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LIVE REPORT

Japanese

FoZZtone

Skream! マガジン 2015年04月号掲載

2015.02.28 @赤坂BLITZ

Writer 沖 さやこ

このライヴについて語る前に大事なことがある。それはFoZZtoneというバンドと観客との関係性だ。FoZZtoneと言えば音楽に様々な工夫をこらすだけではなく、そのアイディアを音楽以外の活動でも発揮するバンド。彼らが打ち出してきた前代未聞の企画は、リスナーが能動的になればなるほど充実感を得られるものだった。その企画の発想の発端はFoZZtone/渡會将士の"問題提起"でもある。彼らは"これってどうなの?"という疑問をそのまま発信するのではなく、そこに抗いながらも、その疑問の提示を最上に楽しめる方法にしてきた、常に1歩先を見ている聡明なバンドだ。そしてリスナーも様々な角度から彼らの表現に触れているうちに、楽しみの向こう側にある、彼らの想いに気がつくのは必然だ。その場しのぎで表面的な"楽しい""面白い"を与え合う関係性ではない。ファンはバンドを映す鏡。聡明なバンドには、聡明なファンがつくものである。

FoZZtone活動休止前最後となるこの日の赤坂BLITZ公演は、この信頼関係があってこそだった。私は当初、ずっとリスナーを引っ張り続けていたFoZZtoneは、この日もリスナーを笑顔の方角へと先導すると思っていた。だがステージに現れた彼らは、無理して笑うことも、取り繕うこともなく、現在のバンドの空気感から生まれる全力のエネルギーで、ライヴをやり切った。そしてその演奏に対して、リスナーはステージへ熱視線を送り、声を出して歌うことでまっすぐ応えた。正直、活動休止をするFoZZtoneが万全の健康体ではないのは事実だ。そしてファンとの間にこれだけの信頼関係がある今、健康を装うことが不自然である。ファンは最後までバンドをしっかりと支えた。そこには涙や悲しみ、寂しさ以上に"帰ってこなきゃ許さないんだから!"くらいの気持ちが漲っていた。バンドとファンの間に、ここまで深い関係性を築いているバンドは、FoZZtoneくらいしか思いつかない。

客入れBGMでPharrell Williamsの「Happy」が流れている最中に、少しずつ照明が暗くなっていく。観客は歓声を上げ、リズムに合わせてクラップを始めた。そこに最新アルバム『Return to Earth』のラストを飾る「Fortune kiss」をリアレンジした幻想的なSEが重なり、メンバーがゆっくりステージに現れた。1曲目は渡會のアルペジオで幕を開ける「口笛男」。少し声がかすれていたのも理由かもしれないが、いつもよりも強い集中力が彼の歌声から発せられる。その声にただただ聴き入る。続いては彼らのアンセム「LOVE」。このときも彼のフロアへ向けて伸ばす手など、ひとつひとつの挙動に激しさと力が入っていた。変な言い方かもしれないが、とてもフロントマンらしい。"自分がこのバンドを背負っている"と言わんばかりの気合いで、しばらく彼に釘づけだった。「Reach to Mars」は竹尾典明が派手で熱いギター・ソロで魅せ、バンドをしっかりと支えるベーシストの菅野信昭は、フロアを笑顔で見つめ、我々の抱えた緊張をほぐしてくれるようだ。過去アルバムのキー曲を序盤3曲で披露し、観客からも大歓声と拍手が沸く。

"とにかく笑って、めちゃくちゃに遊んで、楽しんでください"と渡會が言い、ファンク・テイストの演奏でコール&レスポンスを行うと「開きっぱなしの扉か俺は」へ。2番のAメロで歌詞をアレンジするなど、ユーモアを挟み込む。ぎらついた不穏な音色の「Anomaly」から、高揚感と力強さのある「JUMPING GIRL」「GO WAY GO WAY」に移ると、観客も大きな声を上げ楽曲を高める。そして菅野が弓でアップライト・ベースを弾く「Cry for the moon」で、渡會の歌はさらにエモーショナルに。クールなカッティングに憂いのある「Black Sheep Dog」では、アウトロの竹尾のギターの気迫に圧倒された。ミディアム・テンポの「ひかり」「Stairway to you」は、優しくもセンチメンタルで繊細な音でフロアを包んだ。やはり最新作『Return to Earth』は、FoZZtoneから世間への問題提起だ。

