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Japanese

MUSE音楽院×Skream! VOL.3

2012年12月号掲載

MUSE音楽院×Skream! VOL.3

Writer 伊藤 啓太

Skream!とMUSE音楽院の共同企画の公開インタビュー。第1回はグッドモーニングアメリカ、第2回はモーモールルギャバン、そして今回の第3回ではTHEラブ人間から金田康平(歌手)を招いて行われた。2011年にデビュー、今年に入ってからはファースト・フル・アルバム『恋に似ている』をリリース。そして渋谷CLUB QUATTRO、そして恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンを大成功させ、12月19日にはニュー・シングル『アンカー ソング』をリリースし、12月23日にはTHEラブ人間主催のライヴハウスサーキット型イベント"下北沢にて'12"を開催。バンドの中心人物である金田康平に話を伺った。

【公開インタビュー】
テーマ:音楽と町
ゲスト:金田康平(THEラブ人間)
日程:11月19日(月)
開催地:MUSE音楽院本館
インタビュアー:Skream!編集部

-1stアルバム『恋に似ている』をリリースして、ツアーを回り、ワンマンを今までの規模としては1番大きなLIQUIDROOMで成功させました。その中でバンドとして何か明確な変化は起こりましたか?

明確な変化......『恋に似ている』っていうアルバムは結成してからの3年半を全部つぎ込んだアルバムって前回のインタビューで話したんだけど、リリースしてすぐツアーを回って、その段階でもう『恋に似ている』の録音の時の自分たちはいないわけですよ。あの『恋に似ている』までの時期の自分たちのやりかたっていうものが体に合わなくなってきたんだなっていうことが1つありましたね。

-合わなくなってきた。

LIQUIDROOM以降やっているライヴでもわかったんですけど。曲以外の言葉を用いてのライヴ――MCで喋っていて、"あぁ、これがなくなったらいいなぁ"って思ったんですよね。30分の、1時間の、1時間半のライヴをやっていて、この喋っている時間も曲ができたら良いなぁってまず1つ思って。そこで今まで喋っていたのは、喋りたいから喋っていたんだけど、喋るってことが無垢さとか、純粋さだったりしたんですよ。でも『恋に似ている』のツアーの途中くらいで喋っている自分に気持ち悪さを覚えたというか、この喋っている時間があったらもう1曲多くやりたいなって思って"喋りたくねぇ"って思いましたね。

-今までのMCって金田さんにとってはどんな意味合いだったんですかね。お客さんとのコミュニケーションなのか、MCでなければ伝えられないことを話していたのか。

その時その時で喋ることっていうのは浮かんで喋るんだけど。コミュニケーション......かなぁ......コミュニケーションではないかなぁ。その時はその曲であったりこのライヴっていうものがどんなものかってもっとわかりやすく伝えるための1つの言葉だったり会話だったりしたんですけど。それなしで演奏だけして、曲を歌うことでそれを伝えられたらいいなっていうことを思ったんですよね。それが『恋に似ている』のツアーが終わってからの1番大きい変化だったりもしますね。

-それは徐々に変わっていったんですか?

うん。ツアーで長崎のライヴの時に一番初めに"ぬぬっ"ってなって。もしかしたらこれ(MC)に頼っているとこもあるなって。だからもしなくなったらどんな世界があるのかなぁって思って。とりあえず1人で考えて、LIQUIDROOMでのツアー・ファイナルが終わってからメンバーに話したんですよね。

-メンバーのリアクションは。

ベースのえみは"へぇー、そうなんだぁー"みたいなこと言って、谷崎ってヴァイオリンのやつは"あぁ、そうなんすか"って。ドラムのケンジは"金ちゃんのやりたいようにやったほうがいいよ!"って言って。ツネは"俺はよく、わからんわー"って。

-その"わからん"はネガティヴな"わからん"だったんですか?

