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INTERVIEW

Japanese

モーモールルギャバン

2016年07月号掲載

モーモールルギャバン

Member:ゲイリー・ビッチェ(Dr/Vo) ユコ=カティ(Key/Vo) T-マルガリータ(Ba)

Interviewer:沖 さやこ

モーモールルギャバンの1年ぶりとなる新作『PIRATES of Dr.PANTY』は、彼ら史上最もシンプルで、エモーショナルで、センチメンタルで、ロマンチックだ。それはなぜかというと、ゲイリー・ビッチェという人間から生まれる世界観が前面に出ているからである。すべての作詞作曲を彼が手掛け、彼の作ったデモに忠実にユコ=カティが音色を決めていったという。今までとは異なる方法論の中での制作でありながら、これまで培ってきたモーモールルギャバンらしさは失われていない。バンドの歴史とさらに高い精度を求める精神が生んだ新境地、それはなんて輝かしいのだろうか。

-モーモールルギャバンは約10ヶ月のライヴ活動休止期間(※2014年5月~2015年3月)を経て完成した4thフル・アルバム『シャンゼリゼ』を2015年6月にリリース。秋からは"Would you be my friend?"と題した22本のツーマン、2本のワンマンからなるロング・ツアーを行いました。振り返ってみて、どんなツアーになりましたか?

ゲイリー:進化しすぎてツーマンでも昔のワンマンと同じくらいの曲数ができるようになっちゃって。15~17曲くらいやったらお客さんが喜んでくれるかなー......って。今のライヴの30分セットでも『シャンゼリゼ』の曲を半分くらい入れてやってるくらい――やっぱね、『シャンゼリゼ』は名盤なんですよね(笑)。これまた初期のテッパン曲もよくできてるので(笑)、初期の曲と『シャンゼリゼ』の曲をやれば我々のファンは大体みんな満足してくれる。残り2、3曲で"これは俺たちのエゴだからお前たちに押しつける!"みたいなことが非常に楽しくできました。そういう状態であってもお客さんの満足度は非常に高かったツアーだったと思います。あとは、いろんなバンドとツーマンをやって、友達が増えていきましたね。

ユコ:"Would you be my friend?"ってツアーだったしね。

ゲイリー:T-マルガリータさんのLINE友達を100人増やすことが目的だったのに、気がついたら俺ばっかり友達が増えちゃって! バンドマンはあまり知らない者同士だと陰口を叩き合う文化がどうしてもあるんですけど(笑)、例えばこの(Skream!2016年5月号の)表紙のcinema staffは5年前に"スペースシャワー列伝JAPAN TOUR"(※2011年1月開催/出演:plenty、[Alexandros]、cinema staff、モーモールルギャバン)を一緒に回ってるから、"シネマかっこつけすぎ! もっと茶化したアー写撮ればいいのに!"みたいなことを本人に言えちゃうくらいの仲なんですよね。今回のアルバムの"シャンペイン"(Track.3)という曲タイトルも、当時[Alexandros](※2014年に[Champagne]から[Alexandros]に改名)と一緒にツアーを回っていなかったら怖くて名前をつけられなかった(笑)。今は本人に伝わっても"またゲイリーがやりやがった(笑)"みたいな感じで許してくれるだろうなと。ツーマン・ツアーで対バンしたひめキュンフルーツ缶のメンバーには俺が一方的に恋愛アドバイスをしたり、group_inouのメンバーから何ヶ月も前にもらってたメールを返してなくて"あ、そういえば返してなかった! 今度会ったときに謝ろう"みたいな......そういう関係ってやっぱりいいなぁと思うんですよね。今まで一匹狼みたいに頑張ってたんですけど――

ユコ:"一匹狼"というかネクラだから他のバンドに話しかけてこなかっただけだよね(笑)?

-(笑)"Would you be my friend?"のツアー・ファイナル、Zepp DiverCity TOKYO(※2015年12月12日開催)にて今作『PIRATES of Dr.PANTY』のリリースが発表されました。この時点で制作状況はいかがでしたか?

ゲイリー:発表されたころは、すしおさん(アニメーター)がビジュアルデザイナーとして組んでくださることくらいしか決まってなくて、曲もない状態でした(笑)。だから正月の三が日に急いでデモをババババッと6曲作って。その反動なのか、デモを作り上げた次の日の1月4日に阿佐ヶ谷のバーで荒れて、新年初の"出てけ!"をいただきました(笑)。今回のミニ・アルバムにはそのとき作ったデモの曲と、『シャンゼリゼ』のときに作った曲が入ってます。「イグノアの娘」(Track.5)はライヴ活動休止中に作った曲で、とある人への恨みつらみを込めました(笑)。

ユコ:そうなんですか? 私の知ってる人ですか(笑)?

