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INTERVIEW

Japanese

SAKANAMON

2024年03月号掲載

SAKANAMON

Member:藤森 元生(Vo/Gt)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

やっぱり我々にしか出せない音があると自負している、過去の自分にカッコいいと思われるように頑張りたい


-で、この「すっぽんぽん」はいろいろとツッコミどころのある曲で。最大のツッコミどころは、なぜ最後にサンバになるのかという点ですよ。

あははは。ただただ面白いからやってるだけで、意味なんてないんですよ。ほんとバカだなって感じですよね(笑)。このノリって完全にいつもの僕らなんですよ。楽屋とか打ち上げとかで即興で歌ってるのがだいだいこんな曲。そのノリをとうとうちゃんと曲にしたって感じです。

-メンバーに最初に曲を共有したとき、どんな反応がありましたか?

あんまりリアクションはなかった気がするな。(※LINEを遡りながら)森野さんは"ありがとうございます"ですね。キムさんは"押忍"です。もう慣れっこなんでしょうね。あと、"「すっぽんぽん」のところ、難しいね"って言われました。ちゃんと真剣に(笑)。

-"すっぽんぽん"のところ含め、メロディに対する言葉のはめ方がとにかく気持ちいい曲ですよね。藤森さんはいつもどういうふうに歌詞を書いているんですか? とにかく数を打っていくタイプなのか、数はそんなに打たず、たったひとつの正解をじっくり見つけていくタイプなのか。

どっちもある気がします。最近はだいぶ慣れてきたので、1曲を書くために出す言葉の数もだいぶ減ってきたんですけど、昔はすごかったんですよ。"このメロディにはこの語感なんだ"っていう自分の考えに当てはまる言葉を探すために、母音検索のアプリや関連語辞典をめちゃくちゃ使ってました。アプリや辞典は今も使ってますけど、「すっぽんぽん」に関しては......(※スマホのメモを見ながら)あぁ、結構いろんな言葉を出してるな。"4文字以内に当てはまる、こういう意味の言葉はないかな"って探して、見つけた言葉を実際に当てはめていくんですけど、"なんか違うな"、"こっちのほうがいいな"と思った言葉は落選させていくトーナメントみたいなことをやってて。今メモを見たら落選欄に結構言葉が溜まってたので、この曲は数を打ちながら考えていったパターンですね。

-4曲目は「おつかれさま」。『LANDER』や『HAKKOH』を経た、今の藤森さんだからこそ書けた曲ではないでしょうか。

そうですね。曲の発想自体は、このEPを作ろうと決まる前からあって。帰宅途中に"あ、今いい曲聴いたら泣いちゃう気がするな"って感じることがあるじゃないですか。そういうふうに直接語り掛けるような曲を作ろうと思って、帰宅中の人たちみんなこの曲で泣かせてやろうと思いました。たぶん昔の自分だったら"何を偉そうに"、"お前に言われたくないよ"って思ってたと思います。

-過去の自分にそう言われたとしたらどう反論しますか?

"もういいじゃん"って。"お前が言ったら重みないけど、俺はもう15年選手だから。重みが違うだろ?"って伝えるかな。

-昔の自分を納得させるには、それだとちょっと弱くないですか(笑)?

たしかに(笑)。"(奥田)民生さんだったらわかるけどさ、早くない?"とか言われそうだけど......でも今の自分からすると"いやいや、もう言わせてよ"って感じかな。『HAKKOH』に「ふれあい」という曲がありますけど、"ありがとう"とか"ごめんね"というシンプルな言葉をここ1~2年でようやく届けられるようになったんですよ。昔の自分を説得するとしたら"今までは捻くれていて言えなかったことを今は言えるんだよ。見たことないだろ? 逆に斬新だろ?"って言うかもしれないです。

-EPには、15周年の締めくくりとして昨年11月にLIQUIDROOMで開催されたワンマン・ライヴ[SAKANAMON 15th ANNIVERSARY LIVE TOUR "真向"]より、「光の中へ」、「TOWER」のライヴ音源も収録されています。心に余裕ができてライヴをより楽しめるようになったという話でしたが、この日のライヴはいかがでしたか?