多分ねぇ、ネガティヴなやつ。"MCもお前の持ち味じゃけぇ"みたいなことを言ってて、広島出身だからね(笑)。多分その時は『恋に似ている』以降に制作している曲たちにまだどっぷりと自分たちの生活が入っていなかったからわかんないのかなって思って。メンバーにちょっと1回今俺はこんなモードだからって、『恋に似ている』っていうアルバムができてツアー回り終わって、今出来てきている曲ってこんな感じだからって話したんです。『恋に似ている』までの曲だけではMCゼロでやろうとしてもできない、多分喋りたくなっちゃうから喋っていたんだけど。それ以降の楽曲たちを織り交ぜて、楽曲だけで今日の素晴らしさだったり曲そのものの力を伝えるっていうことをやりたいって話して。そういう楽曲が揃っているからって言って、一緒にアレンジしてわかってもらった感じですね。その時にはツネも"あぁ、なんとなく言ってることわかるけぇのぅ"みたいなこと言ってましたよ。

-では今バンドとしては金田さんの感覚をTHEラブ人間として共有できているってことですね。

と、思います。

-実際ここ最近のライヴをMCなしでやってみてどうですか?感触は。

気持ち良いですねー。演奏だけで今日の美しさとか素晴らしさとかを伝えるっていうことをやって、それができた時は気持ち良いです。THEラブ人間は第2期になってからまだ試行錯誤中ですけど、今まで感じたことなかったですね。お客さんと喋ったりしているわけでもないし言葉を投げかけたりしているわけじゃないけど。言葉を投げかけたり説明している時よりかよっぽどお客さんと繋がっている気がしました。お客さんも前よりシリアスというか、"音楽聴きに来てんだよ"って感覚と俺たちの"音楽やりに来てんだよ"って感覚の共有をバシッと感じることができましたね。前回自分たちの自主企画で、東京と名古屋と岡山の3箇所回ったんですけど、それの名古屋でSAKANAMONとグッドモーニングアメリカとの3マンの時に思いましたね。さっきまでグッドモーニングアメリカのライヴでダイヴしたりしていた子たちが、ジロって睨むようにライヴに集中している姿はたまらなかったですね。"これだ"って思いました。楽しい曲の時は笑っているし。

-お客さんお客さんとの関係性も変わってきているんですね。

......シリアスは違うかな。真面目、真っ当ですね。音楽以外――これは5人全員の意見じゃないんでなんとも言えないんですけど。音楽以外のものを排除しようとしているんですよね、多分俺は最近、良いことか悪いことかわからないですけど。

-それはステージの上での話?

できる限り自分のことであったり、自分の楽曲であったり、バンドの出している音だったり。音楽以外のことは力を入れる必要がないというか、音楽のことしか考えない。メジャー・デビューして1年経って、まぁそろそろ音楽だけでなんか家賃払ったりとかメシ食ったりするようになってスッゴク楽しいんですよね。まぁ僕言っても3年くらいバイトしてないんですけど、ダメな人だったから(笑)。街を歩いていても、"あ、あの曲のあそこの部分"とか、"これ歌詞にできる"とか。ほんとにそれしか今考えてなくて。そうすると音楽以外のものに魅力を感じなくなるんですね、自分が出すってなった時に。僕が考えるのは音楽だけでいいやって。だからできる限りステージの上も音楽を演奏して歌う以外のもので勝負する必要がないと思っていますね。でもうちのキーボードのツネ君とかは体育祭みたいな動きするんですよ、端から端までステージ使える人なんでね、キーボードなのに(笑)。キーボードだからほんとは動けないんですよ(笑)? ああいう人もいるので、これは俺の個人的な考えなので、だからライヴ観るときにはあんまり考えないでほしいです。音楽やっている時はあんまり考えなくていいやって『恋に似ている』のツアー中に多分思ったんだと思う。そこだけで勝負できれば、多分後2~3年で音楽はやめないかな。ちゃんと一生死ぬまで歌えるんじゃないかなとは思いますね、音楽だけで戦い続ければ。

-『恋に似ている』はあの時のTHEラブ人間としての初期衝動を全てを詰めこんで燃えカスになったと言っていました。そして12月には新しいシングル『アンカーソング』がリリースされます。この曲は既にライヴでは披露されていますが、この曲がTHEラブ人間の楽曲になったのはいつくらいだったんですか?

