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INTERVIEW

Japanese

Chapman

2020年04月号掲載

Chapman

Member:Neggy(Vo) DOI(Gt) Kido(Ba) Tee(Dr) NAKADAI(Key/Cho)

Interviewer:山口 智男

-そんな5人が集まって、自分たちらしい音楽をとりあえず作れるようになったと感じたのは、いつだったんですか?

Tee:去年、サマソニ(SUMMER SONIC)に出させてもらって、そのあとくらいから急に曲を作っているNeggyとNAKADAIらしさが出てきましたね。

NAKADAI:へぇ、そうなんだ。

Tee:それにその期間ってベース、ドラム、ギターの3人でとか、ベースとドラムのふたりでとか、めちゃめちゃ練習もしていて、その頃から感じ始めたかな。今は、どこにもない音楽をやっているという自信が結構あります。『CREDO』を聴いてもらえればわかると思うんですけど。

NAKADAI:この半年は、たしかにでかかったかな。

Neggy:前より話し合うようになりましたね。ふたりでもそうだし、みんなでもそうだし。

NAKADAI:このバンドを始めてからサマソニまでの1年は、めちゃめちゃネオ・ソウルみたいなものをやりたくて、それで最初に作ったのが、今作の4曲目の「Kind man」だったんですけど、自分らの周り、例えば友達だったり家族だったりの反応は薄かったんですよ。ポップじゃないから(苦笑)。そこでちょっとポップに行こうとか、軽快に行こうとか、迷った時期があったんですけど、サマソニを経て、やっぱり俺らにしかできない、もう少しドープなものをやりたいという話になって。ネオ・ソウルとか、ファンクとか、そういうブラック・ミュージックの色をちょっと強くしたんです。あと意識していたのは、歌詞を軽視したくないということで。歌詞はNeggyが書いているんですけど、この界隈の音楽って、歌詞がフィーチャーされることって、そんなにないような気がしていて。でも、僕らは一番大事なのは歌詞だと思っているんですよ。

Neggy:付け加えるなら、この界隈の歌の使い方が楽器的で、声自体も最近の流行で言うと、軽い感じの歌の乗せ方があるなって。

NAKADAI:ブルーな感じね。あんまり張り上げない感じの。

Neggy:ダウナーな感じと言うか。

-最初に作った「Kind man」は、ラヴ・ソングですよね。

Neggy:そうです。Chapman唯一の。

-ということは、どこかのタイミングで歌詞のテーマが変わって、「カーニバル」とか、「命脈」とか、「J.A.M」とか、そういう――

NAKADAI:ちょっと批評的な。

-Chapmanならではと言える歌詞を書くようになったわけですか?

Neggy:むしろ、「Kind man」は奇跡的にラヴ・ソングになったんですよ。

NAKADAI:もともと、僕はNeggyの歌詞が好きなんですけど、僕らも世間に思うことが多々あって、"世の中的にチル・アウトしている場合じゃない"っていつもNeggyに言いながら、ちょっとチクッとした歌詞をうまく混ぜられたらいいなって思っているんです。サウンドは聴きやすくして、みんなに聴いてもらって、でも、実は歌詞には強いメッセージや批評性、内省的なものが含まれていて、いつの間にか、それが聴いている人に入っていけばいいなっていうのは、うっすらと。

Neggy:批評しようとしているわけではないんですけどね。内省しながら、出てきた世間に対して思っていることがちょっとそういうふうになりがちってところはあるんですけど(笑)。

-Neggyさんが、どんなふうに世の中を見ているのかちょっと気になりました。

Neggy:基本的に日本人、生きづらいと思っています。音楽がそのツールになるのかわからないんですけど、自分が影響力のある人間になって、何かしら日本人が生きやすい世界を作りたいとは思っていますね。生きやすいという意味で、1個、大きく掲げているのは、大人も夢を見ていいんだぞってこと。日本人って自分たちでとらわれる必要のないことにとらわれて生きていると思うんですよ。例えば、"学生時代が一番青春だった"と言う人って多いと思うんですけど、僕自身は社会人になってからも、今一番ゴリゴリに楽しく青春してきたと、この2年間思っていますからね。

-批評的ではあるけれど、前向きなんですね。

Neggy:だからって、夢を持っている人だけを肯定したいわけじゃないんです。みんながみんな、夢を見なくてもいいんですよ。ただ、思考停止せずに何がベストなのか、自分で考えたうえで辿りついた生き方であれば、自分を肯定できるはずなんです。

-ところで、曲作りはNeggyさんとNAKADAIさんのふたりで?

Neggy:そうです。で、アレンジはほぼNAKADAIですね。

NAKADAI:だいたい、できた時点でみんなに聴かせて、スタジオで1回合わせながら微調整して、みたいな作り方ですね。みんなで合わせると、それぞれのルーツが加わって、打ち込みで作ったときとはやっぱり違ってくるんで。

Neggy:「PILLAR」に入っているギターは、即興でDOIがスタジオで考えたんですけど、NAKADAIじゃ思いつかないフレーズになっていて面白いです。

-決して声高ではないんですけど、楽器隊が主張しているところも聴きどころですね。NAKADAIさんのアレンジを、自分のものにするとき、どんなことを意識しているんですか?

