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INTERVIEW

Japanese

cinema staff

2015年04月号掲載

cinema staff

Member:辻 友貴 (Gt) 飯田 瑞規 (Vo/Gt) 三島 想平 (Ba) 久野 洋平 (Dr)

Interviewer:沖 さやこ

前作『Drums,Bass,2(to) Guitars』から約1年振りのリリースとなる、cinema staffの4thフル・アルバム『blueprint』は、間違いなくバンドの最高傑作である。前身バンド結成から12年、現在のメンバーになり約9年。2014年は彼らにとっても革新的とも言えるほど、大きな飛躍の年となった。それはこれまで彼らが手を抜くことなく活動すべてに真摯に向き合い、スキルでも精神面でも着実にひとつひとつ成長してきたからこそ、掴むことができたものだ。主張と意志を強く持った4つの歪な三角形が作り出す輝かしい正方形は、未来へ向けて走り出した――。

-まず、『blueprint』の青写真が見えてきたのはいつごろでしたか?

三島:去年リリースした『Drums,Bass,2(to) Guitars』のツアー(ワンマン・ツアー"Death Bandwagon 2(to) Glory")が終わった、去年の夏場くらいですね。それまではずっと"次回作は『Drums,Bass,2(to) Guitars』よりドラマチックなものにしたい"という漠然としたことだけを考えてはいたけれど、全然制作の気分になっていなかったんです。でも勉強し始めていたDTMが、ちょっとずつできるようになってきていて。それで"これで曲を作ってみたら面白いかな"と思って作って――それが「青写真」(Track.12)の原型だったんです。それまでずっとギターの手癖で曲を作っていて。でもそれだとどうしてもフレージングが限られてくる感じがしたので"そこから一旦離れてみようかな"と思って、僕が全部ピアノで音を打ち込んで、それをバンドでバラすというのを試しにやってみたんです。それが自分にとって曲を作るうえでの方法論としてしっくりきて、"ネクスト・ステップに来た......かな?"と思って。それが『blueprint』のスタートですね。僕の中ではかなり大きな挑戦でした。

-本当に「青写真」が『blueprint』の青写真だったんですね。辻さん、飯田さん、久野さんは、新しい方法論での制作はいかがでしたか?

辻:鍵盤で作られた音は、今まで弾いてきていたものと音の並びが違うので、手癖で弾くことができなくて。それがすごく新鮮でした。面白いと思いました。

飯田:最初三島が持ってきたときは"ピアノの曲としてはすごくいい曲だけど、これに歌メロが乗ったりギターで鳴らした場合はどうなるのかな"とは思って。でも楽しみのほうが大きかったですね。面白かったし、不思議な感覚でした。最初のイントロがツイン・ギターになってるんですけど、ユニゾンとかも僕らはこれまでやってきたことがなかったので、この方法論でなきゃできてない曲だと思いますね。

久野:デモにビートは入ってない状態で、そこにドラムを当てていく作業だったんですけど、ピアノで作られてるのもあって、縦にかっちりした曲になっていたから、バンド感や勢いを出すのがすごく難しくて。あまりにも『Drums,Bass,2(to) Guitars』のやり方と違いすぎて、僕は結構戸惑ったんです。1曲そういう作り方をするのはありだなと思ったんですけど、このやり方でアルバムを作るのはどうなのかな......と思って、話はしました。

三島:なのでピアノで作ってバンドでバラすというのは、この曲以外ではやってないですね。それ以外の曲でのバンドでの制作方法は、僕がプリプロをするようになったこと以外特に変わってないんですけど、今回はDTMを使ったり、メロディを鍵盤で作ったり、僕個人が作ってみんなに出すまでの過程は全然変わったんです。脳内にあったものがもっと整理されて、それが音になっている感じはあるんですよね。

-このアルバムは"バンドをできるだけ長くやっていくために"というバンドの目標の青写真でもあるのでは、と思いました。もともと長く続けていくことは前提だったと思うのですが、最近のcinema staffはそこを以前よりも大事にしているようにも見えるんですよね。

三島:目標はそればっかりじゃないんですけど、長くやっていくことを考えるようになったのは......歳を取ったからですかね(笑)。歳を取ったから考え方が変わってきた。正直、自分たちが順調にきているのかそうじゃないのか、本当にわからないんです。資金は欲しいけど、すべてを売れ線にするのは違うし、でもすべてを好き勝手思い通りにやるのがいいとは全然思わない。そして、ここまで長くやり続けられたことにすごく感謝しているんです。僕らは本当にスタッフにもレーベルにも恵まれているので、そういうことができる環境にはなっているんですよね。だから"もっと続けたらもっと面白いとこに行けるんじゃないかな?"と思えるようになったってこと、かな。変なプライドがなくなりましたね。

-"変なプライド"?

三島:バーン!と売れて散る、みたいな(笑)。でも、自分たちは一花咲かせて去るというより、少しずつでも進んでいくスタイルが合っているなと。昔から思っていたことではありましたけど、それをより強く思うようになりました。自分たちの今後に対して変な過剰な期待をしてないんです。でも僕はめっちゃ売れる気でいるんで(笑)、全然失望もしていない。続けることをしないと、何も起こらないんで。

久野:やりたくないことをやらなければ続けることはできるだろうなと思います。でも音楽で生活をしていくためには綺麗事じゃすまないこともある。よく"バンドは生き物だ"と言いますけど、本当にその通りで、健康にやっていれば長生きするし、不健康なまま続けていると死んでしまうんです。今はその健康法を覚えた感じでもありますね。バンドを続けていたら10年経っていて、それに加えて今は自分たちでも健康な方向に進めている感じがしているし。自分のやりたいことと世間が求めているものが絶望的に合わなかったら続けられないと思うし......そこが意外と合うかもなと思って。お客さんが求めているものも楽しくできるようになっているし、生活とのバランスも取れているからすごくいい状態ですね。

飯田:今27歳で、今年28歳で......大好きで音楽をやっているし、仕事としてもすごく誇りに思っているし、綺麗事じゃなくて本気で"ライヴに来てくれている人のために"と思っている自分がいるなと気づいて。自分たちの音楽が、ライヴに来てくれている人の力になっているのかも......と感じるとき、"ああ、自分がバンドをやっている意味があるな"と心から思うんですよね。だからそういうふうに思ってくれる人をもっともっと増やしていけたら、もっともっと楽しいだろうなって。だからここ最近はとても前向きですね。