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COLUMN

フィルフリーク ツカダユウキの"サブカル部!"【第7回】

2024年03月号掲載

フィルフリーク ツカダユウキの"サブカル部!"【第7回】

フィルフリークのベース、ツカダユウキです。
私のコラム「フィルフリーク ツカダユウキの"サブカル部!"」では、【サブカルチャー】をテーマに、映画や音楽、地域文化やネットミーム、実体験や社会学、(たまにアングラ)などについて語っていきます。

第7回目のテーマはこちら。
『街の"味"方』

「セットの3番」「あい......。」
シャー。カンカン。ジャー。
「......あい。」「頂きます!」「......。」
"セットの3番"とは「生姜焼き+ライス+小ラーメン」の事である。
とても一人前とは思えない量の生姜焼きとライス、そこに「小でこれなら通常サイズはどうなってしまうのか」と思うような量の小ラーメンが来る。
それを厨房の壁に無造作に貼ってある様々なステッカーを見渡しながら無言で頬張る。
その間も店主は真剣な表情で中華鍋を振るう。
「ご馳走様でした。」「1000円。」「どうも。」


ここは高円寺の小さな中華料理屋。
パル商店街の小道にあり、無愛想なようで実は人情深い店主が切り盛りする。カウンターが8席程の店内はいつ行っても賑わっている。
味、量、店内の雰囲気、全てが好きで最近は週に3度は足を運んでいる。

あなたの町にもきっとあるだろう。
派手さは無いが人と街に愛され、歴史とドラマが隠し味の中華屋。

今回はそんな『町中華』について。

町中華にはこれと言った定義があるわけではないが、長く地元の人たちに親しまれ、中華料理をメインとした食堂のことを言う。
長く地元に愛される要因として"コスパの良さ"は大きいと感じている。
ラーメン業界には「1000円の壁」という言葉があるようで、小麦や光熱費の高騰で値上げをせざるを得ないが、消費者の「一杯1000円は高い」という感覚に応えるために値上げできず経営難に陥ってしまうというもの。
そんな中で値段の割に量があり味も美味しい町中華はとてもありがたい存在である。

その値段設定は学生や働いて疲れた人に安価でお腹いっぱいになって欲しいという、地域と人を思う気持ちによるものだと私は思っている。

私がよく行く高円寺の櫂ちゃんは"チンピラ中華"と呼ばれ親しまれている。
店主が全身タトゥーだらけでルックスがイカつい事からそう呼ばれ出したそうで、
今では気に入りそのワードのタトゥーを彫ってしまう程。
店主の亮さんは中野にある町中華の人気店「尚ちゃん」で約12年働き、その後このお店をオープンさせたそうだ。
そしてつい最近、私が7歳まで住んでいた家に亮さんが現在住んでいる事が発覚した。
「これは面白い!絶対盛り上がる!」と思い、本人に伝えたところ「へぇ~。」という思ったより薄いリアクションだった。
亮さんは無愛想なのではなく不器用なのだ。(と、勝手に私は思っている。)
実際、その後何度か足を運び会話の回数が増えた今では向こうから笑顔で話しかけてくれるようになった。

知る人ぞ知る地域密着型の食事処。町中華。
料理の味だけではなく店主の人間味も美味さの一部だと思う。
人と町を愛して誠実に鍋を振るう、それが長く愛される町中華の秘訣なのだろう。

フィルフリーク

2014年に結成。"あなたの日常を少しドラマチックに。"をコンセプトに活動する、広瀬とうき(Vo/Gt)、ゆっこ(Key/Vo)、ツカダユウキ(Ba)、小竹 巧(Gt)からなる男女混声ロック・バンド。広瀬とゆっこの男女ツイン・ヴォーカルが映えるポップな楽曲たちを、人の感性に触れるバンド・サウンドで支え、自分たちの等身大を表現する。2019年に"ROAD TO EX 2019"で優勝し、翌年に初の全国流通盤ミニ・アルバムを発売。2023年4月に設立された"Renegades' Music,Inc."よりデジタル・シングル「アナザーストーリー」を8月にリリース。2024年3月24日に下北沢シャングリラにて"フィルフリ感謝祭"を開催する。