Japanese
cinema staff presents「シネマのキネマ」
Skream! マガジン 2017年01月号掲載
2016.11.30 @東京キネマ倶楽部
Writer 沖 さやこ
フェスやサーキット・イベントは観客それぞれが自由に自分の観たいアクトを自分のペースで楽しめる。料理で言うとビュッフェに近い。それと比較すると、対バンのイベントは出演者もタイム・スケジュールも決まっていて、観客はそれを体感する。料理で言うシェフのおまかせコースみたいなものだ。もしかしたらそのおまかせコースには自分が普段好き好んで食べないものも入っているかもしれない。だけどたまたま食べてみたらおいしかったり、それが好物に変わったりすることもなきにしもあらず。自分以外の人間の価値観の中に飛び込んでみると、自分では得られない刺激は大きい。
この"シネマのキネマ"というイベントもそうだ。cinema staffはデビュー時から先輩バンドなど尊敬する存在との競演が多かった。だが少しずつ若手バンドとの競演の機会を増やし、新しい刺激や交友関係を手にしてきた。一昨年の『blueprint』リリース・ツアー以降、彼らはフレッシュな試みを続けており、インディーズ・デビューから8年経ったいま、cinema staffに影響を受けたと話す若手バンドも少なくない。いつの時代も才能のあるバンドは絶えず生まれてくるもの。現在のメンバーが揃い10年、今年29歳になる彼らが20代前半のバンドを3組招いて自主企画を打つというのはとても意味深い。
トップバッターはIvy to Fraudulent Game。1曲目「青写真」からすべてを突き放すようでいて、全部を呑み込もうとするような威勢のいいサウンドスケープで圧倒する。獰猛と言ってしまうには憂いがあり、全員がそれぞれの色と音をぶつけ合う「アイドル」の殺気立った空気感は、インディーズ・デビュー直後の凛として時雨を彷彿とさせた。冷淡さと情熱を同居させた攻めの姿勢に、たちまち引きつけられる。特にフロントマン 寺口宣明(Gt/Vo)の存在感は大きく、ドラムスの福島由也が制作した楽曲を自分のものとしてあれだけ情熱的に歌えるのは稀有な才能であり、強みだ。ミディアム・ナンバー「傾き者」はシンプルなフレージングから4人それぞれの感情がはみ出していく情景が、闇から光を掴もうとする人間のもがきのようで美しかった。「劣等」ではとにかく楽しそうに無邪気に音を掻き鳴らすなど、4人は自分たちの気持ちのままにライヴを運ぶ。ラスト「青二才」前に寺口が"自分たちがかっこいいと思うことしかしない。絶対に負けません"と言っていたが、その言葉のとおり、彼らがさらに多くのリスナーにカウンターを食らわす日も遠くないと思わせるアクトだった。
2番手はcinema staffのレーベルメイトであるHOWL BE QUIET。「From Birdcage」で柔らかく軽やかに幕を開けると、「ライブオアライブ」へ。一歩一歩踏みしめるような堂々としたサウンドスケープが頼もしい。自分たちの音と観客の想いでもって、荒野に自分たちの居場所を作り上げていくようだ。フロントマンの竹縄航太(Vo/Gt/Pf)が"(観客それぞれが)誰を観に来たかなんて関係ないです。俺らは俺らのロックをしに来ました"と告げ「Higher Climber」。竹縄はハンドマイクや、シンセを弾きながらなどの形で気持ちを遠くへ飛ばすように伸びやかに歌う。音源とは異なるアレンジも手伝ってかライヴならではのグルーヴが炸裂していた。「レジスタンス」は楽曲が順調に育っていることにも感心したが、懸命に演奏するメンバーの姿も印象的だった。「MONSTER WORLD」はパンク・バンドばりの熱量で駆け抜けると、最後に竹縄は「サネカズラ」に込めた想いを語る。彼に心を重ねるように楽器隊も音を鳴らし、フロアも静かに熱い視線を向けてそれを見守った。彼らの純粋で誠実な音は、人の心の傷をもあたためる力がある。だからこそ彼らのライヴには切なさだけでなく幸せを感じるのかもしれない。
