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FoZZtone

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今年バンド結成10周年を迎え、さらに精力的な活動を行っているロック・バンドFoZZtoneが、MUSE音楽院×Skream!特別企画の公開講座に先生として登場。MUSE音楽院生と一般応募で集まった人たちに向けて授業を行った。Skream!WEBサイトでは、その一部分を公開。音楽に対する姿勢、楽曲作成の秘話など、FoZZtoneファンのみならず音楽ファンにとって非常にためになる講座となった。

FoZZtone:渡會将士 (Vo/Gt) 竹尾典明 (Gt) 菅野信昭 (Ba)

渡會:講師的なことをやらせて頂きたいと思います。よろしくお願い致します! 今日はFoZZtoneのお客さんとこの学校の学生さんも来られているとのことですが......ぶっちゃけ特に何を話すとかは決まってません。まずは皆さん"学生"という体でお話させて頂きます。この学校に通ってらっしゃる方は、この道のプロを目指されてる方が多いんじゃないかと思います。僕ら一応、プロ・ミュージシャンとして今日お呼び頂きまして。その辺のお話をしようかなと思っております。

それではまず、プロのミュージシャンとはどういうものなのか。言ったら、FoZZtoneというバンドは今、形態としてはインディーズ。インディペンデントです。その対極がメジャーという扱いになるわけですけれども、ご存知の通り今はメジャーのアーティストさんもインディーズのアーティストさんも、大して差がないです。僕らがまだ学生だった頃は、メジャー・レーベルと契約することが、プロのミュージシャンになるということだったんですね。でも最近はそういうこともないわけです。フェスの大トリを飾るようなアーティストさんも、インディーズで活動しているかたが多いです。メジャーとインディーズが、プロとノンプロの違いにはならないんですね。

じゃあその違いは何で決まるのかというと、言ってしまえば精神論です。大体こういう学校に講師で来るミュージシャンとか現場監督みたいな人は、精神論しか語らないんで(笑)、気楽に聞いて頂ければ。僕が考える"プロの条件"というものを挙げながら、皆さん自分のことと照らし合わせて、改めて考えて頂ければと思います。ではまず"プロフェッショナルとは!"......まずですね、今から言うことはとてもバカバカしいことです。なぜそんなバカバカしいことを言うのかを、改めて説明していきたいと思います。まずは、このお仕事だけで食べていっているということ。これは絶対的にプロの条件かなと思っております。何でこんなことを言うかというと、ご覧の方にもミュージシャンを目指している方や音楽に携わりたいと思っている方もたくさんいると思うんですが、音楽でご飯を食べていくというのはとてもとてもハードルが高いんです。これは暗黙の了解的に、あんまり言っちゃいけないかもしれない。でもぶっちゃけ、バンドマンは大体8割方バイトしてます。CDをリリースしてランキングにも上ってる、知名度もそこそこある人が、普通にバイトしないとやっていけない。これにはいろいろ理由がある。そういうものをうまく回して、頑張ってやっていこうというバンドさんも凄く増えていて、具体的にどういうことをしていくのかを挙げていくとキリがないですけど、取り敢えずこの第1条件である"食っていく"というのはとても大事なことです。

例えば照明、PAのプロ、マネージメントをやりたいとか、いろんなことを考えている人もいると思うんですが、基本なるべく早くアルバイトをやめてほしい。というのは、お金が貯まったらやろうとか、準備が出来たら移行しようとか、そういう方法を皆さん考えがちなんですけど、大体うまくいかないです。なぜかっつったら、お金が貯まらないから。絶対。......今回若い方が多いですが、いろいろ情報を吸収したりやりたいことが増えていって、そういうことにお金を使うのはとても悲しいことなんで。取り敢えず100万円貯めて起業しよう!という人で成功する人はもの凄く限られていて。だからまずそれは諦めて。取り敢えず、主任とかチーフとか店長に"もういいっす、やめます!"っつって、とにかく本職だけで何とか稼ぐ方法を考える。そっちのほうがとてもカツカツで厳しいけれども、楽しいです。そういう意味で、夢を追いかけるというのはとても大変なことだよ、と。とにかくアルバイトをしないということが、プロとしての自分を凄く上げてくれます。アルバイトをしながら本業のPAやバンドを何とか両立出来ている。そういう状況よりも、カツカツで大変だけど何とか廻っているというほうが、圧倒的に時間が増える。

