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INTERVIEW

Japanese

cinema staff×アルカラ

2018年06月号掲載

cinema staff×アルカラ

4月1日に、互いのホームページで7人組バンド"アルカラcinema staff"として活動すると発表した、cinema staffとアルカラ。7人組バンドはエイプリルフールの嘘だったが、そのワクワクするような2バンドのケミストリーが味わえるのが、このcinema staff×アルカラによるスプリットEP『undivided E.P.』だ。10年近い親交のなかで育まれた互いへのリスペクトと、お互いでしか知り得ない側面が、明るくハッピーなコラボ曲となり、またお互い1ミリも譲れないプライドが、新曲やカバー曲に落とし込まれた。メジャー・レーベル同士の垣根を超えた挑戦で、その意味や意義もある1枚だ。

cinema staff:飯田 瑞規(Vo/Gt)
アルカラ:稲村 太佑(Vo/Gt)
インタビュアー:吉羽 さおり Photo by 石崎祥子

-今回の話はcinema staffからのオファーだったそうですね。

飯田:そうですね。cinema staffはこれまで、毎年のようにフル・アルバムを出してきて。しかも今年は初めてCDを出してから10周年というのもあって、これまでとは違ったサイクルで何か新しいことをしたかったんです。アルカラとは、これまでたくさん一緒にツアーをしたりもしてきて、いつかスプリットを出せたら面白いねというのは、その都度話していたんです。ただ、お酒の席での話なので、"楽しそうだね"くらいの感じだったんですけど、実際にやるのもアリなんじゃないかって話が出て。でも、お互いにメジャー・レーベルにいて、その垣根を超えてやるのがなかなか難しいことはわかっていたんです。ただ僕らも新しいことをしたいし、このタイミングで、お互いで前に進むために面白い企画になるんじゃないかなというところで、お願いをしたんです。それでまず、辻(cinema staffの辻 友貴/Gt)から(太佑さんに)話をしに行ってもらって。

-ちなみに、なんで辻君だったんですか?

飯田:太佑さんの舎弟なので(笑)。(彼は)ほんとに太佑さんのことが好きで、地方のライヴでもずーっと一緒に飲んでるんですよ。

稲村:舎弟って(笑)。でもずっと一緒にいますね。まず、地方でも僕の部屋で寝てますから。起きたら、"おるやん!"っていう。"大丈夫なん?"って。

飯田:もう辻の分のホテル代いらないくらいですよね。

-かわいい舎弟からの話だし、それはもうOKだと(笑)。

稲村:それまでもちょこちょこ話はしてましたけど、今回は本格的にcinema staffがちゃんといろいろ用意してくれて。ただなんとなく飲んでいた延長でじゃなくて、船まで用意したから、行こうよって言ってくれたんですよね。そこで、やりませんっていうのは選択肢になかったので。楽しそうって思って、すぐにその船に乗っかりましたね。

-具体的に話が進んだのはいつごろだったんですか。

飯田:昨年の10月くらいですかね?

稲村:10月の末くらいかな。

飯田:具体的な内容については、それ以降にも話をしてましたね。昨年末に新代田FEVERで対バン(2017年12月に開催された"cinema staff Presents 年忘れ泥仕合シリーズ東京編 ~新代田むにむにの回~")したりとか、高崎で一緒にライヴ(2018年2月に高崎clubFLEEZで開催された"大ナナイトvol.113")をしたり、話すところはいっぱいあったので。その(新代田)FEVERのときに、コラボ曲もあったら楽しいけど、じゃあどっちが創るのか、誰が創るのかっていう話が出たところで、太佑さんが率先して手を挙げてくれたんです。じゃあ、お願いします! っていう。

-そのとき稲村さんには、なんとなくでもcinema staffとコラボ曲をやるならこんな曲がいいかなというアイディアはあったんですか。

稲村:なかったですね、今までも出たとこ勝負できたので。やっぱりこっちは先輩になるので、cinema staffも遠慮するだろうし、一緒に創ろうとなってもお互いにそんなに時間は取れないしとなると、こっちでやろうっていうのがまずあって。あとは、タイミング的に僕が楽曲提供や作家の仕事も増えたので、cinema staffをどう料理しようかっていう。cinema staffって、どの作品も渋くかっこ良く見せてくるんですけど、僕が知ってるcinema staffは、もっと遊びの部分、おちゃらける部分があるのがすごくいいんですよ。ライヴではあんなにかっこいいのに。その部分を引き出したいなというのはありましたね。今まで、一緒にツアーを回っていたからこそ、このEPができたと思うので。そのツアーでの思い出を歌いたいなとか、そのときにお互いの間で流行っていたメロディを入れたいなとなったんですよね。

