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MUSE音楽院×Skream! VOL.2

2012年11月号掲載

MUSE音楽院×Skream! VOL.2

Writer 沖 さやこ

MUSE音楽院とSkream!の共同企画として行われている"公開インタビュー講座"。音楽業界を志す学生を中心に、普段はなかなか見ることが出来ない生の現場を体感してもらうことをテーマに開催している。第2回目である今回は、今年6月に開催されたZepp Tokyo公演の模様を収録したDVD『LIVE AT ZEPP TOKYO 06.22.2012:エンペラー』をリリースし、11月には新木場STUDIO COASTとなんばHatchでの単独公演が決定しているモーモールルギャバンが登場。Zepp公演の話を中心に"ライヴの裏側"について迫った。ゲイリー・ビッチェの脱線から生まれる深い話、個性溢れるメンバー3人のバランスの良さ、お客様からの質疑応答ではまさかのパンティー・コールが起こるなど、和気藹々とした90分間のインタビュー。Skream!誌面とウェブ・サイトでは、その一部をご紹介しよう。

【公開インタビュー】
テーマ:ライヴの裏側
ゲスト:モーモールルギャバン
日程:10月4日(木)
開催地:MUSE音楽院本館
インタビュアー:沖 さやこ

-ライヴ前の練習はいつ頃から始めるのでしょうか?

ゲイリー・ビッチェ(以下ゲイリー):ライヴ前とかに関わらず、スタジオには基本的に暇さえあればずっと入ってます。

ユコ・カティ(以下ユコ):レコーディングの前とツアーの前とではちょっとスタジオでやってる内容が違うかもしれないですね。ライヴのときのテンションとレコーディングのときのテンションは違うんで。レコーディング前は......結構淡々としてますかね?ライヴ・リハは、ライヴの本番より、ほんのちょっと抑え目くらいの感じで。基本的にはあんな感じでパンイチですし(笑)。やってることは基礎的なことが多いかもしれないです。

T・マルガリータ(以下マル):大体ユコさんに"ここがだめだ""あれがだめだ"って指摘してもらって、次はここを気をつけようって感じですね。

-ユコさんはご意見番なんですね。逆にユコさんに対しておふたりが何か言うことはあるんですか?

ゲイリー:あります。"お前遅ぇよ!"

-"遅い"とは?

ゲイリー:"2時間遅刻してんじゃねーよ! 2時間はないよ2時間は!"

-はははははは、そっちですか(笑)。

ユコ:2時間はないよねぇ~(笑)。

ゲイリー:それまで俺とマルが練習してたんだけど、2時間遅れたユコさんがスタジオの扉開けて開口一番"本っっっ当下手だよね!!"

場内:(爆笑)

ユコ:だってさぁ、2時間やってたんでしょ? その結果でしょ? ひどいよね! ......っていう、言いたい放題な感じです(笑)。

-じゃあ皆さんのスタジオはそんな感じで仲良く......(笑)。

ゲイリー:いやいや、逆です逆(笑)。殺伐ですよ! 罵声が飛び交ってます。

-個人のトレーニングは何をなさっていますか?

ゲイリー:大体車で移動してるときは、俺がひとりで(ドラムのシュミレーションで)バタバタしてるもんね。ずーっとこんなんしてる(と言って実際やって見せる)。たまーにユコさんに"うるさい"って言われる。

マル:僕はメトロノームに合わせてエイトの練習をしたり、弱い指の強化をしたり。そんくらいですかね。あと、メトロノームを裏拍で取りながらそういう練習をしたり。

ユコ:わたしはあんまり家で練習しないんですよね。オンとオフを分けるほうで。普段あまり日常で音楽のこと考えてることがないほうです。普段はアニメを見たりとか、音楽以外のことで感動を得るようにしてて。音楽も自分の好きなものを聴くようにしてます。......あんまり研究熱心なほうではないです。好きなものをガツガツ食べるタイプというか。好きなことしか出来ないタイプなので、自分にプレッシャーを与えすぎず、ポジティヴに何でも出来る状態にしようとしてますね。

