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INTERVIEW

Japanese

cinema staff

2021年07月号掲載

cinema staff

メンバー:辻 友貴(Gt) 飯田 瑞規(Vo/Gt) 三島 想平(Ba) 久野 洋平(Dr)

インタビュアー:秦 理絵

予想だにせず訪れたコロナ禍の逆境をバンドの未来のための充電期間として捉えることで、cinema staffは大きくパワーアップした。6月2日に発表された久々の新作『白夜/極夜 E.P.』を聴けば、それが一発でわかるはずだ。プロデューサーにアルカラのサポートで知られる竹内亮太郎(ex-the storefront)を迎え、より丁寧で緻密な録音にこだわったことで、シネマ(cinema staff)らしいドラマチックなアレンジがいっそう美しく際立つ。完全な新曲となる「極夜」のほかは、2019年にアニメ"進撃の巨人"エンディング曲に起用された「Name of Love」の制作タームで作っていたデモを完成させた「白夜」、バンド初期にライヴで演奏していた「DAWN」をソリッドにリアレンジした「NEWDAWN」を収録。バンドの過去を見つめ直し、次の一歩を踏み出すためのエネルギーを十分に蓄えたcinema staffに、今作に至るまでの想いを訊いた。

-今は約1年ぶりの全国ツアー("cinema staff TOUR 2021 NEWDAWN/NEWBORN")を開催中ですね。

飯田:2019年のベスト・アルバム(『BEST OF THE SUPER CINEMA 2008-2011/2012-2019』)のツアー("BEST OF THE SUPER CINEMA JAPAN TOUR")以降やってなかったですからね。去年はパワーアップするにはちょうどいいっていうことで、中音(※ステージ上でモニターやアンプから出力される演者が聴く音)を良くするとか、楽器の出音やバランスを改めてイチから考え直したんです。それがギリギリ間に合ったというか。すごく納得のいくライヴができて。ツアー初日にしては、初めてこんなにうまくいったなぁと思ってます。

-中音を考え直すというのは、どういうことですか?

三島:単純に音を良くするっていうことですよね。

飯田:歌も演奏も中の音が連動するので。4人の中の演奏がちゃんとまとまっていれば、お客さんのところにも最高のものが送れる。それを見直すということですね。今回はゲネプロも何回もやらせてもらったんですよ。PAさんを呼んで、意志疎通をとりながら。

-ゲネプロって本番さながらのリハーサルみたいなもので。普通はひと通りやったら終わりですよね。

飯田:そうですね、いつもはツアー前に1回なんですけど。いいタイミングだから。合計3回ぐらいやったんですよ。そこでチームとしてだいぶ話し合ったんです。

辻:ギターのメンテナンスをしてもらっても、昔だったらそこまで違いがわからなかったものが、今は"良くなった"っていうのが実感できるんですよね。それが演奏にも出てるなっていうのは感じます。

-たしかに、ツアー2本目の恵比寿LIQUIDROOM公演を見させてもらったときに、何かが大きく違うというよりも、"なんかかっこ良くなった"ってぼんやり思ったんです。それって、もしかしたら今話してくれた変化なのかもしれないですね。

飯田:そう思ってもらえたら十分です。全部が連動してるので。音が良くなったことで、僕らも"いける"って自信になって演奏にも表れてくる。

三島:今できることが何かって考えた結果ですよね。コロナ禍で休んでることで"マイナスになった感"を微塵も見せたくなかったんですよ。

久野:バンドを始めてからひたすらライヴとレコーディングを繰り返してきたから、今思うとゆっくり自分たちを俯瞰する時間がなかったんです。でも、1年間何もしない時間にいろいろ考え直したのがいい方向に働いてるのは感じましたね。

-飯田さんは、MCで"前より楽しい"って言ってましたね。

飯田:そうですね。2019年はベスト盤のツアーで楽しめてたんですけど。そのちょっと前には喉を潰してしまったりもして。お客さんの前でミスはできない、ちゃんとした演奏を届けないと、みたいなことばっかりに固執して、純粋に楽しめてなかったのかもしれないなって今は思うんです。でも、1年間ぐらい休んで、改めてなんのためにバンドをやってたっけ? とか、自分たちが楽しんでる姿はお客さんにも伝わるよねとか、そういうバンドの原点にあったものを思い返す期間になったんですよ。

-本来、バンドって楽しむためにやってたはずだよねって。

飯田:そうです。絶対そうですよね。だから今回はあんまり緊張感のあるライヴをしたくなかったんですよ。みんなが楽しめることを優先にしたかった。声を出せないぶん、気持ちだけでも前向きになれるライヴにしたいなと思ってたので。

-少し話を遡ると、最初に世の中がこんな状況になったときは、4人で"これからどうしていく?"っていうような話し合いをしたんですか?

