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Skream!×MUSE音楽院特別公開講座

2015年12月号掲載

Skream!×MUSE音楽院特別公開講座

滝 善充(9mm Parabellum Bullet) 日下 貴世志(レコーディング・エンジニア)

ロックに特化した音楽媒体"Skream!"が、各方面で活躍する音楽業界のプロを育成する"MUSE音楽院"とタッグを組み定期開催する、Skream!×MUSE音楽院公開講座。10月26日開催の本講座では、9mm Parabellum Bulletのメイン・コンポーザーを務める滝 善充(Gt)が心から信頼するレコーディング・エンジニア日下貴世志氏を迎えてレコーディング談義が行われた。レコーディングにおける大事なポイントやミュージシャンとエンジニアの関係といった制作現場の生の声を聞くことができたこの日。本誌では、音への飽くなき探求心を持つこの2人ならではの貴重なレコーディング談義の模様の一部を掲載する。質疑応答を交え、リスナーに届けられる"音"にミュージシャンとエンジニアが込めるこだわりに迫る。

-まずは、自己紹介をお願いします。

滝:えー、5月9日生まれ、滝 善充です。9mm Parabellum Bullet(以下:9mm)というバンドをやっております。よろしくお願いします。

日下:えっと、3月29日(笑)......レコーディング・エンジニアをやっております。日下でございます。よろしくお願いします。

-今回はレコーディング談義ということで、MUSE音楽院にぴったりのテーマなのですが、まずはおふたりの現在のお仕事や、どういった経緯で出会ったのか、簡単にうかがいたいなと。

滝:出会いといえば、9mmのアルバムを作って、2ndアルバム『VAMPIRE』(2008年リリース)のときに2曲くらいやってもらったんですよね。

日下:「Keyword」と「次の駅まで」ですね。

滝:その2曲をやってもらって......。そのときは、正直バンドとしてまだ何も知らないから、身近で腕のいい人のことを知りたいなってことで、日下さんともうひとりの方に数曲やってもらって。それで「Keyword」のミックスを聴いて、ハンパねえなっていうことになって。

日下:あれ、よかったよね!

滝:あれ、すごく感動しましたね。びっくりの出来でしたからね(笑)。それで日下さんとバンドの音を作っていこうということになって。......現在は何のお仕事をされてるんですか?

一同:(笑)

日下:それこそ、つい最近出た吉井さんのライヴDVD(2015年9月リリースのDVD&Blu-ray『YOSHII KAZUYA STARLIGHT TOUR 2015』)だったりとか。これまた、すごくカッコよくて。あとは、ジャスト今だとHEREっていうバンドの......。

滝:おぉ、危険だね~。狂犬の集まりですね(笑)。

日下:危険ですね~(笑)。ほんと噛みつかれて......まあ楽しいですよ。まぁそういうのを最近やってますね。いろいろとロック・バンドを中心にやらせてもらってます。

-今回、事前にご応募された方々からおふたりへのご質問をいただいているのですが、ギターに関すること、エンジニアに関することなど非常にたくさん届いています。まず最初の質問なのですが、"レコーディングで1番大事にしていることは何ですか? また、いくつか選択肢がある中で、迷ったり揉めたりしたときに、最も優先させる判断基準などがあれば、具体的なエピソードを入れて教えてください。"

滝:1番大事にしていることはって言われると、意外とわからないような気もするんですけど......もちろんいい音で録らないとだめだし、間違ったりヨタヨタして演奏したり、ビビったようなプレイをしてしまったら全然ダメだしっていうことで。いろいろ気を遣って"本当にこれを残していいのか"とか、"俺はこれを残して生きていくのか"みたいな自分との闘いがあるんですけど......最近1番いいものが録れたなって思うのが、"完全に一発で弾けたとき"ですね。日下さんはわかりますよね?

日下:わかります。やっぱりレコーディングのときって、みんなで"せーの"で演奏するんだけど、"前半はこっちの方がよかったなー"とかいろいろあって。だいたい何回かやったあとでどのテイクを選ぶかって決めるんだけど、一発で決まることがあるんだよね。

滝:それは、"一発で決まった! 超いいぞ!"っていうものに対して、特に何か話したりしませんもんね。

日下:しないね。

滝:"OK、めっちゃいいわ"ってだけで終われる。で、そうでもない、何か引っかかることがあると、いろいろと話して直していこうというふうになって、だんだん疲れていって......(笑)。

日下:まぁ、疲れていくとそのぶん、判断力がなくなっていくし、もう1回やろうってなってもなかなか......。

滝:そうですね。そういうフレッシュさも出ないし。いろいろ積み重ねたうえで、一発弾いてOKになるまで突き詰められたものを作って、それで終わらせるのが今だったら1番大事というか、いいかなって思えることですね。

日下:4人でやってる空気をひとつに閉じ込めるっていうのが、とても大切だから。そこで、"俺はあとでやり直すからいいや"っていうようなものではなくて、この一瞬を刻み込んだってものを作ることを我々は今、大前提としているんです。

滝:そうなんですよ。やっぱりパソコンは便利ですから、何テイクも弾いて、あとから繋げたりとかできるんですけど、もうそんなこと考えませんからね。1回で弾く自信を作る、みたいなところもいい目標かなと。それくらい己を知る、というか。

日下:そういうテイクを録るということが、こっちにしてもとても大切なので。

滝:そうですよね。フレッシュさというか。"いくつか選択肢があるとしたら......"っていうことは、実はあまり考えたことがないですね。私は特に選択肢を設けずに、9mmの音はこれだって決めてて。ギターのバランスって結構大きいので、その中でブレが生じちゃうとダメだなぁと思います。やりたいことを突き詰めるだけです。