-なるほど。ライヴ前日はどういう心境でしょうか? 例えばこのZepp Tokyoはこれまでのワンマン会場で一番大きいところでしたけれど。

ユコ:......さすがに眠れなかったです。よく覚えてます。わたし、あんまり前日にプレッシャーとか感じてること滅多にないんですけど、やっぱりZepp Tokyoは違いましたね。未経験なんで準備のしようがなくて、この不安をどう処理したらいいか分からなくて、あがいてた記憶があります(笑)。

マル:僕は普通に寝れた記憶があります。前日から緊張はしないんですけど、1、2時間前から急に緊張するタイプで。でもやっぱり、Zeppのときの緊張具合はハンパじゃなかったですね。

ユコ:(マルは)大き目のライヴだと30分前くらいにバタバタし出すよね(笑)。"ヤバい! ヤバい!""吐きそう!"ってやっと事の重大さに気付くというか。

ゲイリー:俺そういうのは2011年で卒業しましたけどね。もうライヴ前にじたばたしないっす最近は。

-おっ、じゃあ今回も。

ゲイリー:......緊張しましたねぇ。

場内:(笑)

ゲイリー:でも2009年とかはひどかったですよ? 本番直前にいきなり泣き始めたり。ライヴ前はひどい情緒不安定。今はそういうのはないんですけど、やっぱ頻尿になりますね......。汚い話で申し訳ないんですけど(笑)、やっぱステージ上る前に、本能レベルで少しでも軽くしようとするんですよ体が。この前SHIBUYA-AXのイベントが、入り時間が1番早くて出番が1番最後で、入りから本番までの間に5回ウンコ出ました。

ユコ:えー! よくさぁ、そんな出すモンがあるよね!

-(笑)。緊張が体に出てきちゃうんですね。

ゲイリー:昔は心にも体にも出てたんですけど、それが体だけになって。これが体にも出なくなると、ライヴ直前にコロッケとか食べても大丈夫になるのかなぁって。ライヴ前に食えないのがね、地味に切ないんですよね。せっかくね、北海道から沖縄九州までいろんなところに行けるのにばくばくばくばく物が食えない。

ユコ:食べるものは凄く気を遣ってて。本番前は緊張してるから気持ち悪くなるんで、出来るだけ食べるのは3時間前まで。ちょっと軽めにって感じにしてます。でもわたしの場合はお腹が空きすぎてもだめで、どうしても食べたいときはファミチキを1個だけ食べます。

-ライヴを成功させる秘訣や、成功のために実行していることはありますか?

ユコ:失敗ばっかりですよ(笑)。終わった後は基本へこんでます。

ゲイリー:......何をもって成功というかっていうことですけどね。盛り上がったら成功っていうんだったら、"大成功の連続"ですけれども......大成功の連続ってやってる当事者が思ってたらすぐだめになるし。ライヴの出来に納得したら終わりなんですよね。納得出来るときもたまーにあるんですけどね。"今日はいったんじゃないかなー!"ってときがたまぁーにあって。

-ちなみにZepp Tokyoはいかがでしたか?

ゲイリー:そりゃあここ10年で最高のライヴやったに決まってるじゃないですか(笑)!

場内:(爆笑)

-この公演はライヴDVDになることが事前にアナウンスされましたが、こうやって映像に残ることはライヴのパフォーマンスに影響が出るのでしょうか?

ゲイリー:......んー、僕は影響してないと思うんすけどねぇ。Zepp Tokyoと京都ネガポジでそんなにテンション変わった気があんまりしないんです。だからネガポジのテンションでZepp Tokyoやるとこうなんだーって発見もいろいろあったし。基本的にやるべきことを一生懸命やるタイプなんで、会場やシチュエーションによって変えることはない、というか変えられない。常に客席を冷静に見る余裕がないくらい、絶叫してドラム叩いてるんでね。もうね、有酸素運動と無酸素運動を同時にやってるような感じなんですよね。ああだこうだ考えてる余裕もなくて。

-限界以上のパワーを振り絞る、身を削ったステージですもんね。

ゲイリー:でも最近気付いたことがあって。的確な角度でしっかりと叩くと、そこまで力を使わなくていいんだなぁって(笑)。

場内:(笑)

