Japanese
cinema staff
2025年05月号掲載
Member:飯田 瑞規(Vo/Gt) 辻 友貴(Gt) 三島 想平(Ba) 久野 洋平(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
6月8日に、自身3度目となる日比谷公園大音楽堂でのワンマン・ライヴ"cinema staff presents two strike to(2) night - 明鏡止水の日比谷編-"を開催するcinema staff。今回は、今年秋にはこの日比谷野音(日比谷公園大音楽堂)が建て替え、再整備の工事に入るためしばし使用できなくなることもあり、昭和の面影を残し、数々の伝説を生んだこの野音での貴重な最後のステージとなる。その舞台に、明鏡止水――清らかで澄み切った思いで立つという4人。彼等の真骨頂を見せるライヴと、そこに至る上で培ってきた自信とバンドの強度とを、メンバーに語らってもらった。
-まずは、4月12日、13日に主催フェス"OOPARTS 2025"を終えたところですが、今年の感触はどうでしたか。また回を重ねてきて実感すること等はありますか。
飯田:2013年にスタートして今回が11回目だったんですけど、今回は昨年よりもキャパを何百人か上げて、さらに即ソールド・アウトできたんです。フェスにお客さんが付いてくれたし、いろんなお店の人が関わってくれたりマルシェにも60店舗くらい出店してもらえたりと、フェスとして大きくなってきたかなと思いますね。
-フェスとして大きくなってきたなか、また大きくしていく上での意識の変化であるとか、芽生えてきた思いというのはありますか。
三島:そんなに大きく変わってはないと思うんですけど、思い描いていたことができるようになってきた感じですかね。今の会場、岐阜市文化センターに落ち着いて5年目なんですけど、今の会場規模でできる雰囲気のベスト、"こういう感じかな"っていうイメージの一番いいところに来れた感覚があるので、"じゃあ、ここからどうしようか"という新たなフェーズ、次の発展の段階にまた取り掛かっていくというところですね。
飯田:さらに攻めの一手ができるなという。ありがたいことに協賛とかも今年から増えていて。大きくはなりつつも、メンバーの手が関わってるものではありたいですね。
三島:自分たちが管理できる範囲でというかね。今は完全にDIYという感じではないんですけど、DIYスピリットは生きてると思うんです。その芯はブレないものにはなってるかなと考えてます。
-このフェスの熱も冷めないなかで5月にはライヴ、イベント出演があり、6月8日にはcinema staffとして3度目となる日比谷野音でのワンマン"cinema staff presents two strike to(2) night - 明鏡止水の日比谷編-"開催と、ノンストップで突き進んでいる感じですね。
三島:合間には制作もしてますしね。
-それは楽しみです。今cinema staffとしては、ライヴはコンスタントに行っていますが、例えば年1でアルバムを出してツアーをして、また作品を出してというリリース・ペースではないですよね。どういう活動の仕方、方針になっているんですか。
久野:昔は年に1枚アルバムを出すとか、他からの要因もあってペースが決まっていたり、なんとなくそうしないと忘れられるんじゃないかみたいな恐怖もあったと思うんです。ただコロナ禍があって、そういうのがあまりなくなったというか、地に足をつけた活動をして、ありがたいことに気にしてくれる方もたくさんいるので、自分たちのペースが掴めるようになったのかなと思いますね。
三島:だから、"しんどかったら無理して制作する必要ないか"みたいな感じにもなって。
久野:ライヴも、誘われるのに出ていたらずっとある状況で(笑)。自然とそういうペースになってるという感じなんです。
三島:全くライヴに誘われなかったら、きっと何かやると思うんですけどね。ありがたいことにたくさんお誘いがあるので。
-そこは、今まで積み重ねてきた活動があるからこそ続いてるオファーですね。
三島:20代のときの積立てじゃないですけど、コロナ前までがむしゃらにやってきたことが報われている感じはしますね、今は。
-制作する曲、今出したい曲ということでソングライターとしての心境の変化や、バンドのモードの変化っていうものは何かありますか。
三島:コロナ禍の2021年に『海底より愛をこめて』というアルバムを出して、そのときに結構暗いものは出せた感じがあって。なのでソングライター的には、今はもうちょっと身の周りのことを歌ってるような曲のほうが増えたなというのはありますね。個人的には子供が生まれたこともあって、昨年くらいから、どうしてもそういうモードになるというか。歌詞としては、身近な人間関係や人付き合いとかのことと、フィクションや面白いアイディアを混ぜたものというのを描きたいモードになってますね。
-バンドとして今、芽生えていることというのはありますか。
飯田:昨年配信リリースした「バースデイズ・イヴ」、「プレキシ・ハイ」を作る前に、メンバーとスタッフも合わせて、どういうふうにやっていくかという話をしたんです。その前のEP『I SAY NO』(2023年リリース)で、これまでのcinema staffの完成形みたいな曲ができた思いがあって。その後の「バースデイズ・イヴ」や「プレキシ・ハイ」ではシーケンスも入れているんですけど、それは新しい要素を入れることも怖がらずにやろうという話の中でできていった曲で。