えーっと、楽曲自体は去年の12月に「アンカーソング」って名前じゃなくて、「短距離走者の孤独」っていう歌を作ったんですね。それが「アンカーソング」の元になるんですけど。あることがあって「アンカーソング」っていうタイトルに変えて、内容も変えて、バンドに持っていって。そして3月の渋谷QUATTROのワンマンで初めてやったとかじゃないかなぁ。

-THEラブ人間の第1期が『恋に似ている』で終わり、第2期のTHEラブ人間の始まりにこの曲を選んだ理由は?

この曲を選んだって理由は......俺だけで決めているわけじゃなくて、レーベル、事務所、メンバーみんなで決めているんですけど。正直どの曲でも良かった、俺はね。『恋に似ている』以降に作って、俺がバンドでやりたいって思っている曲であればどの曲も同価値なんで俺はどれでも良いんですけど。でも「アンカーソング」にして良かったなって思っているのが、今回の第2期のテーマの中で1番入り口が広いタイプの曲だったんですよね。ちょっとそのテーマを受け止めるにはもしかしたらもっと重い曲、"ちょっと重過ぎるわこれ!"っていう曲が多いと思っていて、その中で「アンカーソング」は凄くライトというか、入り口がとにかく広い、どっからでも入れますよっていうある種のダンス・ミュージックというか、体が踊って楽しい、心が躍って楽しい。そういう感覚が1番初めにきてくれる曲だと思います。それと同時に歌の内容というかメッセージが一緒にきてくれるタイプの曲なんで。あぁ、楽しいとか"ニコニコ"とか、ニコニコは違うか、"ルンルン"みたいな。

-あんまり変わってないけど(笑)。

そうですね(笑)。違うか......スキップですね。曲聴いてこう、リズムだ!リズムで体が動くっていうこと、体が動ける曲が良かった、楽曲だけで。だからどの曲でも良かったけど、この曲で良かったなぁって思っているところですね。

-確かにこの楽曲は今までのTHEラブ人間の中でも抜けてポップですよね、アレンジも凄くバンド然としているし。個人的にこの曲を次のシングルとして聴いたときに思ったのは今凄くTHEラブ人間というバンド、バンド・サウンドを楽しめているのかなって。

ある、あるわ。多分『恋に似ている』ってアルバムはフォーク・アルバムなんですよ。アコギ1本で歌える。多分アコギ1本で絶対歌えるっていう曲が集まったのが『恋に似ている』なんですよね。で、「アンカーソング」は自分がTHEラブ人間の人として書いているんだろうなぁ、というのが後々わかるというか。アコギ1本で弾いたら物足りないと思う、俺が。バンド楽しいなぁとは思いましたね。要はでっかい音で鳴らした方がかっこいい曲が「アンカーソング」だと思う。『恋に似ている』の曲と違うのは「アンカーソング」は多分俺がアコギ1本で弾いてもあんまりかっこよくない。かっこいいけどバンドの方がいいよって言うくらい、多分THEラブ人間の曲なんだと思います。俺が歌詞書いて曲かいてるけど、これはTHEラブ人間の曲なんだなというか5人で作っているというものなのかなと。

-そう感じたのは『恋に似ている』を作った時に最後の最後に燃えカスに火をつけて書いたっていう曲「悪党になれたなら」が、凄くバンド・サウンドとして洗練されていたから、その影響なのかなと。

あぁ、片鱗あったんだなぁ。多分「悪党になれたなら」と「アンカーソング」は元ネタを作ったのは1ヶ月も離れていないんですよね。そういう点で『恋に似ている』の時に"後、2曲書くのかぁ......"って思って、でもインディーズ時代の「京王線」とか「パニックルーム」っていう曲とかをもう1回録るのは嫌だなぁって。既に絶版になっているCDを中古CD屋さんで探して買うのに凄く興奮していたんですよ、HUSKING BEEのスプリット探して津田沼のユニオンまで行ったりとか。「悪党になれたなら」と「わかってくれない」を2曲書き下ろした時に、メンバーに頼っていたところあるのかもしれないですね、バンドで"ドーン!"っていう力をくれよって。「わかってくれない」は昔からあったからフォークっぽいけど。

-絶版になっている曲を再録したくない、という思いがありながら今回のシングルにインディーズ時代の楽曲の「黒いドロドロ」を収録した理由は?

