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INTERVIEW

Japanese

PULPS

2020年10月号掲載

PULPS

Member:田井 彰(Vo/Gt)

Interviewer:稲垣 遥

-では、今作の話に移っていきますと、今回のミニ・アルバムはしっかりバンドの色も出しつつ、こんな表情の曲もするんだなって曲ごとに楽しませてくれるいい作品だと思います。せっかく全曲田井さんが作詞作曲を手掛けているので、曲たちに込めた思いを聞かせていただこうかなと。まず、書き溜めていた曲の中からの選曲はどういうふうにしていったんですか?

CDとしてアップテンポな曲ばっかりとかにならないように、1枚目なんで、タイトルも"the the the"っていう、"THE PULPS"みたいな自己紹介代わりのCDなんで、PULPSの魅力が全部わかるようにしました。

-1曲目「青い鳥」はニューミュージックの香りがする曲でした。柔らかいギターの音色、ドラムやベースも響きを抑えていて、田井さんの歌が際立ちます。

これもバイクに乗っているときに、"青い鳥~♪"というのが歌詞と一緒に出てきた感じなんで、このメロディに肉づけしていくとしたらドラムはミュートして落ち着いた感じで、Aメロ、Bメロは歌謡曲っぽく......って整えていきました。なるべくシンプルに、ドラムもずっと8ビートを叩いてるけど、その中に粋なフレーズを入れたりしましたね。歌い方も声を張るんじゃなくて、優しく歌ったって感じです。

-そういうドラムのフレーズなどの田井さんのパート以外も、デモの時点で細かく作っているんでしょうか?

そうですね。デモの時点で打ち込みはしてあるんです。で、こうしてほしいってドラムに言ったらだいたい求めていたものが出てくるので、"それで頼むわー"って感じですね。リード・ギターも曲によりけりですけど、送ってます。

-田井さんがギタリストやヴォーカルの視点で作ったものを、他のメンバーが結構忠実に音にしてくれる感じなんですか?

いや、特にドラムとかは、僕やとドラマーとしてのフレーズじゃないので、こういうやり方もあるんやなっていうフレーズを"これどう?"って送ってくれたりしますね。なので、僕の色っていうよりは、4人全員の音って感じになります。

-なるほど。そして、続く2曲目は「1989」。1989年は昭和から平成に変わる年でしたが、バンドにとってどういう年なんでしょう?

この曲はちょうど令和に変わるタイミングで作ったんですけど、変わる実感がなくて。新しい時代に生きてるはずやのに、全然進めてないなぁっていうので、サビの最後に"I still live in 1989"って歌詞に入れているんです。まだ俺らは平成に生きてるって感じの歌ですね。

-1989年は、みなさんはまだ生まれてないですよね。昭和から平成に変わるときもそうだったのかなぁと考えたとか、昭和の時代に憧れがあったとかではなく?

ではないですね。たまに"「1989」って言ってるから、平成元年生まれやと思ってた"って言われることはあるんですけど、そんな感じではなくて、平成の歌というので元年にしただけです。

-"飛躍しすぎたイメージ"とか、"肝心なのは そぐわないこと"とか、結構強い想いが込められていそうな歌詞も気になりました。

そうですね。平成から令和にかけてバンドも新しい世代じゃないですけど、音楽業界も流行りのジャンルが変わってくるなかで、今流行っている音楽に対しての抵抗みたいなものも、自分の中でどうしてもあるのかなっていう。今の時代に沿ってないのかもしれないですけど、"終わらない歌を信じたい"っていう歌詞は、THE BLUE HEARTSの「終わらない歌」とか、やっぱりロック・バンドの良さを信じたいっていうことで。平成と令和と、古き良きロック・バンドと流行りのバンドとをかけている感じですね。

-田井さんの思うロック・バンド像っていうのはどういうものなんでしょう?

