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INTERVIEW

Japanese

"革命ロジック"Skream!ステージ 座談会

2024年05月号掲載

"革命ロジック"Skream!ステージ 座談会

chef's:高田 真路(Ba)
Dannie May:マサ(Vo/Gt)
Klang Ruler:やすだちひろ(Vo)
meiyo
Ochunism:凪渡(Vo)
Interviewer:石田 大実(下北沢LIVEHOLIC店長) 
Photographer:Kanda Yukiya

-マサさんはいかがですか。

マサ:小さい頃家では父親が聴いてたOriginal Loveとかキリンジとか、あと達郎(山下達郎)さんとかちょっとシティ・ポップ入ってるやつが流れてて。でも自分で音楽始めたきっかけは高校生のときに文化祭で歌ったことがあって、RADWIMPSのコピバンかなんかやったんですよね。そのときに初めて人前で歌って上手いじゃんって言われて、さっきのmeiyoさんじゃないですけど成功体験というか、嬉しいとなって。で、そのあと大学行ったんですけど、人とバンドをやるイメージが湧かなくて。周りがすごくいっぱい音楽聴いてる子ばっかだったんですよ。僕はandymoriやクリープハイプのコピバンとかはやってて、その2組は好きだったんですけど、それ以外その頃音楽めちゃくちゃ聴いてたわけじゃなかったから全然わかんなくて。そんななか、弾き語りで一番いいなって思ったのが竹原ピストルさんです。そのとき島根の大学にいたんですけど、竹原さんが島根に来る機会があって、いつも僕がやってるバーでライヴをやるっていうので、前座をやらせてもらうことになって。

一同:えーそこまで!

マサ:オリジナルとかまだないからコピバンで適当にバーってやるじゃないですか。で、竹原さん観て"うわぁすげー、ギター1本でこんなことになるの?"みたいな。とんでもなかったです。今でもやっぱりあのライヴって衝撃ですね。それで音楽をちゃんとやりたいと思って東京に出てきて、そっからはそれまで洋楽とか聴かなかったんですが、さっきのVULFPECKとかLouis Coleじゃないですけどいろいろ聴くようになって。最近はK-POPとかめちゃくちゃ聴いてますね。

やすだ:私も大好き。

マサ:アイドルもいいし、韓国のヒップホップ・アーティストさんもすごくいい曲多いので、そういうの聴いてますね。

-韓国のアーティスト、すごくかっこいいバンドもいますもんね。

マサ:HYUKOHとかめっちゃいいっすよね。

-みなさんさっきのリコーダーみたいな、成功体験というか、自分に自信がつく瞬間ってやっぱりあったんですか?

凪渡:僕はいつから歌っているのかなってくらい歌が好きです。それはたぶん僕自身結構落ち着きがなくて、じっとできないタイプなのが理由で。

-さっきから意外なこと言われててびっくりしてます(笑)。

凪渡:ほんまはそういう感じなんですよ、ずっと。動いちゃうのを抑えられるのが歌で、自分が一番自分らしくいられる方法だったというか。で、ずっと歌ってるうちに周りから、"え、うま"みたいに言ってもらえることが増えて。かますじゃないですけど、そういう手段みたいな。

マサ:まぁでもアーティストみんなそういう戦う手段みたいな感じなんじゃない。

-他の方もありますか? 嬉しい体験とか。

やすだ:私はもともとベースから入ってて、27とか28歳になってからヴォーカルとしての活動が始まったんですけど、小学校の卒業文書とかには"将来の夢:歌手"って書いてるんですよ。ずっと憧れはあったけど、だんだん現実味を理解していくにつれて、自分はそうはなれないんだろうなみたいな感覚になって離れた部分があって。私も小さい頃ピアノをやっていたので、楽器に対するハードルが低くてベースから入ったんですけど、巡り巡ってヴォーカルとして活動できるっていうきっかけが自分のもとに来たときに、得意じゃないみたいな気持ちがずっとあったから、そこと格闘しながらの活動からスタートでした。もうとにかく私はやっぱり歌ってパフォーマンスできる人になりたいっていう憧れ。

