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INTERVIEW

Japanese

Pororoca

2019年10月号掲載

Pororoca

メンバー:北原 魁人(Vo/Gt) 井上 広大(Gt) 山田 太郎(Dr) 小熊 雄大(Ba)

インタビュアー:蜂須賀 ちなみ

大学時代の同級生だった小熊雄大が今年7月に加入し、新体制となった八王子発の4ピース・バンド、Pororoca。この4人での初音源『I Love You -EP-』は、"才能なんてない/人並みの仕事もできない/僕らは所詮 選ばれちゃいなかった"というかなり赤裸々な一節から始まっていて、バンドのサウンドも武骨な手触り。全5曲は飾らずともバリエーション豊かで、これまで様々なジャンルにトライしてきた経験が自然な形で出ているのがいい。バンドのありったけを曝け出した、6年目の初期衝動と言うべき作品となった。この記事ではメンバー全員にインタビューを実施。身も心も削るような制作の工程を改めて振り返ってもらった。

-現体制で初めてのリリースなので、まず小熊さん加入の経緯から聞きたくて。

小熊:僕と広大は大学のアコースティック・ギターのサークルで一緒だったんですけど、Pororoca結成のときにも声をかけてもらってたんですよ。ただ僕が"いや、ヴォーカルじゃないなら入らない"って断って。それで僕は僕で弾き語り活動を始めて、八王子Match Voxでよく一緒に(ライヴを)やってたんですけど、(前任ベーシストの)小田衣里子ちゃんが続けていくのが難しそうということで再び打診があって。そのとき僕はずっと新潟で生活してくつもりだったから一度断ったんですけど、"小熊、どうしてもダメだ"と......。

-押し負けたと(笑)。

小熊:はい(笑)。なので"1回スタジオに入ってからでもいい?"って返事して。僕はもともとベースを弾いたことがなかったので、6月から弾き始め、7月から東京に来て、8月にレコーディングして――

北原:ベーシストとして誘ったというよりかは、こいつと一緒にバンドやれたらきっといいだろうなぁっていう想いが強かったんですよね。僕たちも5~6年バンドやってますけど、バンドを続ける難しさに関しては嫌というほどわかってるというか、別に(楽器が)上手ければいいというわけでもなくて。だからずっと一緒にやりたかった人が入ってくれて、今実際バンドがいい状態になってるっていうのがすごく嬉しいですね。

-最初はヴォーカルじゃなきゃバンドに入らないと言っていたのに、ベースでも入ったということは、小熊さんは北原さんに対して、ヴォーカリストとして何か魅力を感じたということかと思いますが、そのあたりはいかがです?

小熊:僕にも自分にしかないヴォーカリストとしての良さはあると思いますけど、魁人は、僕には出せないパワフルさがあるんですよね。ロック・バンドで歌うなら僕の声よりかは魁人の声のほうが絶対いいと思う。

北原:そう言ってもらえるのはすごく嬉しいですね。小熊がいいヴォーカリストだということは僕も知ってるし、彼の曲で泣いたことがあるくらいなんですよ。そういうやつがうちでベースを弾いてるってことに関してはすごく身が引き締まる思いがするし、もっと頑張らなきゃなって思います。それに、せっかく歌える人がふたりいるんだから今後ふたりで歌える曲も作っていけたらいいねっていう話もしてて。

-それは楽しみですね。この4人で音を合わせてみての手応えはいかがですか?

小熊:バンドで大きな音を出すっていう経験があまりなかったので"なるほど、これは楽しいわ!"っていうのがまずあって。最初にスタジオに入ったときは"じゃあやってみるか~"、"つまらなかったら入らなければいいんだしな"ぐらいの気持ちだったんですけど、"もう1回スタジオ入ってもいいけど?"って僕のほうから言い出しましたね(笑)。

井上:今までのベースの子が女の子だったんですけど、その子と一緒にやってたときはポップになっていったんですよ。それは"女の子だしこうしよう"ということではなく、一緒にやりながら気持ちいいところを探していった結果、自然とそうなっていったんですけど。で、やっぱり男4人になると、これまた自然とロックな気持ちになって、武骨で力強い演奏になっていって。これはこれで気持ちいいなっていう感じですね。

-山田さんはいかがですか? 小熊さんとはリズム隊ということになりますが。

山田:(リズム隊は)自分のリズム感を大事にしつつ、お互いを尊重し合ってる関係が大事だと思うんですけど、それがくっきりハマってるんじゃないかなって僕は思ってて。やってて気持ちいいっていうのはお互い尊敬し合ってるからこそだと思うんですよね。

-なるほど。今回のEPにも今話していただいたようなモードが反映されてますよね。

井上:そうですね。この体制での初期衝動を詰め込みきれたと思ってます。

北原: 7月に(小熊が)上京して、そこから曲作って、8月頭からレコーディング、っていうスケジュールだったんですけど――

小熊:呼ばれたときは"曲もあるし、8月に入ったらレコーディングする予定で"っていう話だったのに、いざ行ったら"あれ、曲ないじゃん!?"って......(笑)。でも、そのおかげで僕の意見もちゃんと入ってるし、この4人で作ったものだなっていう実感はありますね。特に「あの日から」が1曲目っていうのはすごくエモーショナルな感じがするなぁ。

井上:"あの日から"っていうのは僕らが5年前に最初に打った企画の名前なんですよ。この曲、1ヶ月ぐらいタイトルが決まらなくて。それで最終的にみんなでカフェで"どうする?"っていう話をしてて、行き詰まってるなかで俺が1回トイレに行って。そこで"あ!「あの日から」だ!"っていうふうに思いついたんです。

-ということは井上さん発案?

井上:いや、そのあとトイレから戻ったら3人も"俺ら思いついたんだよね~"みたいな顔をしてたんですよ。それでせーので言ったら"あの日から!"って声が揃って。

-それはすごいですね。みんな一緒に"これだ!"と閃くほど、"あの日から"はPororocaにとって大切な概念だったということですよね。だからこそ企画のタイトルにしてたんだろうし。

北原:そうですね。バンドを始めたころに作った「東京にて」(2015年リリースの1stデモCD『あのさ、』収録曲)という曲に"あの日叫んだ少年の心は"っていう一節があるんですけど、そういう、過去の自分と今の自分の対比を僕らは昔から大事にしてるんですよ。僕たちはいい歳こいて今も音楽をやってるわけですけど、それぞれの人にとっての"あの日"――初期衝動や本当に大事にしたいもの、自分の好きなことを好きにやってる瞬間を大事にしてあげたいと思ってて。だからこれは自分たちの曲でもあるんですけど、聴いた人にもこの曲を自分事にしてほしいんですよね。好きなものはいつまでも好きでいていいし、僕たちの姿を見て何かこう、胸を打つものがあったらいいなと思って歌ってます。