Tee:僕は結構NAKADAIの好きなものを知ろうとするところがあると言うか、当然、曲を作っている人のルーツを知らないと、いい演奏はできないので、NAKADAIがイメージしているものに対して、いろいろある自分の引き出しからそれに応えると、気に入ってくれるって感じですね。

Kido:僕はデモを、自分なりに変えちゃいます。だからスタジオで合わせたときに、"いや、そこは違う"ってなります(笑)。

NAKADAI:そんな言い方はしてません。

Neggy:いや、そういう光景はよく見るよ(笑)。

Kido:そのあと、いつもTeeさんが"Kido君が考えているそのプレイを、こういうふうに変えてみたらきっとNAKADAI君も納得すると思うよ"ってアドバイスしてくれるんですよ。

Tee:アドバイスって言うか、NAKADAIが言葉にしきれていないところを補うと言うか。

NAKADAI:なんだ、そういうやり取りがあるのかよ(笑)。

Tee:で、Kidoが自分なりにもう1回、作ってきて、"いいね"ってなるという。

-DOIさんは?

DOI:曲のイメージをいかに実現するかっていうのがメインにあるんですけど、変えることが必要であれば、今あるものをぶっ壊して、よりいいものにするってこともありますね。楽曲に一番ハマるのは、どんなものなのかを考えています。ひとりの意志に対して、全員が集まると言うよりは、いろいろな考えが凝縮されて、1個のイメージになっているのが一番理想かなとは思っているんで。

-じゃあ、「J.A.M」のギター・ソロも決して目立ちたかったわけではない、と(笑)?

NAKADAI:あれは僕から頼んで、DOIに弾いてもらったんです。最近思うんですよ。音にしろ、魂にしろ、人を熱くするのは、やっぱりロックなんだなって。今まではそういう意識はまったくなかったんですけど、やっぱり大観衆の前で演奏するとなると、熱いものが必要だと思ったんです。DOIのルーツにはロックがでかいものとしてあるから、この曲でそれをぶちかましてほしくて。それと、60年代っぽい歪んだギターとオルガンの組み合わせに注目し始めて、めっちゃ掘っていた時期でもあったから、オルガンの音も入れて、DOIには歪んだギターでぶちかましてほしいというのもありました。

DOI:時間がなくてしんどかったんですけど、なんとかひねりだしました。

-『CREDO』の全6曲は、ライヴの定番曲を中心に選んでいると思うんですけど、どんな作品になったという手応えがありますか?

NAKADAI:このバンドでやろうと思っている、ファンキーな曲とネオ・ソウル。このふたつの軸をわりと表現できたかなと思ってます。

Neggy:この1年8ヶ月の葛藤が全部そのまま詰まった作品なのかな。

-その葛藤が報われる、と?

Neggy:報われるとは思っていないです。ただ、作品を出して、また別の葛藤が生まれると言うか、世の中の反応を見て、また味わったことがない葛藤に出会って、それが次の作品にまた反映されるのかな。

NAKADAI:僕らにしかできない音像だったり、曲だったりをやりたいというところでは、コード進行の観点で言えば日本人が慣れ親しんでいる進行――例えば、丸の内進行みたいなものにはしないというか。斜に構えすぎかもしれないですけど、そこはあえてやりました。聴いたことがない新しい音楽を作る一環として。

-その試みが顕著に表れた曲と言うと?

NAKADAI:「Kind man」は最初に作ったから、わりと定番のコード進行だったりだと思うんですけど、「カーニバル」とか「命脈」とかはわりと面白いものができたと思います。

Tee:この前、聴かせてもらった新曲が突然、丸の内進行だったから、どうした!? ってびっくりしたんですけど、それぐらい『CREDO』って作品は、この界隈でも珍しい曲が入っていると思います。

-そんな『CREDO』をきっかけにChapmanはこれからどんな活動をしていきたいと考えているのでしょうか? 最後に今後の目標を教えてください。

NAKADAI:外国の人が"日本の音楽って今どんな感じなの?"ってなったときにChapmanの名前が挙がるようになりたい。あと日本のライヴのお客さんって周りを気にしていると言うか、みんなで同じ動作をしがちじゃないですか。ああいうのも結構違和感があるから、僕ら自身はライヴで、"これしろ"とか"あれしろ"って言わないで、みんなが個々のグルーヴで楽しめるライヴをしたいと思っているんですよね。その輪がどんどん広がっていけばいいなと思っています。どう?

Neggy:ありきたりかもしれないけど、リリースからの1年で、渋谷のWWWをワンマンで埋められるぐらいのところには行きたいと言うか、行けるぐらい精力的に活動していきたいです。それと、来年の5月には僕らが始まったきっかけでもある"GREENROOM FESTIVAL"に出演したいですね!