あぁ、これもね、僕決めてないんでよくわかんないんですけど(笑)。かっこいい曲だから入れたんだと思います。

-この楽曲アレンジは相当いじったんですか?

いやーもうかっこいいですよ。まぁ僕は入れるのを反対していたんですけど「黒いドロドロ」入れるのは、昔の曲だからね。ただ入れるってなったのであれば、かっこいいアレンジしようかなと思って。この「黒いドロドロ」という曲がねー、インディーズの時の盤はケンジがドラム叩いてないんですよね。だからケンジに1回任せてみたいなと思っていて。ドラムが違ったらもう曲も違うみたいなもんですからね。でもあの人おとなしい人なんで、前のドラムのパターンを思いっきり変えるタイプではないんですよね、優しいから。ケンジは優しいんです、大好きなんですよね......のメンバーとかは興味ないんですけどケンジは大好きです、タメなんで。他のメンバーは興味ないですけど。ケンジは大好きです、そこだけは守りたい、ケンジだけは守りたい(笑)。じゃなくて「黒いドロドロ」の話しですよね。そこでケンジに任してみたんだけどしょぼくれていたんで、1回"ガンっ!"て壊すくらいの気持ちでやってみようって言ってやったら。やっぱ丸まっているんですよねなんというか。そもそも勝てるかなって、その曲を作った当時の自分に。3年前なんでね書いたのは。あの曲は当時下北に住んでいて、家に帰った時に彼女が寝ているんです、合鍵渡していたから。帰ったら寝ていて、俺の寝るスペースに彼女の携帯があって、邪魔だなと思ってどかそうと思ったら間違えてピッてどっか押してしまって。そしたら完全に浮気のメールをしていて。

-間違えて開いてしまったの?

いや、もう開いたままで寝ていて。あ、見る気なかったけど見ちゃったわと思って。それで怒り、怒り狂い......ここちょっと省略しますわ(笑)。怒り狂い追い出し、怒り狂い(省略)追い出し。扉閉めてバッ!て書いた曲で、怒りとか憎しみというかそれを完全に封じ込めたくて。なのに好きみたいなとこもあんのよ、浮気されているのに。浮気している、わかった、省略もあった、追い出した、なのに好きみたいな。怒りだか憎しみだか自分への怒りだとか。そういうのを一気に封じ込めてその場でMTRに録って、歌詞も書かずに歌ったんですよね、その場で出てきた歌詞で。録音したやつを後で文字に起こしていったような曲だったから、だから勝つには手ごわい相手というか――3年前だからさ、3年前の憎しみや怒りって美化するでしょ? 今回レコーディングするにあたってとにかく思い出補正が邪魔で(笑)。アレンジも多分そうなんです、多分俺がダメだったんだって思ったの、ケンジが丸まってんじゃなくて、メンバーが丸まっているんじゃなくて、とにかく俺があの時の憎しみを思い出さない限りは書けんと。なので難航したアレンジなんですけど、最後アレンジが煮詰まってきた時にはTHEラブ人間の今まで出してきたCDの中で1番人殺しなサウンドになったとは思いますね。今まで「レイプミー」という曲のサウンドが1番鋭角でした、突き刺すというか、丸いところが一切ない音で録ったんですけど。あの「レイプミー」っていう曲は包み込むように伝えるんじゃなくて刺すようにいってるから、抜けないんですよね、1回深く刺さったら抜けないようなサウンドというか。それはできた、ラスト5秒がめちゃくちゃかっこいい、今回の「黒いドロドロ」はラスト5秒を楽しみにしていただきたいんですけど、歌録りがね、怒りと憎しみをどこまで出せんのみたいな。正直、まずやりたくなかったってのが1つね。でも録る、理由はかっこいい曲だから。だったらやるって決めたらやるよってかっこいいアレンジができた。でも歌録りがね......インディーズ盤は音も外してるし声も出てないけど、とにかく憎しみまみれなんですよ。でもやりたくない曲だなぁとか、そういうのじゃないわって、だって俺プロだもん。ちょっと2年前インディーズの時だったら、あーだこーだ言って絶対やんねぇって言ってたんだけど、いや俺はプロだもんって思って。かっこいい仕事したいわって思ったんですよね。3年前のかっこいい歌を歌いますよってなれたから。歌録り後ブースでぶっ倒れるくらい良い歌を歌えましたよ。

