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Skream!×MUSE音楽院特別公開講座

2015年12月号掲載

Skream!×MUSE音楽院特別公開講座

-それまで音楽のことは何かやられてたんですか?

日下:高校生時代にバンドやったりとか、まぁバンドといってもただテンポが速ければいいとか音がいっぱい割れてればいいねっていうような、そういう活動しかしてなかったんですけど(笑)。まだバブルが崩壊するかしないか微妙な時期で世の中の景気がよくて、ほんと運がよかったから。今、受け皿が少ない状況でエンジニアになりたいって方に参考にはならないかもしれないんだけど(笑)。

-続いて、より具体的なご質問なんですが、"普段ミックスのときはどういう手順で作業していくんでしょうか? どういう処理をすることが多いんでしょうか? 教えていただけますか?"と。

日下:レコーディング・エンジニアのミックスのときの話ってことになると思うんですけど、今は大きな卓で全部バラバラに音を出してっていう形でやることって少ないですね。大体Pro Toolsの中で音をまとめるっていう作業をやることが多いので。ご飯のお茶碗の大きさが決まってる中でそこにどう盛りつけるかみたいなイメージで、僕は進めてることが多いんですけど、そのお茶碗の大きさを決めるのがベースなので、1番初めにベースの音を作るんです。VUメーター(※音量感を指示するための測定器)がどれくらい(針が)振れるかっていうところなんですが、僕は-6~-7くらいを振れるように作っておいて。その次にドラムを作って、ベースとドラムでどういうスピード感の曲にするかっていうことを決めますね。そのあと、なんとなーくヴォーカルを出して、ギターとかそれ以外の楽器をいろいろ音を出していって整えていくっていうパターンが多いかな。

滝:ヴォーカルを先に出していくのは重要なポイントじゃないですか?

日下:そうなんだよね。どうしてもこう、歌を出さないままやるとインストだけである程度ガッチリしたものを作り上げてしまって、歌の入る余地がないっていうことになってしまうので。曲の何を伝えたいかっていったらメロディと言葉のメッセージが1番なんです。プロデューサーという目線からいうとそこはとても大切なことなので、そういう手順でやることがほとんどですね。あと、サビでこういうディレイをつければサビっぽくなるっていう黄金比率みたいなものがあるんですね。それをやることは、僕は全然嫌じゃなくて。それを試してみてそれがハマればいいだろうなっていうところですね。そういう処理をするときは、その場面に応じてやっていくっていくことが大事ですね。

滝:歌にディレイが乗って聴こえるものって気持ちいいですよね。乗せて当然みたいなものも合いますし、やっぱドライでロックな感触ものもカッコいいし、音が増えるんだったら広げてもいいし、音が減るんだったら近づけてもいいし。

日下:それこそ、言葉にもよると思うんだよね。やっぱり言葉を伝えたいので、歌詞については卓郎君(Vo/Gt)と話すこともよくあるんだけど、ハ行だとちょっと弱いかなとか、カ行の方がぐっとくるのかな、とか。変えようと思えばいくつか候補はあるんだけど、みたいな話をしますね。一方で曲のメンタリティを優先した方がいいんだろうなっていうケースもあって。

滝:意味合いが通じるのであればですけど、パンキッシュな音だったらカ行、タ行、バ行とか、活かせたらカッコいいかな、みたいなところはありますよね。

日下:9mmはそういうことを考えながら作ってるなぁと感じますね。特にその歌い出しだったりとか、サビの頭のパンチ力だったりとか。

-ありがとうございます。それでは、日下さんへの最後の質問です。ドラムに関してですが、"ドラムのマイキング全般についておうかがいしたいです。"MUSE音楽院の学生から多かったご質問なんですが......。

日下:ちょっとだけ専門的な話をすると、"オンマイク"と"オフマイク"っていう、大きくふたつに分けるような方法でドラムのマイキングをしてるんですけど、オンマイクには基本的にダイナミック・マイクっていう耐久性の高いマイクを近くにセッティングして、バスドラムだとかスネア、タムに置いて、あとはシンバルやスタジオの鳴り自体を録るアンビエンス・マイク(コンデンサー・マイク)で。このマイクは電力が必要なんですけど繊細で細かい音まで録れるっていう。


※日下 貴世志さんのドラムのマイキング全般について
スタンダードなセッティングは下記の通り

キックにSENNHEISER MD421, NEUMANN U47FETICE
スネアにSHURE SM57を2本、上下から
タムにSENNHEISER MD421
ハイハットAKG C414
ライドAKG C414
TOP(シンバル)AKG C451を2本
アンビエンスにNEUMANN U87を2本(ドラムから5~10メートル離れた位置で)


滝:オフマイクをステレオで録ったら、その部屋にいるような感じになれるんです。

日下:そのふたつのバランスのとり方で、基本的には作ります。ただ、9mmはちょっと特殊で、バスドラムにはだいたい穴が開いているので、そこに5cmくらいマイクを入れるんですけど、9mmの場合はいけるとこまで入れるっていう。

滝:入れれば入れるほど音がバチバチになっていくんですね。

日下:とにかくバチバチ鳴って元気さえあればいいってときは、ぐっと突っ込めばいい。そういう場合もあると言っておきます。

滝:ドラムのマイキングってスタンダードな部分でもありますね。それだったら、ドラムのチューニングの方がまだ遊べますよね。

日下:そうだね。

滝:だいたいバスドラって穴開いてますけど、SPECIAL OTHERSの場合は穴開いてないですからね。

日下:まぁスペアザくらいになったら何やってもいいのかもしれないよね。

滝:柔らかい音を追求して、膨らみを追求するようになると、穴も開けなくなるんだなって(笑)。