないんですけど、使い捨てにはなりたくないっていう気持ちはあるので。別に、今までとスタイルを変えなきゃいけないと思っているわけではないんですけど、でも現代を生きているから、何かしらで考え方は現代寄りになっているとは思うので、深く考えずに作るほうがいいのかなと僕は考えています。僕らがアナログなぶん助けてくれる人たちはいるので、そういう人たち会話をしていくのが大事かなとは思います。
-そう、楽曲に関してはイントロが短いわけでも歌始まりなわけでもないし、純粋にいい音楽を追求している感じが伝わってくるんですよね。強いて言うならば、MVが面白いところは、視覚も重視されている現代に寄り添っているように感じられますが。
Dyna:MVのシナリオは基本的にZenに任せているんですけど、映像も表現のひとつだと思うので、そこを外に任せっきりにすると自分たちの色が消えちゃうのかなとは思います。
Zen:やっぱDIY感、音源とシンクロしているところはそこなのかなって思います。僕たち、ドラマーを入れないとか、ある機材で音楽を作りたいとかやっていますけど、ハイ・プロダクションじゃなくてもいいものが作れるし、楽しいものを作れる気はします。ミニマルなコンセプトを残しつつ、最大限を引き出すことが目的というか。
-Zenさんがおっしゃっていましたけど、ドラマーがいらっしゃらないこともego apartmentの特徴ですよね。昨年ぐらいからフェス出演も含めてライヴが増えていますけど、結成したときからライヴを想定しつつもドラマーがいなかったのか、それともライヴを想定していなかったからドラマーがいなかったのか、どちらなんでしょうか。
Dyna:後者の通りで、ただ単に曲作りが好きで、打ち込みから始まったし、こんなに毎週ライヴに呼ばれるようになるとは思っていなくって。音源の美しさを求めていたけど、たまたまライヴに出るきっかけをいただいて、そのまま今に至るっていう。でもだんだん、もっとライヴ感を求めたいとは思うようになってきたので、それが曲作りにも反映されたり。こういう曲にしたら、3人でドラムなしでもライヴ感が出せるんじゃないかとか考えたり、機材を増やしたり、リズムマシンでジャムのセッションを作ったり、いろいろ工夫はしています。でも根本的には、3人で音楽を作る楽しさを忘れないっていうのはあります。
-この3人で音楽を作ることが大事というか。
Dyna:はい。
-じゃあ、楽曲にも3人のキャラクターが表れていると思いますか?
Dyna:そうですね。曲それぞれにも、めっちゃあるよな? あの曲はZenっぽい、Peggyっぽい、Dynaっぽいっていうのはあると思います。
-なるほど。聴いていて、すごく気張らずに聴けるし、気持ち良く踊れる楽曲が多いんですよ。そこには3人の人柄が表れているのかなって思ったりもしていたんですが。
Peggy:僕たち、自分たちで自分たちの音楽をおしゃれとは思っていないんですけど、周りの人たちからそう言っていただくことはよくありまして。でもおしゃれって聞くと、かしこまった敷居の高い感じをイメージされるかもしれないんですけど、僕はそうしたくないんです。僕たちの音楽は身近であるべきだと思うし、服装とかも関係なく、もっと誰でも楽しめるものでありたいので、その気楽さが滲み出ているのかなとは思います。
Zen:みんな共通している経験ってあると思うんですね。楽しい気持ちもみんなで分けられるし、音源を聴けば楽しい気持ちに戻れるとかあるじゃないですか。気持ちをカプセルに閉じ込めるように(笑)、(音源を)残せたらいいとは思います。
-最初はライヴを想定していなかったからこそ、今はライヴやフェスで得られるものの大きさを感じていらっしゃるんじゃないんですか?
Dyna:最近特に感じます。コロナ禍が終わって、お客さんが声を出せるようになったのがだいぶ大きくて。この間"GREENROOM FESTIVAL'23"でライヴをやらせていただいたときは、人生で初めて"ジャンプ!"って言いましたからね。
-おぉ!
Dyna:そうしたら(お客さんが)跳んでくれて。それがすごく嬉しかったんです。僕は10代の頃、ライヴでモッシュやダイブをしていたんで、その感覚が自分がやっている音楽で初めて味わえたんですよね。ego apartmentはコロナ禍で生まれてライヴをしてきたので、これまでは静かに拍手、次の曲、静かに拍手......っていう流れだったので。
Zen:今は沈黙と拍手だけではなく、いろんなレスポンスがあるから。叫び声とか(笑)。
-ego apartmentって家やヘッドホンで聴いても気持ちいいからコロナ禍でも広まっていったっていう経緯もあるとは思うんですが、さっきも言ったように踊れる音楽でもあるから、これからライヴで演奏されることによってより肉体性を帯びていって、オーディエンスのレスポンスとケミストリーを起こしていくんじゃないかなって期待もしています。
Zen:「Call me」(2023年4月リリースのシングル)もライヴの最後にやっていたんですけど、そこからロック調になっていったり。やっぱり最後は盛り上がりたいから、っていう。
Dyna:1年くらいライヴではやっていて、そのうちにエフェクターボードや自分の手癖、お客さんの反応を吸収して、デモとは違う楽曲になりました。
Peggy:デモの状態で1年間やったんですけど、いいやり方だと思いました。ライヴを想定して作ったとしても、ライヴでは予想できないことが起こるから。
-リリースせずに楽曲をライヴで育てるというのも、古き良きやり方のような気はしますね。だんだん海外にも行きやすくなってきましたが、今後のヴィジョンってありますか?
Dyna:変わらずコツコツ曲を作っていきたいし、やっぱり海外でもライヴをしていきたいですね。この前、韓国でライヴをさせてもらったんですけど("The 15th Seoul Jazz Festival 2023")、すごく手応えを感じたので。出番前にMCの心配とかしたんですけど、お客さんが"ありがとう!"、"かっこいい!"、"愛してる!"とか、日本語で声を掛けてくれて嬉しかったです。やっぱ音楽は世界共通で届くし、みんな言語や人種に関係なく好きなものは好きなんだって、肌で実感できました。
-そのへんも期待していますし、サブスクで広まった一方で、アナログ・レコードも似合う音楽性だと思いますので、その両翼で飛んでいってほしいです。
Dyna:僕たちもレコード好きですし、よくカセットテープやレコードの最後のほうに、声ネタだけ、オケだけ入っているようなサプライズも大好きなので。あとはパッケージを開けたときに写真が入っていたり、そういうおまけも大好きで。そういう楽しみはフィジカルの強みだと思うので、両方で活動していければと思います。
RELEASE INFORMATION
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NEW SINGLE
「Call me」

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