Halo at 四畳半は「春が終わる前に」のイントロからキネマ倶楽部を青空色に染めるような音を鳴らす。「アメイジア」ではクラップやシンガロングが起こり、フロアも彼らを歓迎しているようだ。歌詞に"キネマ倶楽部"を入れ込むなど抜かりなく、安定感のある演奏でまっすぐ聴き手と向き合っていく。MCではベースの白井將人が"この4人で初めて観に行ったのがcinema staffのワンマンで。遠征の車の中でDVDを見ていて、cinema staff育ちなんです"と話し、凛々しい表情で"結成してから4年のバンド活動が見えるライヴがしたいし、cinema staffを観て育ったバンドがこんなにかっこいいんだということを先輩に見せたい"と語った。「箒星について」は光の中を泳ぐような眩しいギター・ロック。彼らの音楽にはとにかく光が満ちている。現実にはこんなに美しい世界はないかもしれない。だが音楽ならばそんな世界を作り上げることができる。彼らの理想であたり一面を塗りたくるようだった。「モールス」の前にはフロントマンの渡井翔汰(Vo/Gt)が"夢というものは叶えるべきもので、憧れというものは超えるべきものだと思っています"と熱い気持ちを素直に言葉にし、その想いを実直な演奏で伝えた。
若手バンド3組の熱演のあと登場したcinema staffはさすが先輩の貫禄か。ギター・ヴォーカル 飯田瑞規の鳴らすギターの音色の上に辻 友貴が煌びやかな音色のギターを重ね、徐々に音像を広げていく「望郷」でライヴはスタート。地に足のついた余裕のある音は、楽器隊のフレーズの粒立ちがいい。それぞれの表現方法や辿る道は違えども、全員が同じゴールを見ているような個性の立ち方と一体感だ。「エゴ」は三島想平のベースのリズムだけでなく弦を押さえる指の動きに目を見張る。彼のベースは支えるだけではなく楽曲をドライヴする力を持っていることを視覚でも再確認した。メイン・コンポーザーだからこそ、ここまで大胆に楽曲を掘り起こすことができるのかもしれない。
エモーショナルな部分だけではなく、クールな印象も与えるところはバンドの成熟を感じさせた。聴き慣れた「great escape」も出音の肌触りが以前までと違う。いまのcinema staffは感情のままにがむしゃらに突き進むだけではなく、その感情を抱えながら思いのままに舞うことができるのだ。おそらくそれは色気と言い換えられる。
「返して」はcinema staffの必殺技とも言うべきアプローチの繊細でエッジーな楽曲だが、飯田の弾くフレーズがギター・ヴォーカルのそれではないというくらい複雑で、「ビハインド」は久野洋平のドラムさばきと4人の呼吸の揃い具合に感心する。彼らの身体の動きも揃う瞬間が多々あった。曲終わりに間髪いれず刻まれたドラムのリズムで、フロアは次曲が「theme of us」であることを察知する。この会場の愛に溢れた空気感も、バンドのグルーヴも、cinema staffがバンド活動の中で培ってきたものだ。辻が最前列の柵からステージに跳んで戻るなど、彼のステージ上での暴れっぷりも大人しくなるどころか加速するばかり。4人が10年という月日で作り続けてきたcinema staffという生き物は、経験を重ねるごとに水を得た魚のような好調ぶりを見せる。ポップな曲をここまでロックにできるバンドはなかなかいないし、ロックな曲をここまでポップに聴かせるバンドもなかなかいない。本編ラストの「希望の残骸」は感情のままに突き抜けていく4人の姿がただただ眩しかった。
アンコールでは三島が、今日をきっかけに自分たちのやってきたことがバンドやリスナーに伝わっていることをちゃんと感じたと話す。"続けるものだなと思いました"と語った彼は、"僕らは先輩バンドについていったんですけど、こういう(後輩に追われるという)立場でも堂々といい音源を作って、トップランナーと胸を張って言い続けられるバンドでありたい"と落ち着いた口調で語った。最後に演奏された想像上の海を綴った「海について」も、いまは想像だけではなく理想や未来、現在、過去、様々なものが詰まっている。彼らは"まだまだ終わる気はない"という言葉を、音と態度でも堂々と示した。
[Setlist]
Ivy to Fraudulent Game
1. 青写真
2. アイドル
3. 傾き者
4. 劣等
5. 青二才
HOWL BE QUIET
1. From Birdcage
2. ライブオアライブ
3. Higher Climber
4. レジスタンス
5. MONSTER WORLD
6. サネカズラ
Halo at 四畳半
1. 春が終わる前に
2. アメイジア
3. 箒星について
4. ペイパームーン
5. モールス
cinema staff
1. 望郷
2. エゴ
3. great escape
4. 返して
5. ビハインド
6. theme of us
7. 希望の残骸
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