cinema staff 「萌えもemo」【第56回】

COLUMN

前々回このコラムに書いた金沢の酒場"そのえ"。
先日、cinema staffのツアー金沢編で、寄ってきました。
実に7年ぶり。
早めの時間、お客さんは僕一人。酒場のこのちょっとした緊張感も嫌いじゃない。
とりあえず瓶ビールを頼むと、やはりママが注いでくれます。
本当はママも飲みますか？と言いたいところでしたが、そこは一旦グッと堪えてると、珍しがった顔でママが話しかけてくれたのでなんとなく来た経緯を話すと、めちゃくちゃ優しい笑顔で、ありがとね、と言ってくれます。
イカとじゃがいもの煮物、金沢の野菜、加賀太きゅうりの酢の物で普段味わえない家庭の温もりも味わいつつ、途中隣のお店のママも来て最近の飲み屋事情やら、最近髪切ったねやら、ワクチンの話やら世間話を。
昔は夜中の2時とかまで店空けてたけど、最近は暇だから早めに閉めちゃってるとのこと、ママが働く飲み屋までタクシーで片道3000円かかるから全然儲からないわよなんて笑いながら言ってました。
もうすぐ50年になる"そのえ"、80歳のママ、またすぐ来てねって言ってもらえる幸せ。
（実は夜中にもう寂しくなってしまい飯田くんを誘って一杯だけ行ってしまったのでした（笑）。）
今回ツアー、他の県で行った酒場でもママに"ここら辺の人じゃないよね？"と言われ、ドキッとして、"すみません、東京からです......"と言うと、"謝らなくて良いのよ、ありがとね"と返され、あぁ酒場って最高だなと感じたところでした。
とにかくライブができる喜び、酒場に行ける喜びを実感しまくってるツアーになってます。

さて、今回の音源の紹介の方は、コロナ禍真っ只中2020年にデビューしたロンドンの大所帯ポストロックバンドCarolineの新作2ndシングル12インチを。
今作もRough Tradeリリース、シカゴ音響派なアプローチを、現代の感覚でUKという土台を経て咀嚼、過去このコラムでも書きましたが、この新曲も素晴らしいので取り上げます。
牧歌的メロ、実験的でミニマルながら壮大に展開していく約8分の大曲"Skydiving onto the library roof"と、美しくノイジーに重なり合うギター、ラストのカオスな展開が最高な"Everything for everyone"の2曲収録。
1stのハシゴジャケからのこの椅子ジャケもたまんないです。

話題になってるこのUKシーン、Dry Cleaning、Sorry、Black Country, New Road、Goat Girlとかに比べるとイマイチ注目されてない感......やはり地味なのか。
かなりマイペースなバンドっぽいのでまだだいぶ先になりそうですが、とにかくフルアルバムが楽しみ。
こうして国内外今年も相変わらず素晴らしい音源がどんどんリリースされてます。
cinema staffもツアーをしつつ、実は新曲達をガンガン作ってますよ。そちらもお楽しみに。
明るいニュースが増えますよーに。

cinema staff

2003年、辻友貴（Gt）、飯田瑞規（Vo/Gt）、三島想平（Ba）で前身バンドを結成。2006年に久野洋平（Dr）が加入し、現在の編成となる。2008年、残響recordより1stミニ・アルバムをリリースし、2012年にメジャー・デビュー。オルタナティヴ、エモ、ポスト・ロックに影響を受けたセンス溢れるポップなメロディと、対照的な直情的で衝動性の強い攻撃性を持ち合わせたギター・ロック・バンドとして人気を高めている。2014年にZepp DiverCity(TOKYO)、2017年に日比谷野外大音楽堂にて単独公演を開催。2019年には初のベスト・アルバムを発表。2020年4月、デジタル・シングル「3.28」を、11月には「TOKYO DISCORDER」をリリースした。2021年6月には『白夜/極夜 E.P.』を発売。9月16日にはSkream!ともリンクしたライヴハウス、下北沢LIVEHOLICでスペシャル企画を開催予定。

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