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LIVE REPORT

Japanese

HOWL BE QUIET

Skream! マガジン 2020年10月号掲載

2020.09.15 @SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

Writer 岡部 瑞希 Photo by nishinaga “saicho” isao

サネカズラという花を知っているだろうか。"再会"という花言葉を持つ9月15日の誕生花であり、HOWL BE QUIETの2016年リリースの楽曲のタイトルにもなった赤い実の生る花だ。2020年9月15日、いわばサネカズラの日に初めての無観客生配信ライヴを行うこととなったHOWL BE QUIET。その運命的な導きと、久しく会うことが叶わずにいるリスナーとの"再会"を願って、本公演は"sanekazura"と題して行われた。

SHIBUYA PLEASURE PLEASUREというボードが映し出され、映像が会場へと続くエントランス・ホールを抜けていく。ホール内に足を踏み入れ、番号を確認しながら自分の座席を探す視線の動きを再現した、メンバーこだわりのカメラワークに、ライヴ前の緊張感が思い起こされた。最前列に腰を下ろし、間近に迫ったステージが見上げるように映ると、座席シートに染みついたホール特有の匂いまで鼻の奥で蘇ってきそうだ。

着席からほどなくしてSEとともにメンバーが登場。おもむろにガツンとしたピアノの音色からセッションが幕を開け、竹縄航太(Vo/Gt/Pf)の"HOWL BE QUIET、「sanekazura」始めます"という一声を合図に「Daily Darling」で口火を切った。グルーヴィなベース・ラインに、軽妙に踊るギター・フレーズ。見るからに楽しそうなリズム隊はもちろん、ポーカーフェイスな黒木健志(Gt)も口元を見れば出だしから気分は上々といったところか。竹縄が"よかったら画面の向こうで歌ってください"と添えて始まった「ギブアンドテイク」では、いつもならオーディエンスの声が響く"Hurray Hurray"のフレーズを、今回はファンクラブ内で事前に集め、その声たちと共に、メンバーが懸命に声を張っている姿にグッとくる。

自身初のホール公演ということもあり、普段と趣向を変えカバー曲も披露。竹縄がTwitterでリクエストを募った中から選曲したという、斉藤和義の言わずと知れた名曲「歌うたいのバラッド」を切々と歌い上げる。テンポを揺らしながら、今にも感情が決壊しそうな歌いっぷりが彼らしい。カバーにおいて、"誰々が歌うと、なんでもその人の曲に聴こえる"というのは使い古された文句だが、彼もまさに、どんな楽曲も"自分の歌"として染め上げてしまえるシンガーだと改めて感じた。

アコースティック・アレンジで届けた「孤独の発明」では、ひとり客席に移動した竹縄が、自身の世界に没頭し感情を露わにして歌う。嫉妬心の強い男の偏愛っぷりを赤裸々に歌った歌詞が若い世代にハマり、TikTokでの再生回数が1,800万回を突破し人気が再燃している「ラブフェチ」では、歌詞のメッセージとは裏腹に、鬱屈とした気持ちを吹き飛ばしてしまうポップネスなメロディが広がっていく。さらに"こんなときだからこそ、こんな歌を!"と飛び込んだ「レジスタンス」では、速いBPMにかき立てられ、メロディアスなギター・フレーズに導かれるよう幸福感が溢れ、ラスト・ナンバーはやはり「サネカズラ」。もとは竹縄が最愛の人との別れに対して絶望の気持ちで作った曲だが、"時間が経って、こうやって歌えて、ライヴができて、観てくださるみんながいて、嬉しいという気持ちでアップデートされるような気がします"と、今だからこそ抱くことのできたポジティヴな感情も織り交ぜて、丁寧に歌い上げ本編を締めくくった。

そしてアンコールでは、竹縄による定期配信企画から生まれた新曲「コーヒーの歌」(仮タイトル)も披露。穏やかでムーディな空気で和ませ、"じゃあ最後は無礼講で!"と一気にアクセルを踏み込みライヴ定番曲「MONSTER WORLD」で総仕上げ。久しぶりに"再会"できたライヴという空間に、4人の喜びが溢れる笑顔いっぱいのステージングで大団円を迎えた。

この日、時に目を閉じ、また時には客席に腰を下ろし、どこに向かってでもなく、他でもない自分自身に向き合い気持ちを吐露するように歌っていた竹縄の姿が印象的だった。そもそもHOWL BE QUIETとは、竹縄のパーソナルな想いを強く楽曲に投影させているバンドだ。その想いの震えを肌で感じたい寂しさはあるけれど、ある意味今日はいつもより、彼の心を近くで覗けたような気がした。


[Setlist]
1. Daily Darling
2. Dousite
3. ギブアンドテイク
4. ファーストレディー
5. クローバー
6. 名脇役
7. 竹縄航太 ピアノ弾き語り
 (歌うたいのバラッド/斉藤和義)
8. 孤独の発明(Acoustic ver.)
9. GOOD BYE
10. ラブフェチ
11. にたものどうし
12. レジスタンス
13. サネカズラ
En1. 新曲(仮タイトル:コーヒーの歌)
En2. MONSTER WORLD

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