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INTERVIEW

Japanese

お風呂と街灯

2024年12月号掲載

お風呂と街灯

Interviewer:高橋 美穂

自分に対して書いて、自分が救われるような歌なら 僕以外にも救われる人は必ずいると思って


-でも、落ち込んでいるような歌詞でもピアノの音色はキラキラしていたり、相反するところもありますよね。そこに関しては意識的だったりしますか?

そうですね。意識的且つ、そういう音楽が好みというのもあって。暗い雰囲気の音楽はあまり聴かないし。あとは僕の暗い歌詞は――消し去りたい過去とかは、愛すべき要因の1つであるっていう結論に辿り着くようにしていて。それは僕の思想だと思っているんですね。そうやって暗い部分を受け入れる、あわよくば愛してあげるっていう楽曲にするために、曲調は明るくしています。

-じゃあ、歌詞の結論や目指すものを曲調で表現しているという。

そうですね。最終的に、言いたいことは明るい曲に乗せるべきだと思っています。

-地の果てまで見ているような歌詞でも、最終的には空まで引っ張り上げてくれるじゃないですか。そのパワーがすごいなって。世の中や自分自身に自己肯定感が足りないっていう考えも関わっているのかなと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

その節はあります。義務感にかられているわけではないですけど、みんな自己肯定していいはずなのに、できない人がいたり。あるいは、僕は自分に関して書くことが多いから、僕自身が"もう無理かも"って思ったときのために、自分に向けて書いてあげています。暗い気持ちのときは書けないんですけど、後から負の感情を思い出して、その自分に書いてあげるっていう方法で。数日前、数年前の自分に"その視点を忘れていたな"って思わせてあげるように書いていると、自然と気持ちを上げてくれるような印象の楽曲になるんだと思います。

-まず歌いたい対象は過去の自分なんですね。

そうですね、そういう曲が多いです。

-きちっと気持ちを上げることができるからこそ、こういう楽曲ができると思うんですけど、どうすれば気持ちを上げることができるんですか?

パッと2つぐらい思いついたんですけど、言葉を大事にするようになってから聴いた音楽に助けられることはあります。音楽を聴いて、一歩引いた目線で自分を見てみようと思うことによって心が回復したり。あるいは、旧友と一緒に銭湯に行って、3時間ぐらい話すんですよ。そのうちに気持ちが言語化されて、根本の解決には至らなくても、気持ちがスッキリする。そうなると、凝り固まった状態ではなくなって、案外この悩みは大したことじゃないと思えるようになるっていう。

-心も頭も身体もほぐされるわけですね。例えば新曲「花言葉」は、どのようなきっかけで生まれたんですか?

最初に書いたときは、考えにふけっていたんです。自分が生きているなかで、仲がいい人にも意図が伝わらないこともあるんだなと。他人なんで通じないっていうのは前提だと思うんですけど、それを忘れているとショックだったりして。それをきっかけに、過去の回想とかをしつつ、今日は気持ちが乗らないなぁという日があって、後からその日について書こうと思ったんです。"嫌な日だったかもしれないけれど、必要な一日になっていますよ"って、その日の自分に宛てて書こうと。すごくいい日って捉え直す必要もない、ただこういう日だったって、その日に名前を付けてあげるみたいな意味合いで花を添えてあげるみたいな。いいことがあった日にも、悪いことがあった日にも、その日に対して花を添えてあげるっていうことを書きました。

-だからこそ、暗い内容を歌っても"花"という明るさの象徴が掲げられているんですね。

そうですね。花は贈り物として扱われることが多いから、嫌な日もいい日も贈り物をあげる対象だと思ったので"花言葉"にしようと。

-今の説明を伺っていても、他の楽曲を聴いていても思うんですけど、お風呂と街灯さんの歌詞は赤裸々な日記のようですね。

その節はありますね。悪い日の記録も残すという意味でも。もう1つ、悪い日について今日はこんなことを思えた、書けたという記録としても、どちらの意味でも日記として残していきたいって気持ちはあります。

-日記って机の中に仕舞っておくような、できれば隠したいものですけど、お風呂と街灯さんの場合は"見せることで自分のためにも人のためにもなるなら"という気持ちで歌詞にしているのかなって思うんですね。発表会とかが好きだったとおっしゃっていましたし、もともと人に見られるのが大丈夫な方なのかもしれませんけど。

日記を見てほしいという気持ちはないですけど、自分に対して書いて、自分が救われるような歌なら、僕以外にも救われる人は必ずいると思って。自分だけが特別っていうことは、基本的にはないと思うので。ただ、発表会が好きだったっていうのは、褒められるのが好きだったからなんですね。今はその思想はなくて、ほんとに自己満足というか。人の前に出たいわけではない――出たくないわけでもないんですけど、この歌を必要としている人に届くのであれば、出すことを選択したいなっていう。

-歌詞の話を中心に聞いてきましたけど、曲の作り方は何か変化していますか? 弾き語りから始まったとおっしゃっていましたけど。

常にチャレンジはしていて。かっこいいと思った音を真似したり、今までとは違う雰囲気の曲を作りたいと思ったり。最初はピアノ一色でしたけど、そこにドラムを足すようなところから始まって。今となっては"バス・ドラムはこの音色にして、ハイハットはこの音色にして"とか。ピアノも最初は好きなように弾いていたけれど、今は他の楽器との兼ね合いも考えて音色を決めたり。この先もそんなふうに音を選んでいきたいと思います。

-弾き語りというとピアノと歌だけ、ギターと歌だけとか、素朴な方法にこだわっている方もいますけど、お風呂と街灯さんの場合は、自分の楽曲を届けるために、いろんな手法にチャレンジしていきたいっていう?

そうですね。使えるものは全部使っていこうと思っています。

-これから、どんなアーティストになっていきたいですか?

僕は言葉を大事にしていきたいので、こういう規模感を目指すとか――もちろん大きい規模に越したことはないんですけど、目標はそこになくて。僕の歌を聴いて、日常の考え方が少し変わったとか、救われたと思ってもらえるような――お風呂と街灯をきっかけに、その人が能動的に何かを行えるアーティストになりたいです。共感してもらえることも嬉しいんですけど、最終的には"お風呂と街灯のこの思想は僕と違うな"って言う人も現れてくれると嬉しい。お風呂と街灯のここが好き、ここが嫌いと言ってくれるような人がファンになってくれるといいですね。

-全面肯定するだけではなく、その人の目線で判断してほしいというか。

そうですね。肯定より、その人のきっかけにしてほしい気持ちが強いです。

-その名前の如く、お風呂に入っているように癒してくれて、暗い夜道のような人生を街灯として照らしてくれるアーティストになってほしいですね。

ありがとうございます。そう思ってもらえたら幸せです(笑)。

RELEASE INFORMATION

お風呂と街灯
9th SINGLE
「花言葉」
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