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INTERVIEW

Japanese

Pororoca

 

Pororoca

Member:北原 魁人(Vo/Gt) 井上 広大(Gt/Cho) 小田 衣里子(Ba/Cho) 山田 太郎(Dr/Cho)

Interviewer:高橋 美穂

-じゃあ、今作の3曲は挑戦だったんじゃないんですか?

小田:そうですね(笑)。

井上:「ローカルトレイン」は、"ダーダーダーダー"って、ただの8ビートだから。

-ギター・ロック・バンドが土台になっていると得意そうな曲だけど、逆なんですね。そんな小田さんから見たPororocaの魅力とは?

小田:曲もライヴもカッコいいし、全員がキャラ立ちしているところも魅力だと思います。

-今お話を聞いていても、それがわかります(笑)。そして、「ローカルトレイン」についても詳しく訊いていきたいのですが、踏切の音が入っているインパクトが大きくて。

井上:最初にリフがあったんですよ。でも、歌詞とメロができなくて、太郎に投げたら1日くらいで書いてきてくれて。歌詞を見ると、電車じゃないですか。もともとの曲のイメージもあって、聴いたら風景が浮かぶものにしたいと思って、スタジオで(踏切の音を入れることを)思いついたんだよね。

北原:なんとかギターでできないかな? って、ネットとかで調べて。

井上:ソのフラットとファなんですけど、不協和音なんです。警告音だから、その"クる感"を入れたかったんです。だからサビ前にも入っているっていう。あと、イントロに入れたのは、電車の歌だっていうことを最初からわかってほしかったんですよね。

山田:歌詞は、まず"ローカルトレイン"って各駅停車っていう意味で。僕は岡山出身なんですけど、同じく田舎の方から出てきて、今大阪で働いている友達がいて、その友達の話を聞いて感じたことと、僕が上京して電車に乗るなかで感じていたことがリンクして。その友達は、みんなが日々をこなしているのに、自分は全然できていない気がすると。電車でもみんな何かとせかせかして快速を利用している。でも、快速しか見ていないからそう思うかもしれないけど、各駅停車でしか止まらない駅もあるし、自分のペースで壁を越えていけばいいんじゃない? って思ったんですよね。

-そういう状況を電車に喩えたことが見事ですよね。

山田:実は、あまり電車が好きじゃないんです。ぎゅうぎゅうになったりもするし。でも、好きじゃないなりに向き合ってみると、いつも使っているから気づかないけど、待っている人のためにひと駅ずつ進む"ローカルトレイン"はありがたいなって。そこで、相談をされたときに、電車と被るなぁと思ったんです。

北原:井上以外は地方出身だからね。

小田:東京の電車は、いろんな人がギュッと乗っているし、いっぱい通っているし、意味がわからない(笑)。

北原:小田は、加入してすぐにツアーに出たからね。それこそ、快速みたいな進み方で。だから、自分たちが楽しめる速度じゃなきゃいけないねって思ったときに、太郎がこういう歌詞を書いてきてくれて。だから、バンドの状況とも被るんです。そんなに器用なバンドでもないですしね。5年もやってれば、もっと売れてるバンドもいますから。でも、遠回りしたぶん、丸くなれている気がします。

-レコーディングも、かなりこだわられたみたいですね。

井上:今まではエンジニアさんをつけて、かけても2日で録っていたんです。でも、今回はエンジニアをつけず、いつものスタジオで自分たちで録ったんですね。マイクの立て方から教えてもらって。最初はアコギ録るのに8時間くらいかかったんですけど、だんだんいろいろわかってきて。実はティンパニの音が入っていたりとか、声で入っているコーラスもあれば、E-BOWを使っていたりとか、ライヴを主軸にしてやっているようなバンドはやらないような手法にもチャレンジしました。ライヴとCDは違うから、CDで聴くときに一番いいかたちを2ヶ月くらい考えていましたね。

-なぜこのタイミングで、それほどこだわったのでしょうか。

井上:やっぱり、エンジニアさんをつけると時間などの制約があるんですね。どっかしら今までの音源には後悔があったし......「ローカルトレイン」もこれから出てくるかもしれないですけど、"これでいいや"っていう感覚が残ったままレコーディングするのはやめようと思ったんです。"これがPororocaです"っていうものを出したかったので、リリースの時期も延期して。