いや、全然余裕なかったな......(笑)。ツアー・ファイナルはやっぱり緊張するんですかね? でも、久々に声出しライヴをあの規模でできて、"あの頃のライヴが戻ってきた"、"楽しいし、懐かしいな"って思いました。あと、昔とはちょっと違う見方ができるようになったというか。メジャー・デビューしたての頃は、いかにお客さんを沸かせるかということを一番に考えていたんですよ。そのためにはどう煽ろうか、どんなリズムで乗せようかとか、そんなことを考えながら曲を作らなきゃいけなかったりして。それはそれで楽しかったけど、コロナ禍になってからはリアクションのないライヴになったじゃないですか。最初はずっとスベってるみたいで焦りもありましたけど、その状況にも意外と慣れてきて、普通みたいになって。お客さんも"無理に盛り上がらなくていい"、"もちろん盛り上がってもいい"という感じで楽しみ方の幅が広がった気がするんですよね。それはライヴをするこっちも同じで。無理に頑張って盛り上げなくてもいいんだと思えるようになったことで、心に余裕ができたっていうのもあるかもしれないですね。

-EPリリース後の4月5日からは、全国10都市を巡るツアー[SAKANAMON TOUR 2024 "来ぶらり"]が始まります。

"ライブ"がテーマのEPのツアーなので、よりライヴ感のあるライヴにしたいんですけど、それがいったいどういうものなのか、まだ皆目検討がつかないですね(笑)。これからみんなで話し合って考えます。

-このモードで制作予定だという次のアルバムも楽しみにしてます。気が早いかもしれないですけど、次のアニバーサリーは20周年ですね。

20周年まで生き残るぞって気持ちでいますね。とりあえず今みんなで掲げてるのは"健康"っていうテーマで。

-大事ですね。

もうおっさんですから(笑)。若い頃からいつやめても大丈夫なように、遺書みたいな曲をいっぱい書いてたんですよ。"どうせ売れなくなってポイされるから"って曲とか、"生きてるうちにお礼言っとかなきゃ"って曲とか。自分の中で勝手に"この曲、俺が死んだらみんな絶対泣いてくれるだろうな"、"この曲は俺が死んだあとに名作って呼ばれるやつだ"って作戦立てながら作ってたんですけど。でもまぁ、死にたくはないなと思って。

-どうしてそんな曲を作ってたんですか?

僕、子供の頃から36歳で死ぬつもりだったんです。男のピークは35~36歳だってミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)のチバ(ユウスケ/Vo)さんが言ってた気がするんですよ。それで"そっか。じゃあ36で死のう。どうせ将来浮浪者だし"って思って。だけど初めて彼女ができたときに"僕36で死ぬから、ごめんね"って伝えたら"死なないでほしい"って泣かれて。それで"じゃあ死ぬのやめよ"って生きることにしました(笑)。

-たしか、EPのリリース日がちょうどお誕生日でしたよね。

そう。そんな僕が36歳になるんですよ。これからもバンド頑張ろうって思ってます。

-今回こうして"このネイキッドなアレンジこそカッコいいよね"と言えるEPができたわけじゃないですか。結成したてのSAKANAMONでは、今のSAKANAMONが鳴らしている音は鳴らせないと思うんです。そういうふうに"歳を重ねるのも案外いいかもな"と感じる瞬間はありませんか?

まぁまぁまぁ......って感じですね。

-"まぁまぁまぁ"......とは?

まぁたしかに、っていう。昔は"あのバンドより全然下手だな"って劣等感を抱えながらやってましたけど、それこそライヴに余裕ができたのは、演奏に自信がついてきたからだと思いますし。やっぱり我々にしか出せない音があるというのは、ちゃんと自負してますね。あと、僕は曲を作るたびに過去に自分をひとりずつ置いていっている感じがするんですよ。人生って自分との助け合いだと思ってて。"ヤベぇ、お薬忘れた"ってときに、"もしかしたら、過去の自分がこのバッグに入れておいてくれてるかもしれない"、"あぁ、あった! ありがとう、過去の自分!"ってなることが結構あります。それは、未来の自分に優しくしようという気持ちが過去の自分にあるからで。"あいつ、絶対未来でお薬忘れるから、ここに入れといてやろう"みたいなことを俺は結構やってるんですよね。

-ということは、歳を重ねるほど、過去の自分に助けられる機会も増えそうですね。

そうですね。自分が作ってる曲だから自分のツボにハマるのは当たり前なんですけど、昔の自分が作った曲を聴いて、"うわ、面白いことやってる"、"やるな、昔の自分"って思ったり。逆に、過去の自分にカッコいいと思ってほしいから頑張る、みたいなところもあります。"SAKANAMON落ちたな"って過去の自分に思われないように、これからもいい曲書いていきたいですね。

RELEASE INFORMATION

SAKANAMON
NEW EP
『liverally.ep』

TLTO-047/¥1,800(税込)
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[TALTO / murffin discs]
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