-小っちゃいときから夢に歌手って書いてて、ダンスもしてたんですね。

やすだ:習わせてくれてて、それが一番ありがたかったかなって。小っちゃいときから週末ステージに立ってとか、何々の発表会でとか、人前でダンスするとか。普段はちょっとシャイなんですけど――あ、それで言うと成功体験かもしれない(笑)。自分じゃなくなれるっていうか、普段の自分の内側を開放できる場所に出会えたっていう体験があったからこそ、ステージに立つ人になりたい気持ちがずっとあるのかもしれないです。

-すごくいい話ですね。

高田:僕はみなさんと違うところで言うと、音楽に出会うっていう記憶がないんですよね。ずっとあって、逆に自分の生きているうえで必要不可欠というか。別に音楽を仕事にしてなくても音楽をやってただろうし、音楽がない状態が自分の人生にありえないから、成功体験というよりは酸素的な。

-ごはん食べてるみたいな。

高田:ごはん食べるよりも音楽してるみたいな。成功体験から始めたっていうよりはもう親の洗脳ですね。無意識な教育。それが入ったことによって、成功体験とかを得る前に(アーティストに)なったので、みなさんのそれを聞いてると"あ、そっか、そういう体験が音楽に......"ってなりました。"自分で手に入れた"というよりは"もともと持っていた"って感覚に近くなっちゃってて。

-たしかに2歳からピアノをやっていたらそうなるのかもしれないですね。

高田:ずっと何かやってて、気づいたらたまたま弾けたみたいな。物心がつくうちにはもう弾けてたからってなるともうわかんなくて。

-ちなみに今、それぞれバンドの形態とか編成とか全然違う感じでやってるじゃないですか。今の編成で良かったと思うことと、逆に大変なところってあります?

マサ:僕ら今ヴォーカル3人なんですよ。だからライヴはなんでもやりやすいんですけど、曲作るときとかもすごくやりやすいんですよ。そんなにアレンジしなくても3人の声バーンって入っちゃうし。それいいなって思う反面、ライヴで結構同期使うんですよ。たまに同期が使えない現場とかもあって、そうなったとき、アカペラ・グループになっちゃう(笑)。鍵盤とギターとヴォーカル3人なんで、アコースティック・バンドみたいじゃないですか。今やってる音楽は結構パーティーっぽいイェイイェイ系が多いんで、もう僕のルーツの弾き語りに戻っちゃう。そこは難しいなぁって。

-同期がない現場のときは持ち味を生かしきれないというか、ちょっと違うアーティストになっちゃうみたいな感じですかね。

マサ:これが今の形態のいいところと難しいところかな。同期使います?

meiyo:同期使いますね。自分も叩けるんだけど、サポート・メンバーにドラム叩いてもらって、ギター入れてベース入れてみたいな感じでやるんですが、その日のイベントによってメンバーが変わるんですよね。今日このギターの人にやってもらおうかなとか。そのたびに同期の内容を変えてます。このギターの人だったらこっちの方が合ってるとか、ギターがいなくてベースとドラムと自分だけの3ピースになるとか、自分ひとりのときもあるし、そのたびにバランスを全部変えてます。人に見えるところで語るような話じゃないですけど(笑)。

-ライヴを観るときに、"あ、苦労してるんだ今日も"ってなっちゃいますね(笑)。もともとmeiyoさんの名義でLIVEHOLICに出てたときは叩いて歌ってたときで、この間観たときにはピン・ヴォーカルだったから、"すごい、あそこの空間から出てる"って思いました。

meiyo:本当最初恥ずかしくて無理だったんですよ。ドラム・ヴォーカルって目の前にドラムあるからちょっと距離取れるんですよ。心理的な距離としてはこれがすごく大きくて。それなしで急に立たされたとき、2年前ぐらいは最初棒立ちでしたね。何すればいいか本当にわからなくて、マネージャーに"これってかっこいいですか? このくらいしても恥ずかしくないですか?"ってずっと聞いてました。