FoZZtoneもメジャー・レーベルと契約をしていたときがあって、その後契約が満期で終わって、インディーズに戻りました。契約金とか払われたお金がなくなったので、そのときにちょっと僕がバイトをしたんです。バイトをしながらバンドをやったときに、とにかく時間がない。インディペンデントっていうのはとにかく全てのことを自分たちでやるから、いろいろ凝ったことをやるとそれに集中するしかない。いくらでも仕事はある。また、FoZZtoneというバンドは本当にめんどくさいバンドなんでね......。そういう新しい企画をいろいろ始めようと、その準備だったりで時間を凄く使っていたときに、アホかと。バイトをやめて、とにかく音楽だけで自分にご飯を食べさせてあげようと。そうすることで凄くテンションが上がるんですよ。メジャーとの契約が終わってまたインディペンデントに戻るというバンドも凄く多いんですけど、そういう中でも僕らと仲がいいバンドは元気なバンドが多いです。音楽だけで食っていくという......けじめ、決心を持つバンドが多い。

受講生からの質問:練習が持続しなくて、今となっては楽譜を見るだけで苦痛です。どうすれば良いでしょうか?

菅野:好きな人のコピーをするっていうのはどうでしょう。

渡會&竹尾:そうだね。

渡會:でもこういうことを言うのって、成長の過渡期が来てるのかな。

竹尾:楽器って、始めた1年2年は自主的にやっていくの。高1で始めたら、高3の頃に高1の後輩から"いやぁ、先輩マジ神っす!"みたいに言われんねん(一同笑)。

渡會&菅野:そうそう(笑)。

竹尾:自分の話でなんなんですけれど、プロになりたくて大阪から出てきて。地元では神の称号を得ていたわけですよ。他の高校からも言われてたくらいでね。"俺に敵う奴なんておらんやろ"って、18歳のいい感じのね、いい感じのそういうやつを持ちながら東京に出てきて。この2人と会う前に......今ってメンバー募集はネットとかで出来るけど、その頃は楽器屋とかの貼り紙やから。そういうのを見て26歳の人と初めて会って"セッションしよう"ってなったときに、なんですかこれ!? みたいな感じになって。全然弾けんかったのね。18歳で26歳の人とやるのはすっごく勇気の要ることでもあったし。僕のモチベーションの上げ方っていうのは、悔しい思いをし続けることかなと。とにかくムカつかせてくれ! って感じ。高校時代とかは後輩からちやほやされて調子こいていいと思うねん。高校という小さなところから出たときに、自分の性格に合ったモチベーションの上げ方とかね。俺はムカつかされることで上げていくスーパーサイヤ人系やけど(一同笑)、人によっては褒められたほうが伸びる人もいるやろうし、そういう人は"どうやったら褒められるようなものが出来るだろうか"っていうことを考えながらモチベーション上げて練習していったらいいんじゃないかなと。

渡會:あとさっき、キャノン(菅野)が言ってた通り、楽しいことをやっていくっていうのも大事で。その質問をしている人はある程度楽器がうまくなったのかなと思うんですね。

竹尾:壁にぶつかってんやな。

菅野:"楽譜を見るのが苦痛"って。

渡會:相当ノイローゼなってんなー(笑)! そういうときに楽しいことをやるっていうのがいいんじゃないかな。あるいは、1週間くらいやらないとか。僕は結構そっち系なんですよね。高校のときにスコアの細かいところは全然やらないで、歌って弾いてるのが楽しいなーと思ってやってて、嫌になったらやめて、やりたくなったらやって。そういうサイクルでやってました。だから楽しくやる方法を探していけばいいんじゃないかなと思います。......それに似たような質問がありまして。

受講生からの質問:FoZZtoneの影響でアコギを始めましたが、綺麗な音が出なくて泣きそうです。

竹尾:でも、最初は"音鳴ったわ!"ってことで満足しちゃうところを"綺麗な音が出ていない"と気付くのは、レベルが上がっているという証拠なので、それに自信を持って。どうやって近づいていくかを、ギター壊しちゃうくらいの勢いでいろいろ試して。遊びながらトライしてみて下さい。

受講生からの質問:ライヴで緊張しない方法を教えてください。

渡會:さんざん人前で演奏しているのにライヴで緊張するというね。昔は緊張しいだったけど、最近しないのは"ま、いっか"って(笑)。自分の頭の中の小さな世界で"こうやろう!"って決め込んで、それが出来ないことがテンパッたり緊張のもとになるんで。でもFoZZtoneは巧いし、失敗したりトラブッたりしたときの立て直しも早い。それを乗り越えて"あ、直った!"っていうときの喜びのほうが楽しかったりするんですよね。その場を楽しむっていうことが僕は出来るようになったかな。

受講生からの質問:バンド活動をする上で1番大事にしていることは何ですか?

