Japanese
アルカラ
2015年10月号掲載
Member:稲村 太佑(Vo/Gt) 田原 和憲(Gt) 下上 貴弘(Ba) 疋田 武史(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
アルカラ8枚目のアルバム『ちぎれろ』が完成した。アルカラ節たるギミックや遊びがふんだんなロック・アルバムだが、これまで以上に喜怒哀楽の感情が曲の中でのたうって、獰猛にリスナーに掴みかかっていく作品だ。奇妙奇天烈なサウンド世界は、より濃厚に、エッジのあるものへと進化を遂げつつも、エモーショナルなメロディが美しく、そしてキャッチーに際立って、重厚さと軽やかなポップ感とが、何の違和感もなく同居している。ラディカルなのに、いつの間にか、口ずさんでしまう。そんな強烈なパンチ力を持つ。そんな『ちぎれろ』とはいったい何なのかを、4人に訊いた。
-前作『CAO』(2014年リリースの7thアルバム)がストレートさであったり、大人のロックさを前面に出した作品でしたが、今回の『ちぎれろ』は哀愁感や喜怒哀楽が出ていて、すごくエモーショナルなアルバムですね。
稲村:毎回作品を作りながら、何か色をつけたりとかテーマ性を決めながらやっていくんですけど、これまでは作る過程でいい意味でバランスをとろうとしてたところがあって。例えば、激しい曲があるならば、ゆっくりな曲やしっとりした曲があったりとバランスをとって、うまく聴き応えがあるようにしようと無意識にやってきたと思うんです。今回は、そういうのを一旦度外視して衝動的に、思うままにやろうと。タイトルの"ちぎれろ"も作っている途中から、この感じでいこうという見通しがあったんですけど。"ぶっちぎる"みたいなイメージでいければなと思いながら制作はしてました。
-作りながらもこのアルバム・タイトルが浮かんでいたんですね。
稲村:デモで数曲作ってるタイミングで、これは"ちぎれろ"っぽいなっていうイメージが湧いてきて。今までのタイトルは抽象的ではあるけれども、テーマが窺い知れるところがあったと思うんですが――今回はそのイメージ通りぶっちぎるというか。
-その"ぶっちぎる"というのは、4人で共有していた思いなんですか。
稲村:毎度のことですけど、そこまではないですね。
下上:僕は"ぶっちぎる"という言葉を初めて聞きました(笑)。
稲村:すいませんでした(笑)。
-共有はしてないながらも、制作しながら何か体感していたものは?
下上:うん、言われてみればそういう意味合いのことは言ってたなっていう。
一同:はははは。
稲村:最初はもうちょっと、ゆっくりな曲も何曲かあったんですよ。レコーディングの当日になって、さあドラムを録ろうかという瞬間に、"この曲はちょっとこのアルバムでは違うな"と、やめた曲があったり。結果的に、その日はレコーディングじゃなく曲作りの日に変わりましたけど。そう考えると、イメージはもともとあったんかな。
-今回の作品に影響するものとして、ぶっちぎっていく、吹っ切っていくようなことがあったんですかね?
稲村:そうですね。ちょうどこのアルバムを作ろうというタイミングに、ぶっ飛んだ女性アーティストに出会うというか、ようやくちゃんと聴く機会があって。戸川純さんとJURASSIC JADEなんですけど、最近聴いた音楽の中では自由でいいなと思って。あとは戸川純さんもJURASSIC JADEも当時を考えるとだいぶ時代の先をいってたなと。90年代初期、自分が中学生だった当時に出会っていたら感覚が変わっていたなっていうぐらい、前衛的で。これまでの作品である程度バランスをとっていたのは、どこかで聴き手の年齢層とかを考えていたり、ちょっとわかりやすくしたいっていう気持ちがあったんですよね。でも意外と、今回のメロディは歌謡っぽくて。
-そうなんですよね、それがまた沁みるポイントにもなっていると思います。
稲村:結果そうなっているんですけどね。歌謡っぽさ、昭和っぽさというか、そういう自分らにしかない要素を堂々と押し出せば、面白い作品になるのかなっていう思いがあったんですよね。
-意外ですけど、戸川純さんをじっくりと聴いたのは最近なんですね。
稲村:そうですね。知り合いから勧められて聴いたところ、この時代にとんでもない人がいたなと。アイドルみたいな恰好してパンクを歌ったり、まあ歌謡曲っぽいものもあるんですけど、この人がやってたら、この人やなって思える何かがある。そういうこともあって、ぶっちぎるじゃないですけど、ここで一旦やりきってみるという気持ちはあったかもしれないですね。
-戸川さんは、尖がっているけれど不思議とキャッチーさもある人ですよね。スピリットの部分だけでなく、サウンド的なところでも影響はありましたか。
稲村:サウンド的には、まだ消化してないですね。でも今回は、自分らがやれるもうひとつ先をやろうと思ってました。こういうメロディとリズムだと、このフレーズがくるよねみたいなパターンのひとつ先というか。ドラムでも攻めたところがあったり。
疋田:ドラムだけで考えるとどうしても視野が狭くなってしまうので、周りからも"こんなフレーズどう?"っていうのを、今回は提案してもらって。なるほど、そういう捉え方もあるんやなって感じる機会は多かったですね。
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