僕も最近の曲を聴くし、好きな曲ももちろんあるんですけど、ギター、ベース、ドラムの3種類の楽器と、声の4人のバンドでできることってまぁ少ないじゃないですか。そんなたった4人で音楽を作ることって難しいと思ってるんですけど、その少ない数で人に感動を与えるっていうのがロマンなんで。今のバンドは同期や打ち込みがあって当たり前みたいなところがあるんですけど、せっかくこの4人で、幼馴染で組んだんやから、この4人のバンドっていうのにはこだわりたいなと思ってます。

-その根本にあるバンド愛は曲からも伝わりますけど、言葉で聞けて良かったです。PULPSは根源的な生楽器の良さを伝えられるバンドだと思いますし、それで言うと続く「クチナシの部屋」はアコースティック・ギターが効いていて、ぐっと和の香りもある曲ですね。

この曲は、気づく人は気づくと思うんですけど、フォーク・シンガーの吉田拓郎さんの「結婚しようよ」みたいな曲を作りたいなと考えたので、ああいう感じになっているのかなと。

-なるほど。まさに歌詞は素敵な愛の歌ですね。"タオルを買おう うーんと柔らかいのを"って一節がすごく好きです。日常のなんでもないものでふたりの関係性が表れているのが、それこそ「結婚しようよ」っぽいというか。

ありがとうございます。"クチナシの部屋"っていうタイトルなんですけど、原田知世さんの曲に「くちなしの丘」って曲があって、僕、原田知世さんが大好きで、その影響もあってか、メロディ考えてるときに"くちなしの~♪"ってところが勝手に頭に入ってきたんです。そのときにこの曲は"クチナシの〇〇"になるなって思ってました。

-クチナシは初夏の花で、白くて清純な印象から、ジューンブライドの花嫁さんのブーケにもよく使われる花なんですよね。吉田拓郎さんを意識したということですが、サウンド的にはどういうところにこだわりました?

完全にあれにしてしまうとよくわからないことになるんで、あのテイストを感じ取れるようにというのを意識して、最終的に4人の音に落とし込んでPULPSの音にしたって感じですね。

-それに対して4曲目「untitle crown」は疾走感のある曲で、さっきのフォーク・ソング調とはまたひと味違いますね。

そうですね。速い曲を作りたいっていうのがあって、とりあえずBPMの高いものをって制作しました。

-ライヴでも拳を上げて盛り上がる想像ができる曲でしたけど、ライヴを意識して曲を作ったりはしますか?

あぁー、この曲に関してはしましたね。最近遅い曲ばっかやなぁ、ライヴでスローな曲ばっかもあれやしと思って。

-ライヴは最近あまりできない状況ですけど、やっぱりバンドが大切にしてきたところですよね。

はい。なので、やっぱりバンドの活動としてライヴがなくなるっていうのはつらいですね。ライヴにお客さんが来てくれて、楽しそうにしてくれるっていうのはモチベーションに繋がってたところがあるので。

-この曲、絶対盛り上がると思いますよ。早くライヴで聴ける日を私も楽しみにしています。あと、歌詞の中で1ヶ所気になったのが、"お気に入りの王冠は/時々大きさを変える"という部分で。

これは、"お気に入りの王冠"は僕らの曲のことというか、バンドが持ってる宝物みたいな感じです。で、"大きさを変える"は、自信をなくすときもあれば、"これ絶対いけたやろ"ってときもあるというところなんですよね。それこそ、ライヴがなくてそれが最近わからないから、そういう歌詞になったんかなって今思えば感じますね。

-すごく納得しました。聴くタイミングやリスナーによっても、いろいろと当てはまることがありそうです。そして、ラストの「Flower」は、簡単な言葉になってしまいますが、本当にいい歌ですね。裏打ちのリズムって躍動感を増すのに、そこに切ないメロディが乗るのも新鮮です。

そうですね。サビの3連の感じもあんまり聴いたことがないものだと思うので、気に入っています。

-どういうふうなところからできていった曲なんですか?