ライヴ後半はアルバムにもゲスト・アーティストとして参加した星羅をコーラスに迎え、穏やかで精神性がよく出たステージを展開する。「Shangri-La」では渡會が"もっとアホになれ!"とフロアに呼びかけ、星羅がシェイカーを振り、渡會と共に振りにも挑戦したりと、和やかでアットホームな雰囲気に。「TWILIGHT」のアウトロで"みなさまそのままお手を拝借"というお馴染みの台詞で「Stomp the Earth」。渡會、菅野、星羅の3人で動きを合わせたり、続いての「Gloria」では高らかなクラップとコール&レスポンスが起こり、竹尾がフロアにマイクを向けるなどして煽る。

「Fortune kiss」を終えて星羅がステージから去ると、渡會が口を開いた。"『Reach to Mars』くらいから、いつの間にかゴールを決めなきゃいけなくなってきたんですよね。100万稼がないととか、BLITZよりも大きなところでライヴをしないととか、そういうものが全部バカらしいと思った""よくわからないゴールに辿り着いたら終わるのか?とも思って。だからそれを取っ払うためにお休みをいただきたいと思っています" そして"ゴールはない、一生進み続けるだけだと思った""これからもメンバー個々で真剣に音楽に向かい合っていく"と続けた。そのあと演奏された「Message from the front」はこの日一の気魄で、渡會の歌に重なる歌詞のひとつひとつが重く、深く刺さる。そこに心を重ねるように奏でられる音もまた、こちらの心を掴んで離さなかった。

アンコールでは「音楽」「茶の花」を披露したあとに再び星羅を招き、渡會が"明日に向かって生きていこう、3月の始まりに、「世界の始まりに」"と同曲を演奏。終盤で渡會は星羅にギターを託し、フロアに飛び込んだ。メンバーがステージから去ったあともフロアは「LOVE」のストンプ&クラップでWアンコールを求める。そしてステージに戻ってきた竹尾が"何年後に帰ってくるかもわかりません、帰ってくるかもわかりません。待ってろとは言いません。だけど戻ってきたときはまた、何度だって口説いたるからな!"と言うと、フロアからは歓声が起こった。ラストの「フラッシュワープ」の"また会おうよ"という言葉に、強い期待と願いを抱いてしまう。客出しBGMが流れてもフロアの合唱は止まず、観客たちはその場から動こうとしない。だが去年みたいにFoZZtoneは最後、またステージに出てくる様子がない。このとき、最後という言葉を強く突きつけられ、途轍もない悲しみに襲われた。少しずつフロアからも人が消えていく。私も視線をステージから逸らしていた。だが残ったファンたちは諦めなかった、歌うことをやめなかった。するとフロアから歓声が起きた。再びメンバーがステージへと現れたのだ。

渡會は再び深く感謝の言葉を告げると、全国各地でファンを褒められたというエピソードを明かす。"ファンばかり褒められて、俺らも褒めて!と思った"と渡會は笑わせたが、ファンの素晴らしい行為もバンドのポリシーあってこそだ。フロアからの大きな愛を受け取った彼は"君たちの思いにもちゃんと向き合っていく"とまっすぐ観客を見て言うと、フロアもあたたかい拍手と歓声でその想いに応えた。

FoZZtoneの活動は一旦ここで終わりを迎える。渡會は早速、4月からソロ活動を始めるらしい。菅野と竹尾も音楽活動を続けるとのことだ。この先FoZZtoneがどうなるのかは現段階ではわからない。だがバンドが休止中でも、彼らが前進を止めないことはたしかである。その3本の道がまたひとつに合わさったときに見えるであろう景色に思いを馳せてしまうのは、どうしたって仕方がないことなのだ。

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