北原:そこでいろんな人に迷惑もかけたので、今後もこのスタイルを続けるかどうかはわからないんですけど、1回立ち止まって、"自分たちはこういうものだ"っていうことを考える時期だったんですよね。ジャケットも自分たちで作りましたし。思い入れのあるシングルになりました。

-音楽性としては、コーラス、人の声を生かしている印象もあります。

井上:やっぱり全員で歌う強さもありますからね。

北原:太郎も歌うの好きだもんな。

山田:たしかに。

小田:でも私はまだ......3人の声に負けちゃうから(笑)。

北原:でも、「ローカルトレイン」にもちょっとだけ(小田の声が)入っているんですけど、全然雰囲気が違う。女声の強さがありますね。

小田:みんなで歌うバンドって、八王子っぽいですよね。

井上:僕らの1個上の先輩がハルカミライで。最初のライヴもハルカミライと対バンだったんですよ。そういう環境から得たものは大きいかな。誰も八王子出身じゃないんですけどね。バンドを育ててもらった場所です。

-「23:06」では弾き語りの情景が描かれていますが、これも八王子で生まれた曲ですか?

北原:いや、八王子ではないですね。ただもともと、ちょこちょこ路上で弾き語りしていて。

井上:足を止めて聴いてもらうことを経験して、バントと人との関係性を感じて、こういう曲を作ってみたいと思ったんだよね。ライヴハウスでもCDでもいいんですけど、一番近い関係性を歌詞にしたっていうか。

北原:この曲に限らずどんな曲も、自分がいて、聴いてくれる人がいるっていうことを、意識して作っているので。

-続く「GOLDEN VOYAGE!!(acoustic version.)」にも"君"という歌詞がありますもんね。「GOLDEN VOYAGE!!」は2018年4月にリリースされた1stシングルの表題曲ですが、なぜアコースティックで再録したんでしょうか?

井上:アコースティックが好きなんですよ。エレキも好きですけど、それだけじゃつまらなくて。わりと同じようなことをやっても、ドラムがカホンになり、アコギ2本になり、リフはカズーを吹いてってなると、ラフだからこそのカッコ良さが見えてくるから。

-では、最後に、今回"4th GIANT LEAP PRIZE"に選ばれたことに関してはどう思っていらっしゃいますか?

井上:嬉しかったですね、あまりこういうものに選ばれてこなかったから。

山田:やっと自分たちができることとやりたいことが合致して、楽しいねってなっているタイミングでこうなったので、この道のりで良かったんだなって思えました。

北原:しっかり曲を聴いてもらって選んでもらえたのが嬉しかったですね。

-では、この選出に結びついた"BIG UP!"のような音楽配信代行サービスに関してはどう捉えていらっしゃいますか?

井上:僕らは流通を通していないので、ライヴ会場に来なきゃCDを買ってもらえないし、ライヴ会場に来るには半日の時間と、チケット代とドリンク代がかかって、さらに目当てのバンドがいれば彼らのものを買いたいなかで、自分たちのCDを買ってもらうって大変じゃないですか。でも、ライヴから帰ってそういうサイトを調べたら聴けて、そこで良かったら"またライヴ行こう"ってなると思うんです。ライヴに来れなくても、日々の傍らに僕らの音楽を置いてもらえるようになると思うし。あと、こういうサービスは僕らも使うしね。

北原:うん。最初、衣里子に"なんで(配信で)出さないんですか?"って言われたのがきっかけだったんだよね。

小田:いい意味で手軽に聴いてもらえるようになりますからね。

井上:聴いてもらえるだけで嬉しいしね。

山田:僕は盤が好きなんですけど、聴いてもらうきっかけを作ってくださるこういうシステムはありがたいと思っています。

-井上さんがおっしゃったように、日々の傍らにあることが似合う楽曲ばかりだと思いますので、こういったきっかけで広まっていってほしいなと思います。

井上:僕らの曲は、いろんな年齢の人が聴いてくれるんだよね。ライヴにも、僕らの親くらいの年の人から、高校生までいるし。

-歌詞も、同世代や若者に対象を限定していないですよね。

北原:なるべくいろんな人に聴いていただけるようにしています。等身大の自分たちが出ているとは思いますけどね。「ローカルトレイン」も、帰り道に似合う曲だと思うんです。

-この曲は帰り道に聴きたい、この曲は朝起きたら聴きたいとか、いろんな場面に似合う曲があるんじゃないかなって。

北原:はい。その人の生活の一部になっていきたいですね。