三島:結構話し合いましたね。

飯田:(2020年の)3月28日の人見記念講堂("two strike to(2) night ~覚醒の三茶編~")がやれるかどうかっていうのが始まりで。久野からの提案で、「3.28」っていう曲のレコーディングの様子を、13時間ぐらいかけて全部配信するっていうのをやったんです。それからですね。

久野:本当に直前でライヴが飛んだから、当日何かできないかっていうところを考えて。当時、無観客ライヴっていう選択をする人が多かったと思うんですけど、それがあんまりしっくりこなかったんです。他に何かないかなって絞り出した感じですね。

-すぐにメンバーも賛成したんですか?

飯田:最初"マジか"と思った。

三島:半々でしたよ。実際、1週間で曲を書かないといけないし。

久野:レコーディングって人によっては見せたくない部分もあったりすると思うんですよ。一発で全員OKテイクが出るわけじゃないから、失敗も見せなきゃいけない。だから、嫌な人も出るだろうなとは思ってたんです。

-振り返ってみて、やってみて良かったと思いますか?

三島:思いましたね。

飯田:こういうのをできるバンドっていないと思うんですよ。

久野:もっと真似されるかと思ったけど、誰も真似してないですよね。

辻:みんな嫌だって言うよね。

久野:誰がっていうわけじゃないけど、今はレコーディングの技術も進んでるから修正できちゃうんですよ。でも、僕らは見せられないものはないですからね。そこは自信としてはありました。やましいことないですよって(笑)。

三島:個人的には編集とかは嫌だったな。後ろから編集してるところを撮られてるわけですよ。これ見せるの? みたいな。すげぇなって思ってたなぁ。

-(笑)リスナーの立場からすると、滅多に見られるものじゃないし、特にシネマみたいなガチのバンドだからこそ、曲作りを見られるのは興味がありますけどね。

三島:いろいろな人に褒めてもらいました。"サボってないね"って。

久野:サブスクとかで気軽に聴いてるけど、これを作るのにどれぐらい時間がかかってて、どういう工程でやってるかってわからないじゃないですか。それを押しつけがましくなく見せてもいいんじゃないかなっていうのはあったんです。"大変なんだよ"って口で言うのはかっこ悪いですけど、ちゃんとエンタメとして見せたいなと。

-で、それ以降、2020年のシネマは自分たちで企画する配信ライヴの類は一切やってなかったですよね。アルカラとのツーマン("A.S.O.B.i Acoustic MODE")が例外だったぐらいで。

三島:やってないですね。

飯田:ライヴに出たのも"RUSH BALL 2020"ぐらいですから。アルカラとの共同企画はやりましたが、無観客且つアコースティック形態のライヴだったので。

三島:2020年度はその2本しか出てないです。

-周りには配信ライヴをやってるバンドも多かったと思いますけど、シネマのスタンスとしてはちょっと違うな、という感じだったんですか?

飯田:いつまでコロナ禍が続くかわからないし、慌てちゃダメそうだなっていうのが感覚的にあったと思うんですよね。バンドの雰囲気的に。

久野:僕は相互作用がないのが嫌だったんですよ。お客さんのリアクションによる影響を受けないライヴというのがあんまり......それってライヴなの? って疑問があって。それはライヴ映像を流してるだけなんじゃないの? って感じちゃう。一方的に流すんだったら、録画して、音のバランスをちゃんと整えて、カットを決めて、その形でしかできない演出にしたほうが観てる側は面白いと思うんですよね。

-作品として仕上げる。

久野:うん、自分が納得できなかったんです。自分がお客さんだったら観ないなって。

-三島さんはどう考えてましたか? ライヴについて。

三島:最初はやりたかったですよ。でもそれは自分のフラストレーションの問題だったんですよね。単純にライヴをやりたいだけっていう。

-辻さんは?

辻:僕はやりたくなかったです。お客さんがいるときのライヴよりも絶対に良くないっていうのがわかってたので。そのなかでライヴをするのはつらいなと思って。

久野:一番良さが消えるのが辻ですもんね。

-普段あれだけ激しくセンターで演奏してるわけですから。

久野:バンドとして辻の良さが消えるのは良くないなっていうのはありましたよね。

-11月に「TOKYO DISCORDER」が配信リリースされましたけど、これはどういう想いで曲作りに取り組んでいたんですか?

久野:確か夏ぐらいに三島が言い出したんですよ。

三島:"制作をやらないと死ぬな"っていう感じだったんですよね。昨年5~6月ぐらいは結構メンタルが良くなくて。就職情報誌とか読んでたぐらいですから(笑)。

-え、バンドをやめることを考えたんですか?

三島:いや、別にやめるとかではないんですけど、続け方を考えていかなきゃいけないと。1曲作っておかないと気持ちのやり場がないなっていう感じで。

-「TOKYO DISCORDER」が完成したことで、少し気持ちは上向きになったんですか?

三島:あんまりでしたね......。

久野:この状況について整理できてなかったけど、とりあえず何かをしたっていう感じで。

三島:みんなモチベーションがあんまりだったよね。

久野:そもそもスタジオに集まるのも良くないっていう雰囲気だったから。レコーディングまでにスタジオに入ったっけ?

三島:1回だけ入ったのかな。

久野:ほぼそれぞれで練習して。本当に初見ぐらいで合わせてレコーディングをしてみたいな感じだったので、ちょっと今までとは違いましたね。