マサ:絶対映像で観たときと自分の感覚とのギャップありますよね。でも(やすださんは)ダンスやられてたっていうのがめちゃくちゃデカいと思う。

-たしかに身体の使い方とか表現が豊かですもんね。

やすだ:そうですね。それは実感するかも。

-chef'sはどうですか。

高田:僕らはいわゆるバンド、ギター・ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムみたいな感じで。僕、好きなバンドがthe band apartなんですけど、普段聴いてるバンドはそういうのじゃなくて、ホーン・セクションがいるとか、それこそ同期もマシマシって感じで生楽器がない音楽も大好きなんです。ってなると憧れはありますよね。でも逆に4人バンドだからいわゆるライヴハウスだったらどこに出ても通常編成で勝負できるところはいいところかなと。みなさんのやってる幅広い音楽に憧れはあります。

やすだ:Klang Rulerは男女ヴォーカルでドラム、ギター、ベースという編成なんですけど、バンドの核としてはトラックメーカーのyonkeyを軸に楽曲を作ってますね。バンド・サウンドなんですけど音源にするときは特にこだわってないんです。楽器隊、ドラムとかレコーディングしてない曲もあるし、打ち込みでトラックメイクで作り込んだ楽曲に対して、じゃあギターをどう足すかとか、ベースをどんなアプローチで足すかっていう形で音源を作っているので、そこがひとつ自分たちの他のバンドとの差別化としてすごく大きい部分だなって思ってて。強みでもあるんですけど、なかなか同じようなバンドっていない。バンドとか音楽とかって界隈ごと盛り上がっていくことが結構多いじゃないですか。3ピースとか4ピースとかで生バンドだけで編成されたバンドが流行ることもあるし、シティ・ポップの楽曲をやっているバンドが流行るみたいなこともあるし、トレンドだったりシーンごと盛り上がるのがすごく多いと思うんですけど、なかなかそのシーンに入り込めないみたいなことがあって。

meiyo:わかるぅー!

やすだ:私たちはどこに属せばいいんだろうって。属す必要があるって思ってるわけじゃないんですけど、やっぱり音楽が好きなお客さん、受け取り手がいるなかで、どういう人に聴いてもらったら私たちは面白いと思ってもらえるんだろうみたいなところが。

高田:俺らも話すしね。どこ畑なんだろうってやつですね。

やすだ:海外だったら思いつくんです。作り方自体が海外風なんだろうなっていう体感ではあるんですけど、それをどう表現していくのかとか考えます。はたまたライヴではちゃんとバンド・アレンジしてやってて、楽器隊も強い自信はあるので、強みを自信持ってアプローチできるんですけど、音源だけ聴いてる人にはそれは伝わらないから、ライヴとのギャップを面白いと思ってもらう手段としての発信の仕方とか、どうするのがいいのかなみたいな感じで話し合いが起こることが多いです。そんなの早く全部超えて行っちゃいたいですけどね。

-たしかにさっきおっしゃった界隈で盛り上がるとかはありますよね。お客さんもこことここが出るなら行くみたいなのはすごく多いです。

マサ:あるじゃないですか。こことここのバンドすげー仲良くて一緒にライヴとかしてるの見てるといいなーって。

meiyo:思いますよねー。仲良くしてください(笑)。

高田:でもchef's的には、4人バンドとやりたいというよりは、みなさんのようないろんなジャンルが交ざっているところに入っていきたいよねってコンセプトで始まったというか。

一同:へー!

高田:4人のバンド編成の曲をあんまり聴いていないのもあって。例えば鍵盤が入っているバンドが好きなんですけど、でも鍵盤がないバンドと聴いていていい意味で同じ味で聴けるものを4人で作り込めるかなという挑戦がchef'sだったりするんです。

-"おいしいおんがく"っていうバンドのテーマがありますもんね。

高田:そうですね。だから4人でバンドのロックだけをやるとかではなくて、他のジャンルと自分たちのポップスとかロックを混ぜたときに、他のみなさんと混ざれるかなっていう挑戦ではあるんです。そっちに混ざっていきたいなっていう。すごく贅沢な悩みではあると思いますけど、あんまり界隈に属したいっていう意識はないかもしれない。