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INTERVIEW

Japanese

Kyso

2025年01月号掲載

Kyso

Member:Nyk(Vo) AssH(Gt)

Interviewer:山口 哲生

-そうですよね。

AssH:だから、テクノロジーでいろいろとできるようになったし、いろいろ計算されてやり尽くしたものもそれはそれでいいんだけど、ただ僕等がやる音楽は、アコースティック・ギターと歌だけでちゃんと表現できる範囲内でやりたいんですよ。あまりデジタルを挟まずに、シンプルな一個一個の素材の良さ──ギターだったらギターのいい音を録りたいし、歌だったらよりこだわっていい声を録りたい。コンプレッサー掛けて、ディレイとかダブラー掛けてとか、今はいろいろできるんだけども、そうせずとも楽しめるものにしたくて。

-うんうん。

AssH:僕はJimi Hendrixがすごく好きなんですけど、(Jimi Hendrixは)曲を基本的にアコースティックで作っていたらしくて。曲を聴いたらファズが効いていて、そんなイメージはないと思うし、バンドでむちゃくちゃやってるような感じではあるんだけど、そもそもアコースティックで聴けるぐらいいい曲にするところから、作り出しているというのを知って、改めて聴いてみたら、なるほどなって部分がいっぱいあったんです。だからゆくゆくはチルによりフォーカスして、リラックスできる空間で、僕がアコースティック・ギターなのかフルアコなのか、エレキだとしても歪んでいないシンプルにクリーンな音と歌と、あとは軽いビートでもカホンでもなんでもいいんですけど、それをそのままの形で出すということも考えていますね。だからもう、しゃぶしゃぶみたいな(笑)。

-ちょっとお湯にくぐらせる程度でいいという。

AssH:そうそう。それでおいしいじゃないですか。寿司もそうだと思うんですけど、素材自体が良ければ、調味料をめっちゃ入れてガチャガチャさせなくてもおいしい。そのおいしさがある上で調味料をいろいろ足すのは、それはそれで面白いと思うんですよね。でも、なんでもかんでもっていうのはちょっと違うなって。そういうものにしたいと思ってます。それは「Her Wilds」だけじゃなくて「Wasabi」も一緒で、とにかくシンプルにするっていう。

Nyk:アレンジありきな曲は作らないことは、お互いの認識としてすごくあって。曲の作り方もいろいろあると思うんですけど、僕等が作る音楽に関しては、装飾しなくても成立するもの。そのなかで、僕等が本当にこれでより良くなるよねって思うものだけを付け加えていくように、心掛けてます。

AssH:だから卵かけご飯ですね。あとは塩おにぎりとか。

-それだけで完成されている。

AssH:そうです。そこに足したい人は足せばいいっていう。海外へ向けたときにそんなシンプルさは考えているし、あとは"Wasabi"や"Kyso"という名前もなんですけど、外国の方々が発音しやすいってところを大事にしたんですよ。

Nyk:まずそのユニット名を一番悩んだよね。制作の何よりも悩んだ(笑)。全ての国の人が発音できそうな名前にするっていう。

AssH:何ヶ月もかかったからね(笑)。でも、グローバルにやっていきたいので、そこはちゃんとしたくて。

-Kysoって全世界の人が発音しやすい言葉なんですか?

Nyk:拍で言うと"カイ"、"ソウ"なのですぐに覚えられるのと、例えば"カイロウ"みたいにラ行を入れてしまうと、英語にしたときに"R"か"L"が入ってきて発音が難しくなるから、日本語でも英語でも"これを発音してみて?"って言ったときに、だいたいその発音になる言葉にはしたいよねって。それでいろんな単語を考えていたんですけど、車に乗っているときに......(笑)。

AssH:うん。

Nyk:最初に"Kyso"が出てきた理由って覚えてる?

AssH:覚えてる。外国の方々が発音しやすいのはもちろんだけど、2人にゆかりがあるものにしたいよねって話していて。それで、僕は生まれも育ちもずっと東京だったんですけど、ちょっと1回離れてみようかなと思って湘南のほうに引っ越したんですよ。で、海の近くだから海にまつわるもの──

-(笑)

AssH:これはもうオチが見えてますね(笑)。

Nyk:ワカメにすれば良かったかな(笑)。

AssH:"ワカーメ"はたぶん言いづらいでしょ(笑)。海にまつわるもので何かないかなってNykが探していて、魚もないし海はダイレクトだしなとか言っていたときに、"海藻は?"って聞いたら、海藻は発音しやすいと。海藻か......ダサいな......とは思ったんですけど(笑)、さっき言った"回想"シーンの"カイソウ"もそうだし、2人でここから作り直すという意味では"改装"セールの"カイソウ"もあるし、今の自分たちに合ってるなって。だから、ダジャレ的に出てきて決まったっていう記憶。

Nyk:うん、合ってる(笑)。最初は意味というよりは本当に響きで考えたんですけど、その流れが面白かったのと、なんかしっくり来て。

-そうだったんですね。面白い(笑)。

AssH:まぁ、これが僕等の限界です(苦笑)。

-でも、日本人からしたら"Kyso"というスペルを見たときに、まず海は出てこないですし。

Nyk:良かった(笑)!