この曲は......中学生くらいからずっと曲を作ってるんで、新しく曲を作るのって結構しんどいんですよ。この曲のときは、ごはん食べたり風呂入ったりするときも考えてたんですけど、全然いいのができなくて結構追い込まれてて、自分の才能ここで終わりなんかなって思いながら眠る瞬間に、サビがバッと思い浮かんだんです。急いで携帯のボイス・レコーダーにつぶやいてそのまま寝たんですけど。

-生みの苦しみがあった曲なんですね。でも、そのサビの中で、高音を歌い上げるんじゃなくて、ファルセットになるところも胸にきゅっとくる感じを手伝っているように感じます。

ありがとうございます。この曲はアルバムの中で全員苦労した曲なんです。デモの時点でギターのフレーズとかをあんまり入れてなかったんですよ。この(デモ作りのときの)苦しみを他の3人全員に味わわせたろと思って。

-そんな理由で(笑)。

(笑)でも、"いい曲ができた、これは大事にしたい"というのがあったので、ギターのあんちゃんもいろいろフレーズを考えて、いまいちいいのができないって悩みながら全部作ってましたね。"これや!"っていう正解が出るまでやってました。"これや!"ってなるときは全員一致したんですけど、正解を導くまで本当に時間がかかりましたね。

-MVも公開されてますね。

あれは夜中にスタジオを借りて撮ってもらったんですけど、曲中ほぼ全部メンバーの顔面が映るものにしようって言ってたので、それまでにちゃんと全員痩せるっていうのを頑張りました。

-そこなんですね(笑)。では、一曲一曲振り返って、改めて本作はどんな作品になりましたか?

最近ストリーミングとかが普及して、通しでアルバムを聴くことがなくなったと思うんです。でも、今回5曲入りで20分もないくらいなんで、ひとつの小説ではないですけど、通しで聴いてほしいようないい作品ができたなと思っていますね。

-10月7日の発売日には三軒茶屋GrapeFruitMoonから配信ライヴを行いますね。配信ライヴはこの期間すでに経験したと思いますけど、今回はワンマンになりますし、ちょっと新しいことも観れたりしますかね?

そうですね。配信ライヴが始まって半年くらい経って、飽きてきてるのがみんなの正直なところやと思ってるんで、ちょっと仕掛けとかをできたらなと思ってます。

-そして、10月16日には心斎橋Pangeaで"PULPS改名&リリース記念LIVE"が行われますね。チケットはもう会場の予約枚数はいっぱいになっているようですけど。

これはワンマンじゃなくて、合計4バンドでお祝いみたいな感じにするんです。ちょっとネタバレになるんですけど、南蛮キャメロとお別れというコンセプトのライヴでやります。僕らの演奏中かはわからないですが、南蛮キャメロとのけじめをつける仕掛けがあるので、配信もありますし、楽しみにしてほしいです。

-では最後に、今後こんなバンドになりたいなどの目標はありますか?

ずっと4人でやってきたバンドで、4人でやってないと意味がないんですけど、年を重ねるごとに、やっぱりそろそろ働かないとヤバいなという年齢になってくると思うんです。でも、働かんでもいいくらい売れるっていうのがリアルな目標ですね。あと、日比谷野外音楽堂に憧れているんですよ。だから、野音でワンマンっていうのが僕個人的な一番の目標です。

-夕方から始まって日が落ちていくその風景に、PULPSの曲はすごく似合うと思います。そのときを楽しみにしていますね。

そのときは、ぜひ遊びにきてください!

LIVE INFORMATION

"PULPS「the the the」リリース記念ワンマンLIVE"
10月7日(水)三軒茶屋GrapeFruitMoon
※無観客配信ライヴ

"PULPS改名&リリース記念LIVE"
10月16日(金)心斎橋Pangea
※配信&有観客ライヴ
※入場チケットはSOLD OUT