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LIVE REPORT

Japanese

cinema staff

2014.06.26 @Zepp DiverCity

Writer 沖 さやこ

2014年1月、単発で行われたSHIBUYA-AXのワンマン・ライヴをソールド・アウトさせ、4月にはフル・アルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』を発表したcinema staffが、その最新作を引っ提げて行ったレコ発ワンマン・ツアー"Death Bandwagon 2(to) Glory"。4人で作り上げた作品を掲げ、対バンを組まずに4人だけで全国14ヶ所を回ったことは、結成11周年を迎えるバンドにマンネリどころか更に清新な空気をもたらした。ファイナルのZepp DiverCity公演は、それが会場全てに満ちた嬉々たる空間だった。

場内が暗転すると、ステージ上のバックドロップにスポットがあたり、SEのClimb The Mind「萌える傘の下」が鳴る。4人で音出しを始めると、その時点からスタートを待ちきれないランナーのような気迫が全員から漲っていた。飯田瑞規が"cinema staffです、楽しんで"と告げ「dawnrider」。その勢い溢れる轟音は、たちまち観客の顔を明るくした。三島想平が指ではじき出す低音はサウンドを牽引し、そのまま"我々は岐阜県から来ました、cinema staffです"と「sea said」になだれ込む。暖色の灯りが差し込む、青い照明で染まったステージ。辻 友貴と飯田のギターの交錯は、水しぶきが飛んでくるような爽快感を生んだ。4人の演奏はこんなにもパワフルなのに、のびのびとしていて余裕を感じさせる。「奇跡」での飯田の歌声は、こちらが目を閉じていても満面の笑みが見えるくらい喜びに満ち、彼のポジティヴな歌が改めてcinema staffの詞の美しさを痛感させてくれた。

久野洋平の刻むドラムの手数の多さに音源でも圧倒される「borka」は、ツアーを経てパワー・アップ。まるで星屑が散らばるように煌びやかで、緩急も巧みになっていた。cinema staffの音の表情や奥行きを作り出すのは、彼の激動かつ繊細なプレイによるところもかなり大きい。三島と飯田のコーラス・ワークが効いた間奏の美麗さの余韻に浸っていると、急激なギターの破壊音。一気に情景を変えた「shiranai hito」はとにかくどでかく抜けが良い。これだけのスケールを持ちつつ勢いを生むことができるのは、現在の彼らだからこそ成し遂げられる芸当だ。ギターがひりついた音像を生む「super throw」は、変拍子は入り組んでいるのにもかかわらず滑らかで心地よい。ドラム、ベース、2本のギター、歌、叫び――どの音も同列に並び、どの音も互いを引き立てる。cinema staffの出す音は全てがリズムを巧みに刻んでいるから、どの音が欠けても彼らの音楽は成り立たない。そんなことを再確認したのは、耳に長く馴染んでいる昔の曲だからこそだろうか。

飯田と辻のギターでゆっくりと幕を開けた「unsung」。これまで轟音を鳴らしていた楽器とまったく同じもので、アコースティックのような、やわらかくあたたかい音を鳴らす。なんだかそれが魔法のようで、特別な時間のような気がした。距離は保ちながらも微かに向き合って音色を重ねる飯田と辻の姿も印象的だった。曲が終わると辻のギター・エフェクトから荘厳な空気が作り出され、少しずつ厚くなる音は、SIGUR ROSを彷彿させる残響を作り上げていく。アルバムの中でも異質な光を放つ「fiery」。シリアスで憂いのある前半から、それを激情へと変貌させる後半への畳みかけは、バンドの度量をまざまざと見せつけた。cinema staffの核の部分をむき出しにしたような赤裸々な音に、フロアもステージへ強い視線を向けた。

「君になりたい」演奏後、リラックス・ムードのMCを挟み"今日はゲストをお呼びしております! インドから来たシタール奏者、ナマステさんです、どうぞ!"という久野の掛け声で、インドの民族衣装であるドーティを纏った辻が"ナマステさん"に扮しフロアの下手側から登場! だがツアー・ファイナルにして付け髭を忘れるという失態を犯し、飯田から代用として黒いガムテープの切れ端を渡されるという一幕も(笑)。そんな辻......いや、ナマステさんを迎えてTHE YELLOW MONKEYの「LOVE LOVE SHOW」と、エレクトリック・シタールを用いた楽曲「sitar of bizarre」を披露。いつもは硬派な三島もキュートな表情をほころばせるなど、余興的なパフォーマンスでも大いに会場を沸かせた。

その後辻がステージに戻り、爆発的なテンションで「チェンジアップ」「ニトロ」と前のめりで攻め込み、途中三島がこう語った。"cinema staffは、世界を救うとか大それたことを言えるバンドじゃないと思ってます。でも皆さんの前ではスーパーマンでありたい。皆さんの足を進める役割になりたいと、いま切に思ってバンドをやれています。新しいアルバムにはそんな気持ちがこもっています""明日皆さんがやる気を持って進めるように、魂を全部ここに置いて帰ります"――その言葉で会場全体がひとつに結託した。ハードに突き進む「great escape」「西南西の虹」、軽快なサンバ調のリズムが祝祭感を生む「tokyo surf」、掛け声やフロアのクラップが現在の多幸感あるモードを象徴する「theme of us」が見せた色鮮やかな情景は、バンドが完全に外を向き、我々リスナーと共に未来を切り開いていこうという強い覚悟が作り出したもののように思えた。内に湧き上がる感情を強いメッセージに落とし込んだ『望郷』という大作。それを逆ベクトルから追い抜いた彼らは、次、我々と共にどのような場所へ向かおうとしているのだろうか。現在のcinema staffには"この先"を期待せずにはいられないのだ。"20歳のときに作った曲を全力でやります"とダブル・アンコールで演奏された「GATE」の、過去の表現を2014年へ更新していることを証明する、堂々たる、そして切々としたエモーショナルな音像――。そこには確かに、更なる栄光へ突き進む闘志が燃えさかっていた。

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