-表現者としての意地かな。

うん、そう。いや、表現者なんてかっこいい話じゃなくて、プロとしての意地ですね、金貰って歌ってるから。だったら3年前よりも良い歌を録らなきゃアカン!って思って。だから「黒いドロドロ」は演奏はラスト5秒で、歌は頭から最後まで3年前よりいい曲になりました。

-話が前後してしまいますが、「アンカーソング」のアレンジには鈴木秋則さんが参加されていますね、クレジットにバンドのメンバー以外の名前が入るのは初めて?

初めてですねそういえば。

-因みに鈴木さんは元センチメンタルバスですよね。どういった経緯で一緒にやることになったんですか?

そうですね、大太鼓叩いてた、ピアノですけど(笑)。「アンカーソング」のアレンジをしてもらったんですけど、一緒に曲書いているとは違うんだけどある種共同作業で一緒にやれたんですよね。秋則さんはLIQUIDROOM最初に観に来たのかな、うちのディレクターがけっこう前から知り合いで、「アンカーソング」をもっと良いものにしようよっていう話になって。秋則君にやってもらいたいんだけどっていうことを言っていたから1度会わせてくださいと言って会って。今回一緒にやってもらったって感じです。

-今回一緒に制作していかがでした?

1回会わせてくれって言ったのはちゃんと話せる人かどうか、あの人の作品がかっこいいのは知っているから、腕は良いんですけどちゃんとこっちの意見が通るかどうか、やっぱバンドがやってるもんだから、俺が作っているもんだから、そこの1番美味しい部分を削らないようにしなきゃなって思っていたんですよね。そこを踏まえてもっと豊かにしてもらいたいから、ちゃんとこっちの意見を聞く人かどうかっていうのを知りたかったんですよね。それでメチャクチャなパーティー野郎だったんですよ、とにかく。

-イメージどおりの人だね。

うん、グランド・ピアノからダイヴするようなタイプの人なんで。ほんとちょっとぶっ飛んでいて。そもそもアレンジャーっていうよりミュージシャンってのが良かったですね、今でもバンドをやっているってことが重要だなとは思ったんだけど。こちらのことをミュージシャンとして接してくれるし、向こうのことをアレンジャーだけどミュージシャンだよっていうように扱えたから上手く喋りやすかったですね。あの人のスタジオで歌も録りました。

-"下北沢にて"について聞かせて下さい。まずこのイベントを開催しようと思った趣旨、意図を教えてください。

元々は僕とキーボードのツネ・モリサワが2008年かな?THEラブ人間組む前から知り合いだったんですけど。下北の440っていうライヴハウスの前の道がたまに歩行者天国になるんです。歩行者天国にして、あそこに野外ステージみたいなでっかい櫓を立てて、そこでライヴをやりてぇみたいな話をしたんですよね、多分ツネが言ったと思うんですけど。それで、あぁ面白いねって、下北で野外でフェスというか祭りみたいな音楽ってないもんねって、そういうのあったら面白いねみたいな話をして。そしたらその後に一緒にバンドを組むようになったんですよね。バンド組んで最初の1年はライヴハウスの中で普通にやってたんですけど2年目になった時にツネが"あの話覚えている?あれ、THEラブ人間でやろうよ。"っていう話になって、でも櫓無理だったんです。

-それは物理的に?