渡會:これもさっき言ったかもしれないけど"続ければチャンスがあるから!"とかみんな言いがちなんだけど、そうじゃなくて続けていく間もずっとずっと技術を積み上げていく。FoZZtoneは有り難いことに、メジャー・レーベルの契約が終わった後も、ずっとお客さんの動員が延び続けている。それは単純に面白いライヴをやれている、あるいは前よりももっともっと引っかかりを作れている、とは思うんで。成長を止めないことかなと思いますね、僕は。

受講生からの質問:たくさんのミュージシャンがいる中で、デビュー出来たのは何の違いだと思いますか?

渡會:......これ、教えてもらったノウハウをそのまま生かそうっていう魂胆ですかね(笑)。

竹尾:運やと思います(一同笑)!"こんないい曲出来た!ラッキーやわ!"そんな感じやない?デビュー出来たことがラッキーやったかというと、俺らは別にそうは思ってないです。

渡會:そうですね。デビューするだけとか、CD出すだけとか、結構出来るのね。ではなくどんどん段階を踏むことのほうが大変です、ハードルも上がっていくし。業界的な話になるけど、デビューしたてって1番売りやすいのね。バンド・イメージとかもないし。そこからずっと一定線が続くと大人たちが"ん?"って言ってくるのね(笑)。だからこっちからいろんなアプローチをしていくことが凄く大事で。

竹尾:デビューしたときに人から言われたんですけど。"君らは東大に合格したんだ。そこから高級官僚になれるかどうかは、お前らの頑張りしだいやぞ"と。

渡會:またバブリーなことを(苦笑)。

竹尾:でもすっごい納得出来るなーと思って。若いほうがいいとか、メジャー・デビューがいいとか言うけど、全っ然違います。メジャー・デビューを目標に音楽を作るなんて、やめたほうがいいと思います。本当に。

渡會:メジャー・デビューしてかわいそうなバンド、本当にいっぱいいるから......。でも、失敗はしてほしいっていうのはある。"こいつらと契約するんじゃなかった"とか、もっといい条件があったんだ、あるいは凄くいいチームだと思ってたら実は違ったとか。1発で大学合格決まって、就職してというのは音楽においては不幸。失敗を経験出来ないから。そういう経験をすることは凄くいいことだから。だからメジャーとか考えないほうが、この時代は凄くいいと思います。

受講生からの質問:楽曲作りの方法について、理論ガチガチで作ってるのか、フィーリングで作っているのかどちらでしょうか?

渡會:理論ガチガチで作ってるのか、フィーリングで作ってるのか。......両方なんですよ。各々の楽器やパートに関しては、理論を持っています。それをみんなで持ち寄って合わせるというときに、絶対にガッチガチな話はしない。バンド以外の人に説明しなきゃいけなくなったときに理論を持ってくればいい。でもスタジオの中で理論トークだと、凄くつまんなくなるの。それこそ、メールでいいじゃんみたいな状態になりがちだから。だからそこで"すっげぇ!ドン!ドンって鳴るとすげえ!"みたいなこと言ってると(笑)......音楽って人の血を回してくれるけど、同時に滞らせたりもするわけ。現場は。だからそれが止まらないようにするには"肉と野菜両方食べよう"みたいな感じ。だからたまにはみんなで理論の話をしたりもするし。みんなで合わせてみて、これいいんじゃない?って言ってたものがのちのち調べてみたらちゃんとしたコードだったりとか、そういうこともあるし。......技術は礼儀だから。理論武装をしっかり持った上で、気持ちよく、楽しく。

竹尾:"理論なんてなくても曲なんて出来るんだよ!"っていう人もいっぱいいて。僕らも勿論そういうところもあるけど、理論は知ってて損はないからちゃんと勉強したほうがいいと思うし。自分がやってて気持ちいい、楽しいというものもあります。それで良かったこともあれば、理論をもっと知ってれば、もっと早く伝えられたこともいっぱいあったし。だから両方あればいいんじゃないかな。

渡會:メンバーと会話をするために、メンバーのひとりが理論ガチガチなら、それはそれでいいことで。なるべく自分たちが回れるように、いろんな言葉を使えるといいと思う。そのための技術だね。


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