Japanese
BIG UP! × QRATES
BIG UP!:本根 誠
QRATES:福山 泰史(CMO)
Interviewer:吉羽 さおり
クラウドファンディングを通じて、アーティストがファンと思いをシェアしてレコード作りができる場に
-ここからインディーズのアーティストたちがどういう作品を出していくのかも楽しみになります。
本根:でも、サイトを見たときにびっくりしたのが、若いアーティストだけでなく、VULFPECKなどもリリースしているんですよね。さらにベテランな人で言うと、ELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONSのキーボーディスト、Steve Nieveが個人名義でやっていたりするんです。40年間くらいプロ・ミュージシャンをやっていて、いろんなメジャー・レーベルと契約してきた人が、自分の作品のレコードを作るときにQRATESを選んでいるんですよ(笑)。その信頼性の高さですよね。
福山:使っていただいてるアーティストは、グラミー賞にノミネートされたドラマー Nate Smithや、90歳のカントリー・アーティスト Willie Nelson、あとはBEYONCÉの妹 SOLANGEとか。みなさんどこでQRATESのことを知っていただいてるのかと、我々もびっくりすることがあるんですけど。
本根:そのほか、QRATESを利用するアーティストで音楽的な傾向などはあるんですか。
福山:ありますね。シンセウェーヴとかローファイ・ヒップホップなど、コミュニティが濃いジャンルは、ひとりのアーティストがやり出すと広がっていく傾向がありますね。ローファイ・ヒップホップだと、YouTubeでも有名なLofi GirlやCollege Music、Chillhop Musicといったチャンネル/レーベルは全社QRATESでレコードを作っています。YouTubeで配信をして、ブランド力やライフスタイルでいろんな人をファンにしていくだけでは、マネタイズはできない。そのストリーミングやオンラインでしかないものを、オフラインで、触れるものにしてあげているのがQRATESという感じですね。そういう組み合わせでLofi Girlのコンピレーションとかはリリースしています。
本根:なるほど。
福山:また面白い例としては、YouTubeで自分の好きな音楽を紹介しているYouTuberがレーベル機能を果たしてQRATESでレコードを作って出す、ということをやっていたりもするんです。自分のYouTubeチャンネルにはファンがたくさんいるので、自分がプロモーションをすれば売れるからということで、レコードを出していない自分の好きなアーティストに一緒に組まないかと働きかけて、QRATESでレコードを作るという。次世代のレーベルみたいなことをやっている人もいるんです。
本根:それは、すごく面白いですよね。
-実際どういう感じで作れるのかということで、実物も持ってきていただきましたが、かなり盤のデザインが豊富ですよね。まさかピクチャー・レコードもできるとは思っていなかったです。
福山:先ほどのWEB上で、盤のデザイン、カラーを選択できたり、自分のアートワークをアップロードして、そこにはめることもできるんです。スプラッターという模様の入った盤や、色をハーフ&ハーフにできたりと組み合わせができるんですよ。現在、40色、12万通り以上の組み合わせが可能になっています。
本根:かわいらしい色味もできるので、これは嬉しいですよね。それもQRATESさんが使っているプレス工場は、ヨーロッパでも最大且つ最高の工場で、技術力も高くて。WEB上で簡単にオーダーができるけれど、クオリティも高いものになっているんです。
福山:アートワークにこだわりたいという方も多いですしね。あと、QRATESではダウンロード・カードのオプションもあるので、レコード・プレイヤーは持っていないけれど、好きなアーティストの作品はものとして欲しいという方にも、アイテムとして満足できるものになっていると思います。立ち上げた当初から、年々様々なオプションも増えていて。ユーザーからどんなリクエストが上がっているのかを毎年集計して、それをどんどん取り入れていくうちに、どんどんやれることも増えてきましたね。
-WEB上で製作を進めていくうえではフォローもありますか。
福山:100パーセント自動化というわけでなく、我々の製造チームとメッセージがやりとりできる機能もあるので、そこは安心していただいて大丈夫です。実際にレコードを作る際は、製造に入るまでに1回テスト・プレスを作って、"どうでしたか"、"これでOKです"とか、もしくは"イメージと違いました"といったやりとりは、日本語でも、英語でもできるようになっています。
-ストリーミングによって音楽の発信や聴き方、出会い方がどんどん変化してきたなかで、一方でレコードやカセットといったアナログの市場も盛り上がっている。またレーベルに頼らずとも発信の選択肢が増えているということで、アーティストがどういうこだわりで、どんな作品作りや発信をするのかは、今後楽しみでもあります。
福山:ストリーミングで当てるとすごい大化けするんじゃないかという夢はあると思うんですけど、一方ではレコードも忘れないでほしいですね。QRATESでは今、アルバム1枚30ドルくらいでの販売が多いんですが、売り上げの85パーセントがアーティストに戻る仕組みとなっているので、数千枚とか1万枚とか売れれば、インディーズ・アーティストにとっては数百万、数千万の売り上げになるんです。そうすることで、また次のレコーディングの制作費が賄える形にもなっているんじゃないかなという実感もあります。好きなものを自分で作れる自己実現と、あとは作り続けるためにお金を得ていくための収益的な自己実現、その両方が詰まっていないとダメじゃないかなと思っています。
本根:BIG UP!としても、DIYなアーティストをサポートしていきたいという思いが強いです。アーティストがクラウドファンディングを通じて、ファンと一緒に思いをシェアしてレコード作りができる、それでこれだけ素敵なものを作れるというのは大きなメリットになると思うので。QRATES、BIG UP!、アナログとデジタルというそれぞれの方法を通して相乗効果が生まれればと考えています。
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