-では、せっかく話が出たので、先にコラボ曲「A.S.O.B.i」の話をおうかがいしていきます。意外性たっぷりで、しかもコラボならではの陽性の曲になりましたね。

稲村:2014年に、一緒に沖縄と台湾にツアー([ア・ル・カ・ラ 7枚目"CAO"発売記念TOUR「ガイコツアー2014」])に行ったときにえびを釣ったりとかして、ずーっと一緒に遊んでいたんですよね。そのライヴのとき、2バンドに24本入りのビールを1ケース差し入れしてくれたお客さんがいて。先にcinema staffが出番で、そのあとに僕らだったんですけど。僕らが1時間くらいでステージ終わって戻ったら、もうビールが4本しか残ってなくて(笑)。

飯田:(笑)

稲村:この1時間でどんだけ飲めるん? っていう。でも僕らのライヴを観てないとかじゃないんですよ。ずっと観ながら飲んでて。

飯田:cinema staffは昔から、アルカラのライヴの見せ方、演奏の見せ方っていうのには、本当に影響を受けているんですよ。で、アルカラのライヴを見ながらお酒も進み──

-先輩のステージを肴にして(笑)。

飯田:先輩のぶんを残してないから、尊敬してると言っても信じてもらえないかもしれないですけど(笑)。

稲村:"俺は2本しか飲んでない"とか"いや、お前が5本飲んでた"とか、そんなことで言い合いしてて(笑)。まぁ、そういうお茶目な部分があるんですよ。で、台湾に行ったときに、みんなでえび釣りをしたんですけど――台湾って日本人の観光客も多いので、お店でも日本語で書かれているものが多いんですけど、だいたい間違えて訳されていて。"栄養価が高い"っていう意味で書いてるんだろうけど、"添加物どっさり"って書いてあるとか、ちょっとずつ間違えてるんですよ。その最終的に一番間違えたらあかん、"えび"が"そび"って書いてあったんですよね。"そび料理"ってなんやねんって、みんなでゲラゲラ笑ってて。しかも旅スイッチが入っちゃってるので、余計に面白いんですよね。釣ったえびを目の前で焼いてくれるんですけど、三島(cinema staffの三島想平/Ba)は生きものから食べものに変わる瞬間が耐えられんって、先に帰ったりとか。

飯田:お前、何年生きてるんだっていうね(笑)。

稲村:めっちゃそんなことがあって。こんな面白いことを思い出せる曲が欲しいなっていうのが、まずこの曲を創りたいなと思った理由でした。あとは、台湾を出るときに、よく考えたら俺ら遊んでばっかりで何もお土産買ってないなって気づいて、空港でM&M'Sというチョコレートのお菓子のおもちゃを買ったんですよ。それが、ボタンを押すとM&M'Sのキャラクターがサックスを吹く真似をしながら、すげぇテンション高いメロディが流れるんです。それをツアーで常に流しまくってて。

飯田:1日180回くらい。

稲村:そのメロディを参考にしようと思って。

飯田:まさか、ここに繋がると思わなかったです。

稲村:最初は、親しみのあるメロディだから、みんなで歌っとったら面白いかなって思っていたんですけど。サックスでジャズみたいなことをやっているから、それを3コードで表現しようとすると音楽が成り立たないんですよ。それでいろんなコード・パターンを考えていくと、コード進行とか音の並びがやっぱりジャズになっていくんです。ほんなら、俺ら普段こういう曲はやってないけどこれでいくしかないやろって。そんな沖縄と台湾の思い出を歌詞にしつつ、普段絶対cinema staffでは歌わないだろうっていうフレーズをめし君(飯田)に歌わせたらこれ絶対に面白いし、そういう一面をcinema staffのファンのみなさんに見てもらいたい、こういうタイミングだからこそ4人の普段見せない懐の深い部分、面白い部分を引き出したいっていうのが一番の曲のテーマでしたね。

-アルカラでも創らない曲でしょうしね。

飯田:マスタリングが終わるまで、そのM&M'Sのおもちゃのメロディがモチーフになってるって知らなかったんですよ。その話を知ったときは、アハ体験ですよね(笑)。