俺もあんまり覚えてないんですけど、とりあえず今の俺らでは無理、みたいな。世田谷区と一緒に何かをやれるようになるまでは無理っていって。じゃあツアーも出るしファイナルで3会場くらいで往来自由のフェスみたいなのやろうよってなって。俺そういうイベント行ったことなかったからあんまりイメージわかなかったんだけど。でもバンド組んで1年で、カッコイイと思えるバンドの友達もいっぱいできたし見てもらいたいね、みたいな。THEラブ人間のこと好きな人にかっこいいバンド他にもいるって、まぁお人好しですよね。

-お人好し(笑)。

ほんと(笑)。俺はほんとTHEラブ人間ってお人好しだなぁって思うんですけど、でもそうやって成長してきたんですよね。だからこのイベントは1回目からのテーマは"出会い"ってのがあって、1回目のテーマは"出会いを見せ付ける"だったんです。"出会いを見せびらかす"でもある。こんな良いバンドと1年で出会いました、みなさんも好きになってくださいどうぞっていうものにしました。"下北沢にて"やるまでの2009年からの1年間も2000円×20人とかのノルマとかを払って、1日1回ライヴやるのに人を呼べなかった分ライヴハウスに俺らが払ったりしてライヴをやり続けた。1ヶ月で10本ライヴをやるから40万円かかる。1人もお客さんいない時期とかは40万くらいぐらい払ったりしてやってたけど、そういう時にバンドが呼んでくれたりするんですよ、自主企画っていうものに。バンドが好きなバンドを呼んで、5バンドとかでやる、それに呼ばれるのが嬉しかったんです。それが積み重なって積み重なって"下北沢にて"の1年目まで辿りつけたから、さっき言ってたそうやって成長してきたっていう"お人好しなやつら"と、俺らもお人好しで、出会いが生まれていく循環というかね。そういうものをいつかは忘れるのかもしれないけど、忘れるまではやろうかなっていうコンセプトですよね。"出会い"っていうテーマで1年目はやった。

-今回は様々なイベントとのコラボレーションを行っていますね。

テーマが"出会い"なんで。実は発表しているバンドとかも仲良いバンド呼んでいるだけではなくて、前回の"下北沢にて"から今回の"下北沢にて"までに出会った人たちを呼んでいたりして。例えばshima fesっていうイベントは香川県の小豆島のロック・フェス、俺たちも出た、曽我部さんも出た。FREE THROWとかNew Action!とかBeat Happening!とかは東京のイベント。下北でしかライヴをやっていなかった俺たちが初めて新宿でライヴをやったのはNew!ACTIONで。後は大阪の見放題っていうイベントがあって、これは大阪のミナミでやっているサーキット・イベントだったりして。ようは俺たちがTHEラブ人間という存在になって、色んな街に行って、歌って、音楽を通して知り合った人たちとの出会いを、皆さんにもそこに出会ってほしいというだけでやっているイベントなんです。香川のイベントにはなかなか行けないからさ、行こうと思えば勿論行けるけど時間もお金もかかって。それを東京で1回お試しじゃないけど、どんな雰囲気かわかって、それで来年のshima fesにみんなが行ったりしたら嬉しいですよね、それだけで呼んでいたりします。

-なるほど、ではTHEラブ人間にとって下北沢ってすごく重要な街だと思いますが、THEラブ人間にとって下北沢ってどんな街でしょうか。

1番最初は憧れの街かな、曽我部恵一がチャリで走っているっていう噂を聞いて、中学生の時に行ったらほんとにいて、それが僕の最初の下北沢なんです、憧れっていうか。それでその後に服買いに行ったりレコード買いに行ったりするのが当たり前になって、そして住む。住んだら悪いところがたくさん見えてきて、やっぱり通うと住むは違うなって。悪いところは言わないですけど、僕の個人的な悪いところだから人に言うようなことじゃないんで。それで今離れて、今は下北に住んでいないんですけど離れるとまた愛しくなって。結婚とかしたらまた下北に住もうかなと思うんですけど。下北沢のライヴハウスで俺は働いていて、ツネも働いていて谷崎も働いていて、それで結成して。下北沢がどんな存在かっつーと、最早故郷ですねバンドにとっての。これは冗談じゃなくて、今だからこそ北海道から九州の方までライヴをやりに行って、行ったら1人でもTHEラブ人間を好きな人がいる状況になっていて。そんな時に振り返ったらこの5人での故郷っていうのは下北沢で、下北に帰ってきた時のホッとしたりだとか、あぁ、つまんねぇ店ばっか増えてきたなとか、知ってるんですよね、下北のことをね。だからほんと故郷みたいです、変わっていくなぁっていうのも見たし、時計台が無くなって。だからバンドにとっては故郷です、下北沢は。

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