ゲイリー:昔からね、知ってたんですよ? 知ってたの! ある程度基礎練も20代前半くらいのときにやってたから、基礎に関してはこれくらいやってれば足りてるだろう! あとは気合いと力だ! って思ってたんです。でも本当に最近、的確な角度で脱力して叩いても、力じゃないと行くことが出来ないと思ってた領域まで行けたんです。更に、その状態でドラムを叩いてる自分の映像を撮ってもらったんですよ。それを見るとね、力で行ってたときよりも力強く見えるんですよ不思議と。うぉー!!って思って。より、ひとつ上の段階の脱力をゲイリーは身に付けた! この夏!......っていうすっごいリアルタイムな状況をお伝えしました(笑)。だから力を抜くことによって手に入れられることもあれば、失うこともあるんです。だから、得ることと失うことのバランスを見て、ここまで失っちゃいかん! と思ったら元に戻すんです。"3時間経ったら元に戻す"じゃないけれども! そうやって日々悪あがきをしております。

場内:(笑)

-ライヴ中にお互いのプレイや音を聴いて何か感じることはありますか? "あっ、今あいつ良かったわ"とか、その逆も然りですが。

ユコ:本番中は、本当に目立つときでないと気付かないかな。案外ステージの中ってクリアじゃないんですよ。普段の感覚を当てにしてやってたりするから、例えばソロでグレード・アップしてたら"おっ、今日ノッてんな!"とか、そういうのはありますね。

ゲイリー:リハと本番って音って絶対変わるし、特に僕の場合、返しがないんですよ。使ってないんですよね。会場によっては自分の音しか聴こえないんです。だからステージに上ったら一生懸命やるしかない。

ユコ:ステージの上って、多分皆さんが思ってるよりも聴こえてないんです。聴こえてるバンドさんも結構いると思うんですけど、うちはあんまり返しを入れないんで。わたしも基本的には自分の声しかもらってないんで、アンプから出てくるベースとドラムの生の音しかほぼ聴いてないです。

ゲイリー:その環境でライヴをやるとね、どこでライヴをするのも怖くないからいいっすよ。......でも言ってて思ったけど、自分の声ちゃんと返してもらったほうが歌うまくなるのかなぁ?

場内:(笑)

ゲイリー:でも難しいところなんですよね。返してもらってた時期も昔はあったんですよ。そしたら、プロデューサーから"お前は返さないほうがちゃんと歌えてる"って言われて。やっぱり返さないときは、ちゃんと歌わないと自分の声が聴こえないんですよね。お客さんが聴いてるスピーカーの音を自分でも聴いてるっていう状況なんです。専門用語で言うと回り込みってやつですね。そのくらいのほうがちゃんと歌えてるらしいんです。

ユコ:聴こえないと頑張るんですよね。聴こえないとまずいから、危機感で声を出すんで。ただ外の音が回り込んで聴こえたりするんで、結果それで声が出てるということなんですけどね。

ゲイリー:タムの音とかバスドラの音って、結構抜けないんですよね。だから自分の叩いたドラムの音を返してもらってたりもしてたんですけど、あれだめですよ。叩けてないのに叩けたつもりになるから。本当ね、僕、本当にドラム下手だけどね、抜ける音だけは出せるんです! んふふふふふ(笑)。

場内:(笑)

ユコ:実際聴こえないっていうのは出せてないってことなんで、それはどうしてもの場合はある程度モニターなりでカバーする......っていうのもひとつの方法なんですけど、それが当たり前になるとそっから成長がないわけですよね。だから、聴こえないなら聴こえるように叩けるようになればいい。それが結果としてはステップ・アップすることになるんで、あまりモニターがあるのが当たり前、モニターがあればいいや、っていうのはちょっと違うかなと思ってますね。

-ステージのセッティングが独特ですが、ああいうセットになった所以はどのようなものなのでしょう?

ゲイリー:これはですね......まず僕が左足を見られるのが嫌なんです! 左足はずっと(ハイハットを叩いてるから)貧乏ゆすりみたいでしょう? あと、正面から叩いてるとなんか地味に見えるんすよ。横から叩いてるとスティックが交差して軌道が綺麗に見えるんです。だから、俺はここ! って決めて必然的にこうなりました。完全に僕の自己中から始まったセットです。やっぱドラムはね、横から見たほうがかっこいい!