ゲイリー:内緒です(笑)。まあね、どんな経験も全部歌にできる、それがミュージシャンのラッキーなところですからね。幸せですよ、我々は。

-『シャンゼリゼ』は3人それぞれのキャラクターが出ていて、それが深みを作っているアルバムだと思ったのですが、『PIRATES of Dr.PANTY』はメロディの良さとシンプルな構成もあって、ゲイリーさんが主役として立って3人でモーモールルギャバンというひとつの舞台を作るような作品という印象がありました。全曲ゲイリーさんが作詞作曲されていますし。

ゲイリー:......ぶっちゃけ、だいぶ制作がバタついてて、一番元気な人がババババッと決めていかなきゃいけない状態ではあったんです。特にこの奈良のマイペース女(ユコ)がどうしても人のペースで動けないので(笑)。

ユコ:ちょっと語弊があるよ~? 今までは私が好き勝手にデモをアレンジするというスタンスがあったんです。何年か経って久々にデモを聴いたら"自分がアレンジしたものよりも、このストレートなアレンジの方が良かったかな......?"と思うこともあったりして。制作中はそういうことになかなか気づけないんですよね。それもあって、今回はデモが持っている本来の良さを出すために、必要最低限の音を足していくだけにして極力いじらずデモに忠実にしました。だから、そう感じてもらったのは、これが原因なのかもしれない(笑)。初期はデモに忠実だったので、その当時を知っている人は懐かしいかもしれませんね。

ゲイリー:今回のアルバム、マニアックなユコ=カティのファンは怒るんじゃないかと思って今からひやひやしてるんですけど、いいんです。ゲイリー・ビッチェのファンが喜べばいいんです(笑)! 「モスコミュール・メルシー」(Track.4)なんてほとんどデモと一緒だもんね。デモから一番変わったのは「美しい思い出だけじゃないけど」(Track.1)。

ユコ:私は自分のワールドに持ち込まないと調子が乗ってこないタイプなので、"ここに自分の色をどこまで入れていいか?"というのは探り探りで。"もうちょっとこうしたらいいんじゃないかな?"と思ったところを"いや、これはやらないのが美学なんだよ!"と言われて、そのボーダーラインをずっと探ってる感じで......。だからもう少し時間が経ってから客観的に聴いてみたいなと思っているんです。作品に納得いってないわけではないんだけど、もっとその枠内でできることがあったんじゃないかなと思うところは正直あって。ずっと悩んで、ずっと考えてました。

ゲイリー:考えていたというよりは止まっているように見えたけど(笑)。"あ、この人の頭の中、ピー......って音鳴ってるな"と。つまりユコ=カティは"マイ・ワールドを封じられると、自分はここまで何もできなくなるのか!"と落ち込んでいるということです(笑)。いつもは俺が、ユコさんから"違う"、"なんかイマイチ"とだけ言われて、自分で答えを探さないといけないから大変です。でも今回は答えがこっちの中にあったので俺はすっげぇラクでした(笑)。

-(笑)では初挑戦という意味もあったのでしょうか。

ユコ:初挑戦というよりは......今まで自分たちがやってこなかったのか、避けてきたのか(笑)、見て見ぬふりをしてきた"絶対にやってみた方がいいこと"に向き合ったというか。今までゲイリーも、自分のイメージを伝達することをしてないから、こっちから"これでいいの?"と確認しながら進めていって、自分には見えてこない......という時間が長かったんですよね。

ゲイリー:他人の世界観で音楽を作るというのはそういうことなんですよね。それをできるようにならないとダメなんです!

ユコ:と言いつつも、いつもの"らしさ"がないと怒るんですよ? だから迷走しました。

ゲイリー:やってもやっても課題は出てくるものだからね。大変ですよ。だから飽きないと思うんですけど......でも、しんどいです(笑)! 「シャラララ・ラブレター」(Track.6)のド頭で"毎晩 何かに追われてるんだ"と言ってますけど、あれは自分の心の声ですからね。勘弁してほしいですよ、なんでこんなにやってもやってもやらなきゃいけないことが出てくるんだバカヤロー!