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INTERVIEW

Japanese

HOWL BE QUIET

2016年12月号掲載

HOWL BE QUIET

Member:竹縄 航太(Vo/Gt/Pf)

Interviewer:沖 さやこ

2016年春にメジャー・デビューを果たしたHOWL BE QUIETがリリースするメジャー3rdシングル『サネカズラ』。彼らにとってメジャーで初めてのバラードを表題にした作品である。TVアニメ"DAYS"2期のオープニング・テーマである「Higher Climber」をカップリングという立ち位置にしてまでこの曲を表題にした理由は、感覚的なものが大きかったという。収録曲3曲はすべて、フロントマンである竹縄航太の人間性が色濃く出たもの。今回のインタビューは、ソングライターでありひとりの人間でもある彼のパーソナリティに焦点を当てた。

-メジャー3rdシングル『サネカズラ』は、ソングライティングに竹縄さんの人間性が色濃く出た3曲ではないでしょうか。

まだレコーディングを終えたばっかりだし、これが今作で初めてのインタビューなので、まだ落ち着いて客観視はできていないんですけど......いい意味でわがままに自分のことを歌えた、非常に個人的な3曲になったなという気はしています。メジャー1stシングルとして『MONSTER WORLD』(2016年3月リリース)を出して、初めてTVアニメ"DAYS"のオープニング主題歌をやらせていただいた2ndシングル『Wake We Up』(2016年8月リリース)を出して、お客さんの反応も含めて改めて"いま音楽家として自分が本当に歌いたいことは何だろう?"と考えたとき――すごく自分を出したいターンだったんですよね。"自分のことを素直に歌いたい"というのがここ最近の感覚ではあって。それがこの『サネカズラ』というシングルに投影されたんだろうなと。

-メジャー3rdシングルというタイミングで、バラードを表題に持ってきた理由とは。

「Higher Climber」(初回特殊パッケージ仕様のTrack.2)が"DAYS"のオープニング・テーマになっているので、この曲をシングルの表題に......というのが一般的だとは思うんですけど、メンバー全員が感覚的に"これが次のシングルのリード曲ではないよね"と思っていて。自分たちでも不思議で、言葉にできない感覚なんですけど、みんなからも自分からも自然と"「Higher Climber」じゃなくてあの曲じゃない?"と上がってきたのが「サネカズラ」(初回特殊パッケージ仕様のTrack.1)だったんですよね。

-「サネカズラ」はいつごろ作った曲ですか?

去年の頭ですね。どこまで話したらいいかな......。話しすぎるとかまってちゃんみたいになっちゃうから(笑)。

-ははは(笑)。竹縄さんが話してもいい範囲で話してくだされば、こちらは構いませんよ。

簡単に言うと、当時好きで付き合っていた人とお別れしなければいけない、というときに書いた曲なんですよ。当時はなぜその曲を書いたのかわからなかったんですけど、いま思えば単純に"ありがとう"の気持ちや、こういう形で自分という人間を覚えていてもらいたいとか......そういう想いを書いたつもりだったと思うんです。でも、心のどこかで後悔させたかったんだと思うんですよね。

-後悔させたかった、ですか。

その人と別れた原因がバンドだったんです。バンドは普通の仕事に比べると、遠征で何日も家を空けたり、定時もないし休みは不定期だし、特殊なスケジュールじゃないですか。そういういろいろなこと全部含めて、折り合いがつかなくなってしまって。バンドや音楽が原因でそういう結果になってしまったことに対して、音楽で復讐したかったんだと思うんですよね。音楽で自分の愛を表現してやろうと思ったし、後悔させてやろうと思ったんです。この曲を聴いて"私は失ってはいけない人を失ったんだな"と思わせたかったし、絶対傷を残してやりたいなと思って作ったのが「サネカズラ」で。......だからとびっきり美しく書いてやろうと思ったんですよね。美しく描くことが一番の皮肉だった。

2016年9月の恵比寿LIQUIDROOMのワンマン・ライヴで披露したときは、歌詞が違いましたよね。シングル用に書き直したものの方が、より素の竹縄さんということ?

