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INTERVIEW

Japanese

PompadollS

2025年07月号掲載

PompadollS

Member:五十嵐 五十(Vo/Gt) 青木 廉太郎(Gt)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

『P.S.』はメンバーそれぞれの原液って感じでしたけど、今作でそんな5人がロック・バンドになったところを見せたかった


-結成から約1年半にして、ワンマン・ライヴ開催やイベント出演が続々決まっている現状については、率直にどう感じていますか?

五十嵐:このスピード感は想像してなかったですね。ただ、いずれこうなるだろうという確信みたいなものはずっとあったので。

青木:LED ZEPPELINみたいですね。Jimmy Page(Gt)が"このメンバーが集まったとき、人生を変える経験になったと思った"って言ったという(笑)。

五十嵐:そこまでは言ってないですけど(笑)。でも、初対面から頼もしい人たちだなと思ってました。Xで、"メンバーがヴォーカルの杖になってるようなバンド"って言ってくださっている方がいたんですけど、私も同じように感じてて。音も人柄も、私の作る音楽に寄り添って、最大限を引き出そうとしてくれる心強さがあります。私はダメ人間だけど、すごく運だけはいいんです。だから、この運とメンバーのおかげで、行くところまで行けるんじゃないかなって。

青木:僕はスピードを上げることにも重点を置いてました。最初はバンドが長く続けばそれでいいと思ってましたけど、一方で規模がデカくならないと長く続かないですから。

-童話をモチーフにした楽曲がPompadollSの大きな特徴ですが、なぜそのコンセプトに至ったのでしょう?

五十嵐:小さい頃からたくさん読んでいた童話が、私の人格形成の根底にある気がしていて。童話の中の教訓を"たしかにそうかも"とか"ちょっと違うんじゃない?"って見つめ直すのを繰り返して、今の私ができたという意識があるんです。それをもとに曲を書くと自然と自分を曝け出せるっていうのを発見して、童話をモチーフにするようになりました。

-今日の邦ロック・シーンでは、生活に近いことや自身の活動自体を歌にしているバンドが多いと思うんですよ。PompadollSの詞世界はそのカウンターのようにも感じて。

五十嵐:私は青木さんと違ってそこまで戦略的ではないです(笑)。単純に、直接的な表現を使えないだけ。恥ずかしがり屋なんですよ。

-そんな五十嵐さんが自己を表出する手段が、物語の形を借りることだったんですね。それに、童話をモチーフにすることで、楽曲に時代を超える普遍性が生まれるのも強みなんじゃないかと。

青木:それはすごく良いことですよね。今っぽい固有名詞は刺さりやすいけど、時が過ぎると厳しくなる。やっぱり20年、30年と戦えるバンドになりたいですから、普遍的なことを歌いたいと思います。若干難解ではありますけど、如何様にも解釈できるのも良いですね。

-楽曲制作の流れについて、もう少し詳しく教えてください。五十嵐さんの作詞作曲からバンドでのアレンジまで、どういった流れで進むのでしょう?

五十嵐:私が弾き語りでメロディを作って、それを青木に投げて、まずは青木が全体の編曲を......。

青木:なんか取引先と喋ってるみたいじゃない? 別に"青木さん"でいいんじゃないの(笑)?

五十嵐:うちの青木が全体の編曲をして(笑)、そこからメンバーが各々のパートを作り込んでいくという流れです。

-青木さんの手を離れる時点で、全体の大枠は固まっていると。

青木:そうですね。イントロやサビの、"ここだけはこうやってカッコ良くしたいです"ってところは分かるようにして。逆にBメロとかは結構粗い状態ですけど。

-そして、各パートのアレンジで芸大組2人のカラーが加わるんですね。

青木:僕はピアノが弾けないけど、こんなふうにしてほしいっていうイメージはあるんですよ。それをなんとか打ち込んで渡してみたら、カッコ良くなって帰ってくる。それがバンド・アレンジをする中で一番の感動ポイントですね。"そうやって弾けばいいのか、次からそうするわ"って毎回思うんですけど(笑)。

-適材適所で。

青木:そうそう。それがハマるのもすごいなと思いますね。それと、基本的にはDTMのやりとりなんですけど、最後はスタジオに入ってみんなで弾いてみるっていうステップは守ってます。

-ここからは6月25日リリースの2nd EP『Fantasism』について聞かせてください。制作はいつ頃から意識していたのでしょうか?

青木:前のEPを出した後にまだストックがあったので、また半年くらいのスパンでリリースしようとは思ってました。ただ、その直後にバズって忙しくなり。でも、バズったからこそ今が一番聴いてもらえるタイミングなので、慣れないライヴ活動の合間を縫って制作しましたね。個人的には、僕が「悪食」と並んで最初にバンドでやりたいって話してたのが、「赤ずきんはエンドロールの夢を見るか?」なので、リリースされるのが楽しみですね(※取材はリリース前)。

-「ロールシャッハの数奇な夢」もバンド結成前からあった曲だそうですが、原曲自体は早い段階で完成していたものが多いんですか?

青木:いや、「ラブソング」と「まえがき」は最近作った曲ですね。

-サウンドやアレンジの面では、前作から意識して変化させた点はありますか?

青木:単純にみんなの理解度が増していて、今作まではそれだけで十分だと思ってます。『P.S.』はメンバーそれぞれの原液って感じでしたけど、そんな5人がロック・バンドになったところを見せたかった。なおかつ、これまではカマす系の曲ばっかりで全曲BPMが180を超えてたけど、今回は「ラブソング」みたいなミドル・テンポの曲ができたので、これも聴き心地が変わっていいなと。これからPompadollSがどう見られていくかということを意識しながら、方向性をまとめていきました。

-個人的には、前作より鍵盤の存在感が増したなと。ロック・バンド的な前のめりさと、ジャズやクラシックの文脈を経たピアノが衝突することが、PompadollSらしさだという自覚が芽生えているように思います。

青木:まさにそうです(笑)。歪んだエレキ・ギターの上にピアノが乗るっていうのはもちろんすでにある手法だけど、これがPompadollSの最も得意なことなんじゃないかと。ピアノ・ロックでもギター・ロックでもない、ピアノ×ギター・ロックがPompadollS。だから、「海底孤城」だけはチェンバロとピアノの音を交ぜてるけど、基本的には全曲(シンセではなく)ピアノなんですよね。

-「赤ずきんはエンドロールの夢を見るか?」、「ラブソング」はライヴを意識したようなシンガロング・パートがあるのが印象的です。やはり、ライヴ本数を重ねたことが制作に反映されているのでしょうか?

五十嵐:やっぱりライヴをやってると、もっと面白いことをしたいって思いますね。

青木:『P.S.』はライヴに出たことがない人たちが作ったバンド・サウンドって感じで、あれはあれでカッコいいんですけど、ライヴで楽しませるのもロック・バンドの役割だなと思って。「赤ずきんはエンドロールの夢を見るか?」は昔からある曲ですけど、出すなら今なんじゃないかということで、急いでアレンジした記憶があります。

-ミドル・テンポの曲が加わったのも、セットリストが広がる素材になりますし。

青木:(※五十嵐に向けて)実際、「ラブソング」はそれを意識してたの?

五十嵐:はい。セトリを決めてるのは私なんですけど、"ここでこういう曲があったらいいな"と思うことは結構あるので。

青木:テンポ感だけでなく、演奏的にも新しいことをしてて。演奏するのがたぶん超難しい。