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INTERVIEW

Japanese

アルカラ

2016年11月号掲載

アルカラ

Member:稲村 太佑(Vo/Gt) 田原 和憲(Gt) 下上 貴弘(Ba) 疋田 武史(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

アルカラが、メジャーでの初シングルを11月23日にリリースする。表題曲が人気アニメ"ドラゴンボール超"のエンディング曲であるほか、カップリングの「怪盗ミラクル少年ボーイ2」も「LET・IT・DIE」もそれぞれアニメやゲームのテーマになった、タイアップだらけのシングル。そして、どの曲も各作品のモチーフやネタをこれでもかと盛り込みまくり、"(自称)ロック界の奇行師"の名に相応しい遊び倒したシビれる内容なのである。「炒飯MUSIC」のキャッチーさと、めくるめくプログレッシヴな展開は、満漢全席さながら。鮮やかで濃厚なアルカラが詰まっている。

-ニュー・シングル表題曲「炒飯MUSIC」(Track.1)はTVアニメ"ドラゴンボール超"のエンディング・テーマですが、今作は収録曲3曲ともタイアップのついたシングルですね。

稲村:たまたまいただいたお話のタイミングとか、あとは3種3様というか。タイアップの内容もゲーム、小学生向けのアニメ、国民的なアニメと、すべて違ったので。ひとつの作品に入れるにはどうしたらいいかなと思っていたんですけど、逆に言うと、今までアルバムとしてひとつのテーマを重視してきたからこそ、そうじゃないひとつひとつのテーマに沿って作った3曲で出せるのがいいかなと。「炒飯MUSIC」が表題曲ですけど、いいきっかけをいただけたなと思いますね。

-では表題曲「炒飯MUSIC」からお聞きしていきますが、これはアニメ"ドラゴンボール"の昔の主題歌などからクラシック・ネタみたいなものをどんどん使っていて、思い切り"主題歌"している曲ですね。

稲村:"ドラゴンボール超"は、僕らの世代も結構観ていて。僕らの世代やったらだいたい小学生くらいの子供がおるんですよね。親子で観ているのであれば、"昔はこうやってんで"という会話ができたらいいなとか。ザッツな曲よりは、アルカラで言ったらむしろボーナス・トラックで入れるような曲──おふざけではないですけど、なんて言うのかな......会社で言えば、福利厚生みたいな感じですね。

田原&疋田:ほう(笑)。

稲村:でも福利厚生やからって手を抜いたわけではなくて、余計に時間と労力をかけたというか。うーん、でもこれだとなんかイメージ悪いな。

下上:わかりやすくていいんじゃない?

稲村:ほんま? アルカラって、いろんな方にいろんなことを言われるんですけど、僕の中で一番ヒットしたのは"遊園地"って言われたことで。アトラクションには、子供も遊べるようなコーヒーカップが回るファンシーなものもあれば、激しいジェットコースターもあればお化け屋敷もあって、そんな感覚の3曲になったと思うし。そういう意味では、「炒飯MUSIC」はカーブの球を本気で投げたっていう感じかな。

下上:いきなり野球で喩え出した(笑)。

今アニメを観てる子供たちが大人になったとき
"なんやったんやろうな、あの曲"って思えるものにしたかった

-(笑)バンドがアニメのテーマ・ソングを担当するとなると、作品のエッセンスを汲みながらも、最終的にはバンドに寄せた、そのバンドらしい曲になるパターンが多いと思うんです。でも「炒飯MUSIC」は、ちゃんと主題歌になってる。この思い切り感もまたアルカラっぽいところではあるのかなとも思いました。

稲村:そうですね。もともと、"ドラゴンボール"の主題歌ってインパクトの強い、今まで聴いたことのない曲が多いなと思っていて。僕が小学生のころから観ていて、ずっと残ってる曲があるんです。「魔訶不思議アドベンチャー!」(高橋洋樹が1986年にリリースしたシングル表題曲)やったり、「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(影山ヒロノブが1989年にリリースしたシングル表題曲)、「ロマンティックあげるよ」(『魔訶不思議アドベンチャー!』収録曲)、「でてこいとびきりZENKAIパワー!」(『CHA-LA HEAD-CHA-LA』収録曲)とか。小学生のころに"聴いたことない音楽やな"ってインパクトがあって。その"ドラゴンボール"の曲をバンドがやるとなると、自分らの音を思い切りドーンとやるのも――もちろんそれでオファーをいただいたのでそのつもりですけど、やっぱり"ドラゴンボール"って、ちょっとひと癖あるよねっていう。

疋田:うん、そうやね。

稲村:影山ヒロノブさんが歌い切ったりする感じとか。小学生に対してあんな声で歌われたらね? それだけで持っていかれるよな。"始まったー!"って。今アニメを観てる子供たちが僕らくらいの歳になったとき、"なんやったんやろうな、あの曲"って思えるものにしたいというのは意識しましたね。気になっちゃうというか。

-歌詞ももちろん、銅鑼の音だったり、少林寺の掛け声だったり、アニメを彷彿させる音のエッセンスがたくさん盛り込まれていますが、最初にこの要素を入れようとなったのは?

稲村:「でてこいとびきりZENKAIパワー!」にあった逆再生は入れたいと思ってましたね。でも早速やってみたら、あまりにもおっさんの声やったので(笑)。

疋田:これはピッチを変えようと。

稲村:その逆再生は子供のころすごく気になっていたので。普通に再生したら、"何々と何々と何々が作りました"っていうスタッフの名前が出てくるんですよね。それを逆再生すると、"@*!$%&=¥?"みたいになるっていう。当時はそれが何だかわからなかったですけど、自分が音楽をやるようになってその手法を知ったので、そこはどうしても入れたくて。それで今の少年たちが、"うわ!"と思って10年後か20年後くらいに、そのことについて語ってくれたらいいなっていう。今は情報過多なので、これは反対にしたらこう聞こえるぜってわかるかもしれないけど。でもやっぱり、聴いている人や見てる人の心が動いたり、頭が動いたり、疑問が出たり、そうやってどこかに楔を打ち込まないと。いいライヴやったなと思っても、帰ったら"何の曲やってたっけな?"ってなってしまったらね?

-その"心に残る"感じはすごくわかります。特にアニメのオンエアではフルで曲が流れないじゃないですか。短い時間の中でいかにして、あれは何だったんだって心に残る曲をというのは、いろんな部分を意識して作っていると思いますが。まずは逆再生からスタートして、そこからどうやって作り上げていったんですか。

稲村:僕ね、最初はオンエアが90秒やと思っていて、90秒で作っちゃったんですよ。他のバンドのやつを見てみようと思って、よう見たら59秒で。"おい、今から30秒も削らなあかんぞ!"ってなったんですよね。でもそのおかげで、プログレッシヴな展開になってくれたんですよ。90秒の時点で最初のテーマの部分があって、Aメロと展開するメロと、ちょっと転調するメロと、っていうパートが4つもあって。それを1分にするにも曲のストーリーが成り立たないと、アニメでやる意味がないと思っていたので。30秒も削るってなったらテンポを1.5倍にするしかないのかとか、悩んでいたんです(笑)。ほんなら、2回繰り返したり、8小節あるところを2小節で終わらせるとか、そうやっていけば、今まで自分では作ったことがない展開の曲ができるなと思ったんですよね。まだ歌詞は当ててない状態やったんですけど、すげぇ曲になって。自由にやっていいよって言われたら思いつかないような曲ですよね。60秒という縛りの中で、どれだけ密度の高いことができるかっていうのを、偶然もあるし、自分が90秒と思っていたうっかりもあって、新しい発見になったなと思いましたね。