あ、そうなんですよ。一緒に住んでいて"別れよう"と言われて、四日四晩泣いたわけですよ。別れたくないと本当に思っていたから。でも、どこかでひっくり返らないこともわかっていたし。だったら向こうが出掛けている隙に、この家からいなくなろうと思ったんです。向こうが帰ってきたときに"あれ? 私ひとり暮らししてたっけ?"と思うくらいに錯覚させてやろうと。そのやり口も全部含めて、自分の捻くれた感じというか、女々しいなー......と思うんですけど、衝撃を残してやりたかった。

-ということは、2番の"どうすれば君のことを 傷付けられるか考えて/君の"僕"を幻にすることで 自分を遺すことにするよ"、"君とお揃いのもんは捨てておこう/僕の痕跡をなくそう/そして晴れて君の一人暮らしの部屋が出来たよ"というラインそのままだ。

そうです。2年くらい前の話なのに、覚えてることはしっかり覚えてるんですよねぇ。向こうが家を空けている7~8時間の間に、車借りて自分の荷物を出して......家の物を全部きれいに出したんです。そうすることでしか自分を正当化できなかった。クローゼットの引き出しは6段あって、3段ずつ使ってたんですけど、上の3段の俺のものだけ全部出して!

-そんなのドラマでしか見たことない(笑)!

(笑)上3段だけ空っぽで、下は今までどおり! コートとかを入れる場所も、俺のものと相手のものとぴっちり分けてたんですけど、俺のだけ取ってそのスペースだけぽっかり空く、みたいな。食器や歯ブラシとかも全部自分の物だけ捨てて、下駄箱からも俺の靴だけ抜いて――そういうことをして家を出て、最後に残ったのがキッチンのパソコンとアコギが1本。キッチンが僕の制作スペースだったんですよね。そこで最後に曲を作ったんです。

-「サネカズラ」はそのときに生まれた曲だったんですね。そのあとはどうしたんですか?空っぽになったお家に帰ってきた彼女から連絡も来たでしょう?

実家にもなんとなく帰りづらくて、友達の家や漫画喫茶を転々としてました(苦笑)。相手から連絡も来たんですけど、自分のなかで終わったことは完全に終わっちゃうんですよね。恋愛観の話をするときに、"男は名前をつけて保存で、女は上書き保存"と言ったりするじゃないですか。俺は断然上書き保存なんですよね。もちろん好きだった、愛していたという感情はあるんですけど、家を空っぽにして出ることと、「サネカズラ」を残すことが最大の復讐だったから、たぶんそれを達成したことで自分のなかで清算できちゃったのかな。

-四日四晩泣いたのに。

心にぽっかり穴が開く感じはもちろんあったんですけど、それよりも達成感の方が強くて。好きだった相手と幸せになれなかった、好きだった相手を幸せにしてあげられなかったという事象についての未練はあるんですけど、その子自身に未練があるわけじゃなくて。ドライと言われればドライなのかもしれない。後悔してほしいし、絶対に一生忘れられないようにさせたいという気持ちが強くて。でも、こんな復讐みたいなことをしつつ、心のどこかで良く思われたかったんだと思います。だからその子に宛てた曲だし、別にHOWL BE QUIETとして音源にしようとは思ってなかったんですよ。......でも、ずっとこの曲は忘れずに自分の中にあったし、時間も経ってやっとこの曲をHOWL BE QUIETとして歌うことで清算されるところもあるのかもな、とも思うんですよね。

-レコーディング直前に歌詞を書き直したのもそういう理由から?

今の自分からもちゃんと歌いたいなと思えたんですよ。オリジナルの歌はその子に宛てたものだけでいいし、後々バンドでやろうと打算的に作ったものではなかったから。でも結果としてこの曲がシングルのリードになることは嬉しいし、それを信じてくれた事務所とレーベルもすごいなと思うし。だからこそ今の自分を(その曲に)ちゃんと重ねてあげるべきだとも思ったんですよね。