AssH:むしろ出てこないほうがいい(笑)。

-はははは(笑)。楽曲の話に戻しまして、「Her Wilds」は大幅にリアレンジされたとのことでしたけど、歌詞に関しては?

Nyk:ほとんど変わってないです。変わったとしても、1ヶ所、2ヶ所ぐらい。この曲は本当にシンプルに恋愛の歌なんですけど、恋愛をしたときとか、そうじゃなくても誰かのことを知ることって、僕の感覚では大地を開拓するような感じというか。何も分からない場所に行って、その場所を少しずつ探検しながら知っていくっていうイメージがあって。"Wild"は野生的って意味なんですけど、"Wilds"は荒野や、未開拓の土地という意味があるんです。だから、彼女のそういう場所って意味で、"Her Wilds"。思いがけず女性のその場所に迷い込んでしまって、抜け出せなくなってしまったんだけど、最後はそれがいいってなっていくという。

-なるほど。

Nyk:最初はちょっと怖がっていて、自分が力をなくしたような感覚になって。太陽の光がどんどん夕暮れに変わっていき、この先、暗くなっていくことが分かっている恐怖感みたいなものから始まるんだけど、夜になってみたら星がすごく輝いていて。周りが暗くはなったんだけど、かえってそれで見えてきたものもあって、最終的にはその荒野というか知らない土地から抜け出せなかったことも運命で、その場所を自分の居場所にしていくような物語になっています。だから純粋なラヴ・ソングではあるんですけど、感情が強い分、自分でコントロールが効かない不安があって、だけどそれが快楽に変わっていくというような感じですね。

-Wildって"ヤバい"みたいな意味もありますよね?

Nyk:そうですね。野生的ってところから、その延長線上で、恐怖や危険という意味もあるんですけど。例えばよく言われているのがWild Westっていうアメリカ開拓時代のこと。あくまでヨーロッパからの移民の話限定で言うと、東海岸から入って、どんどん西に向かって進んでいくんだけど、西のほうは無法地帯で、どこに何が潜んでいるのか分からない。本当に怖い場所なんだけど、それを手懐けていきたいみたいな。そういう男性の心理的な部分から言ったりするんですね。そういう知らない場所全てが"Wilds"であって、それを相手の女性に例えた感じですね。

-なるほどなぁ。

Nyk:ははははは(笑)。

AssH:授業だ(笑)。

Nyk:英会話(の授業)になってしまった(笑)。

-いや、ありがとうございます。めちゃくちゃ勉強になりました。

Nyk:(笑)たぶん、英語としてはあまり一般的な言い方ではないんですよ。"Wilds"っていう言葉自体は、英語圏の人はもちろんみんな知っていると思うけど、"Her Wilds"というのはなかなかない表現だと思うので。たぶん、英語圏の人も聴いたときにそういうことだったのかってなると思います。僕の親や周りの友達、一緒にSilver kiddをやっていたBubby(Ba)も、タイトルから考えていた内容と違って、それがいいって一応言っていただいてます......(笑)。

-ギャップというか。

Nyk:そうですね。たぶん、どういう意味なんだろうって気になるタイトルではあると思うので。それこそ"Wasabi"や"Circles"はその単語でしかないんですけど、この2つの言葉("Her"、"Wilds")ってあまり一緒にされるものではないし、雰囲気は伝わるんですけど、それが何を言っているのかというのは、曲を聴いて初めて分かるようになっているので、一旦出る3曲の中では一番ミステリアスな曲かもしれないですね。

-そろそろお時間になってしまったんですが、ユニットとしてどういったヴィジョンを持っているのか、どんな音楽をやろうとしているのかはかなり明確にあるようですし、ここからいろいろとイベントに出演されたり、ワンマン・ライヴをしていったりすることによって、また新しい発見もありそうですし、今後がとても楽しみになりました。

AssH:ありがとうございます。ワンマン・ライヴをやる前までには、ここからどんどん新曲も増えていくと思うので。

Nyk:ここから本格的なライヴ活動を始める前に、1月18日にイベント("Our Little Secret: Vol. 1")をやる予定なので、そこでもまたいろんな曲をやれたらいいなと思っています。それでもしワンマン・ライヴをやるときは、もう本当にギリギリまで、そのときに今僕等がアツいなって思う曲をやりたいですね。ライヴの前々日ぐらいにサポートの人に送って......。

AssH:"今日できたから"って(笑)?

Nyk:うん。"ごめん、明後日までに......"って。

-サポート・メンバーの方々はヒヤヒヤしますね(笑)。

Nyk:そこはもうたぶんやりきってくれると思うんで、安心してます。

AssH:でもまぁそういうことがなるべくないようにはします(笑)。

RELEASE INFORMATION

Kyso
NEW SINGLE
「Her Wilds」
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[MONKEY MOUNTAIN]
2025.1.18 ON SALE