ユコ:最初ちょっともめたんですよね、わたしも下手が好きで。"左足見られたくないとかどうでもいいよそんなの! 変わんないよ!"って(笑)。いまだに右と左のかっこよさの違いが分かんないんですよね。分かんないよね?

マル:うん、(自分の位置からはゲイリーが)左から見えるけど、左のほうがかっこいいよ。上手にいてくれたほうが見えるからベースも弾きやすいし。

ゲイリー:えー! 左足ずっとハイハット叩いてこんなんすよ?(といってジェスチャーする)......ずっとこれとか恥ずかしいよ!

一同:(爆笑)

-たまにユコさんとゲイリーさんの場所を逆にしてみたらいかがですか?

ユコ:1回逆でやったことがあって。あのとき全然問題なかったし、わたし"あ~、やっぱいいわ下手!"って思ったもん。だから(ゲイリーが下手にいることは)まったく意味はないってことです。

ゲイリー:だから意味はあるって! ん~......問題はなかったけど問題がなかったらいいってわけじゃないじゃないですか! ね? やっぱね......くだらないこだわりって大事ですよ。本当に。まぁでも、マイクの位置的に、叩きながら逆を向いて歌わなきゃいけないのが若干......しんどいっちゃしんどい(笑)。ONE OK ROCKのTakaくんから"あれ絶対背中つるでしょ"って打ち上げで言われました。......うーん、たまに上手でやってみようかな。

-ユコさん目当てで上手にスタンバイしてたファンの人が、セットを見て"えっ、今日ゲイリーこっちなの!?"ってなるかもしれないですね(笑)。

ゲイリー:それちょっと面白いですね(笑)。フェス会場とかでやってみようか。

ユコ:もしくは幕があるところでね。バーン!と幕が開いたら"逆ぅー!?"みたいな。

-11月には新木場STUDIO COASTとなんばHatchでワンマン・ライヴですが。

ゲイリー:COASTは行ったことないんで実感が湧いてないところがあるんですけど、Hatchは普通に行ったもんね、外タレ見に。難波のQUATTROに初めて出たときもそうだったけど、音楽的に多感だった大学時代に憧れの人を見に行ったところなんで、凄く感慨深いです。

-Zepp Tokyoをこなせたのですから、余裕も出てくるのではないでしょうか?

ゲイリー:あのね、余裕なんてこれまで一度たりともありませんよ(笑)。何かを成し遂げたという実感が何ひとつないまま気付けばここまで来てました。今なんやかんや楽しい人生送らせてもらってるんで、これが一生続けばいいのにな~って思いながら、これが一生続かないことも分かってるから必死で頑張るんですよ。

ユコ:一生懸命やるのは当たり前のことなんで、それはこれからも変わらずやっていくことなんですけど。思い通りになったことなんて、全然ないですね。自分の納得する結果を出せるように、自分をコントロール出来るようになりたいです。

-それではCOASTとHatchのワンマンに向けての意気込みをお願いします。

マル:新木場となんばに限らずいつもそうなんですけど、日常をちょっとでも忘れて、異空間みたいにして、その場を楽しんでもらえるようなライヴになったらいいな、そういうライヴにしたいなと思っております。

ユコ:毎回そうなんですけど、見たことないものをお出ししていきたいので、いろいろ水面下で進んでいることもあります。なので新しいモーモールルギャバンを見せられるように頑張りたいと思います。

ゲイリー:こういうのはね、はっきりと宣言したほうがいいんでね。言っちゃいますけど。......Zeppは超えますよ。

場内:おお~!

ゲイリー:......(照れくさそうに"ぷっ"と噴き出す)。

場内:(笑)

ゲイリー:やっぱりね、自分たちの力だけじゃいいライヴなんて出来ないんです。特に俺とか怠け者だから、人から背中押されないといいパフォーマンス発揮できないんでね。みんなね、ブログとかTwitterとか2ちゃんとかで"COASTはZepp超えるらしいよ!"って書いちゃったらいいと思うんです。そしたらね、俺が"やべ"って頑張るから(笑)。大体僕の人生は見切り発車で、いろんなところを強打しながらなんやかんやでギリッギリ、アウトとセーフの瀬戸際で、若干だけセーフ寄りだった......ってことの連続で成り立ってきたんで。当日は楽しみにしててください。

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