三島:ついに昨年からシーケンスOKになりました。
久野:"cinema staffってこういうバンドだよね"みたいなのを擦り続けるのはあまり面白くないよね、っていうのもあったんですよね。僕はもうドラムもなくていいよっていう話もしたし。曲が良かったらなんでもいいかなっていう観点で、一回固定観念を取っ払ってやったほうが僕たち自身が面白いんじゃないか、楽しめるんじゃないかという話はしました。別にライヴなんていくらでもやりようはあるので、というターンに今は入っていて。
-どういうサウンドでも、ライヴではバンド・サウンドに昇華することはできるから怖がらずやろうと。
久野:あとは、もう誤解は呼ばないかなというか。cinema staff変わっちゃったなって思われる恐れがあまりない気がする。それくらい活動も作品も重ねてきたと思うので。いつでも戻ることもできるし、挑戦することをやめないほうが優先かなっていう。
三島:結構、僕のほうが"cinema staffはこうじゃなきゃいけない"っていうところで曲を作り出すことが多かったんですよね。でも話し合いのときに、三島がやりたいオケを作ったらいいじゃんというみんなの意見もあったので、じゃあもう全開でやらせていただきますっていう。この数年、アイドルの曲を書いたり作家としての活動もあったり、DTMの勉強もしていたんですけど、以前はそこはバンドにあまり持ち込まないようにしていたんです。そこを上手く取り入れてやってみたらかっこいいものができたと思うし、あまり"こうあるべきだ"っていうのを勝手に決めているのはもったいないよなと思いましたね。そこはみんなのおかげです。
辻:もう今はどういうものをやっても結局cinema staffになるなっていうのはあるので。自由な感じでやれていると思います。
-いいモードにあるなかでの、6月8日の日比谷野音"cinema staff presents two strike to(2) night - 明鏡止水の日比谷編-"ですが、まずは今年秋から野音が整備工事のためしばらくクローズとなるので、とても貴重なタイミングでのライヴにもなります。どういうライヴにしたいと考えてますか。
三島:野音のライヴとしては3回目で、集大成的なことになると思うので、今できる最大限の演出、野音で映える演出はたくさんあると思うから、そこをチーム総動員でやろうと考えてますね。チームによる総合芸術にしたいなと思ってます。
-これまでの野音のタイトルが、2017年の初回が"two strike to(2) night〜万感の日比谷編〜"、2022年の2回目が"two strike to(2) night~因縁の日比谷編~"、そして今回が"明鏡止水(cinema staff presents two strike to(2) night - 明鏡止水の日比谷編-)"。集大成的なことになるということですが、タイトルだけで見てもドラマを感じさせますね。
三島:そうですね(笑)。タイトルは楽しんで付けてるんですけど、野音は憧れだったし、目指していたところでもあったので、最初は本当に"万感"というか。この"two strike to(2)"のライヴ・シリーズは"○○の○○編"みたいな名前でやっていて、僕等が好きなロボット・アニメのサブタイトルみたいなタイトルにしたいということで厨二病くさいものにしてるんですけど。それでまずは"万感"だろうと。2回目は5年ぶりだったし、コロナ禍でもあったので、メッセージ的には思いを昇華するじゃないですけど、そういう意味で"因縁"にして。
飯田:因縁と言っても、前回に悔しさがあったとかやり直すとか、マイナスなイメージでは全くなくて。
三島:そう。縁という意味合いというか、因果があってという感じで。今回の"明鏡止水"は、3度目ともなるとどんと構えてやろうぜという。
飯田:そうだね。
三島:ただやるというよりは、もう1段階上の表現をというか。パフォーマンスが落ち着いてるという意味ではなくて。大人の余裕じゃないですけど、仕込んでいたことをちゃんと出せるライヴに、というのはありますね。
-ちなみに最初の野音でのライヴのことって覚えてますか。
久野:野音ってやっぱりバンドを始める前から、いろんなバンドのライヴ映像とかで何度も観ているし、野音のライヴ映像ってステージから客席の画角も多いイメージなんですけど、実際ステージに立って"あ、本物だ"っていう感じで。本当にこうやって見えるんだって、ちょっと他人事っぽく感じたりもしましたね。
辻:雨が降ってたんですよね。そのときは"雨やだな"って、せっかくだったら晴れたなかでやりたかったなと思いながらやっていた記憶はありますね。
三島:あそこ、ステージがめっちゃ滑るんですよ。雨で滑らない対策みたいなこともしたし、エフェクターボードが雨ざらしだしっていうのでいろんな対応に追われた感覚はめっちゃありますね。おっかなびっくりやってました。
飯田:結果スタッフが1人コケてますしね。
三島:テック・チームの人がね。
久野:それもライヴDVD(2018年リリースの『two strike to(2) night~万感の日比谷編~ 2017.10.14 日比谷野外大音楽堂』)に収録されているという(笑)。
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